55 / 66
第二章:私の心を掻き乱さないでくださいっ!
55.ざわめく心
しおりを挟む
今日の授業が終わり、生徒達は徐々に教室から出て行く。
普段に増して一日が長く感じてしまうのは、心を煩わしている問題があるからに違いない。
私は心を落ち着かせるために、暫く席に座っていた。
既にイルメラやイリアの姿も消えていて、少しだけほっとしている。
明日のことを考えると、また気が重くなりそうだったので今は考えないことに決めた。
(そろそろ行った方がいいかな。あまり待たせてしまうのも悪いよね)
私は重い腰を上げて席から立ちあがると、ため息を漏らし教室から出た。
「フェリシア」
「……?え、エルネスト、様?なんで?」
教室を出ると、横の壁際にエルネストが立っていた。
私は約束の部屋にもういるのだと勝手に思い込んでいたので、突然のエルネストの登場にかなり動揺してしまう。
「随分と驚くな」
「だって、いきなりいるから」
「今日はどうしても逃がしたくなかったからね」
「私、逃げるなんて」
逃げるなんて考えていなかったが、逃げたいとは考えていたのかもしれない。
その心が見抜かれ、思わず目線を泳がせてしまう。
エルネストはそんな私の姿を見ると、小さく笑った。
「フェリシアの気が変わらないように、捕まえておくことにするよ」
「……っ!!」
エルネストは自然な素振りで私の手に触れると、指を絡めるようにして手を繋いできた。
殆どの生徒が帰り、廊下に残っている生徒は殆どいない。
だけど誰もいないわけではない。
「こんな人前でっ」
「朝は我慢したのだから、今は許して」
繋がれている手が更に強く握られた様な気がした。
離す気は無いと言われている気分で、顔の奥がじわじわと熱くなるのを感じる。
「フェリシア、行こうか」
「は、はいっ……」
私はドキドキしながらも、廊下にいる生徒をちらちらと確認していた。
そこにはイルメラの姿はなく、少しほっとした。
もし今の私達の姿を見られてしまったら、確実に誤解されてしまう。
「何そわそわしているの?周りの目が気になる?」
「当たり前じゃないですかっ!エルネスト様は気にならないんですか?」
「ならないな。寧ろ、これからはこういうことに慣れていって欲しいと思っているからね」
「どういう、意味ですか?」
私が眉根を寄せて答えると、エルネストはクスッと小さく笑った。
「その話は、部屋についたらじっくりとさせてもらうよ」
「じっくり?」
「そう、じっくり。鈍感なフェリシアにも伝わるように、じっくり時間をかけて、ね」
「鈍感って言い過ぎですっ!」
昨日から鈍感と言う言葉を何度も聞かされ、ムッとした顔を向けて睨み付けた。
するとエルネストは楽しそうに笑っていた。
完全に遊ばれている気がして悔しくなる。
私はこんなにもエルネストのことで悩んでいるのに、彼はいつも通りの余裕がある態度を見せていた。
恥ずかしさは感じるけど、手を繋がれることは嫌ではない。
こうやってすぐ傍にエルネストの存在を感じると、安心出来てしまう。
(やっぱり私は……)
そんなことを考えていたら、あっという間に部屋の前まで辿り着いていた。
普段に増して一日が長く感じてしまうのは、心を煩わしている問題があるからに違いない。
私は心を落ち着かせるために、暫く席に座っていた。
既にイルメラやイリアの姿も消えていて、少しだけほっとしている。
明日のことを考えると、また気が重くなりそうだったので今は考えないことに決めた。
(そろそろ行った方がいいかな。あまり待たせてしまうのも悪いよね)
私は重い腰を上げて席から立ちあがると、ため息を漏らし教室から出た。
「フェリシア」
「……?え、エルネスト、様?なんで?」
教室を出ると、横の壁際にエルネストが立っていた。
私は約束の部屋にもういるのだと勝手に思い込んでいたので、突然のエルネストの登場にかなり動揺してしまう。
「随分と驚くな」
「だって、いきなりいるから」
「今日はどうしても逃がしたくなかったからね」
「私、逃げるなんて」
逃げるなんて考えていなかったが、逃げたいとは考えていたのかもしれない。
その心が見抜かれ、思わず目線を泳がせてしまう。
エルネストはそんな私の姿を見ると、小さく笑った。
「フェリシアの気が変わらないように、捕まえておくことにするよ」
「……っ!!」
エルネストは自然な素振りで私の手に触れると、指を絡めるようにして手を繋いできた。
殆どの生徒が帰り、廊下に残っている生徒は殆どいない。
だけど誰もいないわけではない。
「こんな人前でっ」
「朝は我慢したのだから、今は許して」
繋がれている手が更に強く握られた様な気がした。
離す気は無いと言われている気分で、顔の奥がじわじわと熱くなるのを感じる。
「フェリシア、行こうか」
「は、はいっ……」
私はドキドキしながらも、廊下にいる生徒をちらちらと確認していた。
そこにはイルメラの姿はなく、少しほっとした。
もし今の私達の姿を見られてしまったら、確実に誤解されてしまう。
「何そわそわしているの?周りの目が気になる?」
「当たり前じゃないですかっ!エルネスト様は気にならないんですか?」
「ならないな。寧ろ、これからはこういうことに慣れていって欲しいと思っているからね」
「どういう、意味ですか?」
私が眉根を寄せて答えると、エルネストはクスッと小さく笑った。
「その話は、部屋についたらじっくりとさせてもらうよ」
「じっくり?」
「そう、じっくり。鈍感なフェリシアにも伝わるように、じっくり時間をかけて、ね」
「鈍感って言い過ぎですっ!」
昨日から鈍感と言う言葉を何度も聞かされ、ムッとした顔を向けて睨み付けた。
するとエルネストは楽しそうに笑っていた。
完全に遊ばれている気がして悔しくなる。
私はこんなにもエルネストのことで悩んでいるのに、彼はいつも通りの余裕がある態度を見せていた。
恥ずかしさは感じるけど、手を繋がれることは嫌ではない。
こうやってすぐ傍にエルネストの存在を感じると、安心出来てしまう。
(やっぱり私は……)
そんなことを考えていたら、あっという間に部屋の前まで辿り着いていた。
1
あなたにおすすめの小説
【書籍化決定】憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜
降魔 鬼灯
恋愛
コミカライズ化決定しました。
ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。
幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。
月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。
お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。
しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。
よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう!
誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は?
全十話。一日2回更新
7月31日完結予定
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる