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第一章:私の婚約者を奪おうとしないでくださいっ!
1.幸せだったはずなのに
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私の視線の先には大好きな婚約者と、腕を絡ませ体を寄せる王女の姿があった。
その光景を私は寂しそうに見つめていた。
(どうして、こんなことになっちゃったんだろう……)
私の名前はフェリシア・アルシェ。
伯爵令嬢であり、現在貴族学園に通う18歳だ。
ふわっとしたハニーブラウンの髪に、蜂蜜色の瞳。
小柄で幼さが残る顔立ちだが、婚約者であるロジェはそれを『可愛い』と言ってくれる。
婚約者というのはロジェ・オクレールのことだ。
侯爵家の嫡男で、幼い頃から家族ぐるみの付き合いがあったので私達はずっと仲が良かった。
いわゆる幼馴染というやつだ。
学園に入学する前、ロジェの強い意向で私との婚約が決まった。
私もずっとロジェの事が大好きだったから、それをとても喜んだ。
結婚すればこれから先もずっと離れることなく、ロジェの隣にいる事が出来るから。
ロジェは綺麗な顔立ちで、落ち着いた雰囲気を持っている。
サラサラの長い銀髪に、翡翠の様な瞳。
その瞳に見つめられると、吸い込まれてしまいそうになり目が離せなくなる。
こんな容姿を持っているので、学園に入ってからはロジェを見てドキドキしている令嬢も多いようだ。
こんな素敵な婚約者がいて嬉しい反面、心配でもあった。
そんな中、悲劇と言える事件が起こってしまった。
傍若無人で有名な王女の目に、ロジェの存在が留まってしまったからだ。
ブラン大国の第一王女である、ミレーユ・ル・ブラン。
艶のある金色の長い髪に、青い瞳。
ややつり目ではあるが端麗な顔立ちをしていて、大人の雰囲気を感じさせる美人だ。
しかし性格は滅茶苦茶で、王族であるのをいい事に、やりたい放題している我儘で自分勝手な王女なのだ。
王族である彼女に誰も意見なんて言えない。
だからこそ関わらない様にと、殆どの者は彼女には近付かない様にしているのだ。
運悪く彼女の目に留まってしまった者達の末路は悲惨なものだった。
彼女に意見した令嬢は学園を追放されたと聞いた。
中には彼女の手の者によって、襲われたという恐ろしい噂も聞いたことがある。
そんな中、ロジェは彼女に気に入られてしまった。
どうしてそうなったのかは、私には良く分からない。
ある日突然、ミレーユは私達の前に現れて言った。
「ロジェ・オクレール様。私は貴方を気に入ったわ。だから傍に置いてあげる。喜びなさい」と。
私にとっては悪魔のような言葉だった。
きっとロジェにとっても同じだろう。
そして私にはこうも言った。
「彼は今日から私のモノよ。勝手に近づくことは許さないから」と。
私に向けられた視線は氷のように冷たくて、全身に鳥肌が走った。
私が怯んでいると、ミレーユは勝ち誇った様に口端を上げて蔑むような瞳で見下ろしていた。
幸せだった日々が、一瞬にして地獄に落とされたような気分だった。
この事件はすぐに学園中に広がり、その日のうちに両家にも伝わった。
そして私達の婚約は一旦保留ということにされてしまったのだ。
こんなの馬鹿げている。
だけど王族に逆らう事なんて出来ない。
そんなことをしてしまえば、私だけの問題では済まなくなるかもしれない。
私はこのままロジェを諦めなくてはならないのだろうか。
(そんなの絶対無理……。諦めたくないっ!)
「フェリシア・アルシェ嬢、ですよね?」
私が掌をぎゅっと握りしめ泣くのを耐えていると、突然背後から声が響いた。
反射的に振り向くと、そこには金髪碧眼で端麗な顔立ちをしている王子が立っていた。
「……っ!?」
突然の事に私は驚いて固まっていた。
無理もないだろう。
そこには一度も話したことが無い、王子が目の前に立っていたのだから。
「すまない、驚かせてしまったか?」
「い、いえ……」
心配そうな顔でこちらを見ているのは、エルネスト・ル・ブラン。
ミレーユの双子の弟であり、この国の第一王子だ。
(うそ、なんでこんな所に殿下がいるの!?)
