私の婚約者を奪おうとしないでくださいっ!【R18】

Rila

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第二章:私の心を掻き乱さないでくださいっ!

55.ざわめく心

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今日の授業が終わり、生徒達は徐々に教室から出て行く。
普段に増して一日が長く感じてしまうのは、心を煩わしている問題があるからに違いない。
私は心を落ち着かせるために、暫く席に座っていた。
既にイルメラやイリアの姿も消えていて、少しだけほっとしている。
明日のことを考えると、また気が重くなりそうだったので今は考えないことに決めた。

(そろそろ行った方がいいかな。あまり待たせてしまうのも悪いよね)

私は重い腰を上げて席から立ちあがると、ため息を漏らし教室から出た。

「フェリシア」
「……?え、エルネスト、様?なんで?」

教室を出ると、横の壁際にエルネストが立っていた。
私は約束の部屋にもういるのだと勝手に思い込んでいたので、突然のエルネストの登場にかなり動揺してしまう。

「随分と驚くな」
「だって、いきなりいるから」

「今日はどうしても逃がしたくなかったからね」
「私、逃げるなんて」

逃げるなんて考えていなかったが、逃げたいとは考えていたのかもしれない。
その心が見抜かれ、思わず目線を泳がせてしまう。
エルネストはそんな私の姿を見ると、小さく笑った。

「フェリシアの気が変わらないように、捕まえておくことにするよ」
「……っ!!」

エルネストは自然な素振りで私の手に触れると、指を絡めるようにして手を繋いできた。
殆どの生徒が帰り、廊下に残っている生徒は殆どいない。
だけど誰もいないわけではない。

「こんな人前でっ」
「朝は我慢したのだから、今は許して」

繋がれている手が更に強く握られた様な気がした。
離す気は無いと言われている気分で、顔の奥がじわじわと熱くなるのを感じる。

「フェリシア、行こうか」
「は、はいっ……」

私はドキドキしながらも、廊下にいる生徒をちらちらと確認していた。
そこにはイルメラの姿はなく、少しほっとした。
もし今の私達の姿を見られてしまったら、確実に誤解されてしまう。

「何そわそわしているの?周りの目が気になる?」
「当たり前じゃないですかっ!エルネスト様は気にならないんですか?」

「ならないな。寧ろ、これからはこういうことに慣れていって欲しいと思っているからね」
「どういう、意味ですか?」

私が眉根を寄せて答えると、エルネストはクスッと小さく笑った。

「その話は、部屋についたらじっくりとさせてもらうよ」
「じっくり?」

「そう、じっくり。鈍感なフェリシアにも伝わるように、じっくり時間をかけて、ね」
「鈍感って言い過ぎですっ!」

昨日から鈍感と言う言葉を何度も聞かされ、ムッとした顔を向けて睨み付けた。
するとエルネストは楽しそうに笑っていた。
完全に遊ばれている気がして悔しくなる。
私はこんなにもエルネストのことで悩んでいるのに、彼はいつも通りの余裕がある態度を見せていた。

恥ずかしさは感じるけど、手を繋がれることは嫌ではない。
こうやってすぐ傍にエルネストの存在を感じると、安心出来てしまう。

(やっぱり私は……)

そんなことを考えていたら、あっという間に部屋の前まで辿り着いていた。
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