「そうか。それなら良かった」
「…………」
「アレの所為で迷惑しているのは分かっている。私の方から謝罪させてもらう。本当に申し訳ない」
エルネストは目を細めて軽蔑する様な視線をミレーユに送り、再び私の方に視線を戻した。
そして軽く頭を下げて謝って来たのだ。
突然の事に私は再び驚いてしまう。
「あ、あのっ、頭をお上げください。謝られても、こ、困ります……」
その光景を私は寂しそうに見つめていた。
(どうして、こんなことになっちゃったんだろう……)
私の名前はフェリシア・アルシェ。
伯爵令嬢であり、現在貴族学園に通う18歳だ。
ふわっとしたハニーブラウンの髪に、蜂蜜色の瞳。
小柄で幼さが残る顔立ちだが、婚約者であるロジェはそれを『可愛い』と言ってくれる。
婚約者というのはロジェ・オクレールのことだ。
侯爵家の嫡男で、幼い頃から家族ぐるみの付き合いがあったので私達はずっと仲が良かった。
いわゆる幼馴染というやつだ。
学園に入学する前、ロジェの強い意向で私との婚約が決まった。
私もずっとロジェの事が大好きだったから、それをとても喜んだ。
結婚すればこれから先もずっと離れることなく、ロジェの隣にいる事が出来るから。
ロジェは綺麗な顔立ちで、落ち着いた雰囲気を持っている。
サラサラの長い銀髪に、翡翠の様な瞳。
その瞳に見つめられると、吸い込まれてしまいそうになり目が離せなくなる。
こんな容姿を持っているので、学園に入ってからはロジェを見てドキドキしている令嬢も多いようだ。
こんな素敵な婚約者がいて嬉しい反面、心配でもあった。
そんな中、悲劇と言える事件が起こってしまった。
傍若無人で有名な王女の目に、ロジェの存在が留まってしまったからだ。
ブラン大国の第一王女である、ミレーユ・ル・ブラン。
艶のある金色の長い髪に、青い瞳。
ややつり目ではあるが端麗な顔立ちをしていて、大人の雰囲気を感じさせる美人だ。
しかし性格は滅茶苦茶で、王族であるのをいい事に、やりたい放題している我儘で自分勝手な王女なのだ。
王族である彼女に誰も意見なんて言えない。
だからこそ関わらない様にと、殆どの者は彼女には近付かない様にしているのだ。
運悪く彼女の目に留まってしまった者達の末路は悲惨なものだった。
彼女に意見した令嬢は学園を追放されたと聞いた。
中には彼女の手の者によって、襲われたという恐ろしい噂も聞いたことがある。
そんな中、ロジェは彼女に気に入られてしまった。
どうしてそうなったのかは、私には良く分からない。
ある日突然、ミレーユは私達の前に現れて言った。
「ロジェ・オクレール様。私は貴方を気に入ったわ。だから傍に置いてあげる。喜びなさい」と。
私にとっては悪魔のような言葉だった。
きっとロジェにとっても同じだろう。
そして私にはこうも言った。
「彼は今日から私のモノよ。勝手に近づくことは許さないから」と。
私に向けられた視線は氷のように冷たくて、全身に鳥肌が走った。
私が怯んでいると、ミレーユは勝ち誇った様に口端を上げて蔑むような瞳で見下ろしていた。
幸せだった日々が、一瞬にして地獄に落とされたような気分だった。
この事件はすぐに学園中に広がり、その日のうちに両家にも伝わった。
そして私達の婚約は一旦保留ということにされてしまったのだ。
こんなの馬鹿げている。
だけど王族に逆らう事なんて出来ない。
そんなことをしてしまえば、私だけの問題では済まなくなるかもしれない。
私はこのままロジェを諦めなくてはならないのだろうか。
(そんなの絶対無理……。諦めたくないっ!)
「フェリシア・アルシェ嬢、ですよね?」
私が掌をぎゅっと握りしめ泣くのを耐えていると、突然背後から声が響いた。
反射的に振り向くと、そこには金髪碧眼で端麗な顔立ちをしている王子が立っていた。
「……っ!?」
突然の事に私は驚いて固まっていた。
無理もないだろう。
そこには一度も話したことが無い、王子が目の前に立っていたのだから。
「すまない、驚かせてしまったか?」
「い、いえ……」
心配そうな顔でこちらを見ているのは、エルネスト・ル・ブラン。
ミレーユの双子の弟であり、この国の第一王子だ。
(うそ、なんでこんな所に殿下がいるの!?)
「そうか。それなら良かった」
「…………」
「アレの所為で迷惑しているのは分かっている。私の方から謝罪させてもらう。本当に申し訳ない」
エルネストは目を細めて軽蔑する様な視線をミレーユに送り、再び私の方に視線を戻した。
そして軽く頭を下げて謝って来たのだ。
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