私から全てを奪おうとした妹が私の婚約者に惚れ込み、色仕掛けをしたが、事情を知った私の婚約者が、私以上に憤慨し、私のかわりに復讐する話

序盤の村の村人

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---諦めたのはいつだったからでしょうか。

「あら、貴方には勿体無い食事ね、もっと食べやすくしてあげるわ」

  ヒールによって蹴飛ばされた銀の皿が遠くまで音を立てて転がっていく。中に入っていた冷えきった残飯が、床に広がった。色々な食べ物が混ざったような匂いが鼻を掠める。

 やっと久しぶりにお肉を食べれると思ったのですが。

 ゆっくりと固形物が混ざった残飯に手を伸ばし口に運ぶ。味は美味しいとは言えないが生きていくためには少しでも体に取り込まなければならない。

 「ふふ、貴方には床に這いつくばって食べるのがお似合いよ。そこのメイドいい? これからこのガマガエルにはこうやって食事を出しなさい」
     「もちろんですわお嬢様」

  媚びへつらうメイド達が、私の姿を見ながら嘲笑う。

「なんて汚いの」
「本当にお姿の通りの方ですわね」
「お嬢様とは正反対よね」
「ふふ、本物のガマガエルのよう」

 ガマガエル。それが私につけられたあだ名です。がさがさの乾燥した唇に、糸のように細いつり上がった目。そして、誰よりも大きく目立つこの鼻がガマガエルと呼ばれる理由でした。

 当然、そんな容姿の私に近く人はいませんでした。いつも、お茶会では1人でしたし、父は忙しく部屋で本を読む毎日。そんな時に声をかけてくださったのがユーレイル様でした。

 「いつも、1人でいるけど、たまには一緒にお菓子でも食べない?」

  あるお茶会の日、いつものように会場の隅で本を読んでいると、銀色のさらさらとした髪を持った男の子が声をかけてくださったのです。

 「わ、私がいってもいいの?」
    「駄目なわけないじゃないか。こっちにおいで」

   私は、ゆっくりと本を閉じ、ちょっとずつ隣のテーブルへと移動をしました。

   「自己紹介がまだだったよね、僕はユーレイル。よろしくね」
    「わ、わ、私はマリーベルです。よろしくお願いいたします」
    「マリーベルって長いから。じゃあ、ベルって呼んでもいい?」
 「(こくん)」

    それから、私はユーレイル様と好きな本の話や、天気の話。おすすめのお菓子を教えてもらいました。ユーレイル様とのお話は楽しくてそれから毎月のお茶会が特別なものになりました。そんなある日、ユーレイル様が私に素敵な提案をしてくれたのです。

   「僕と婚約してほしいんだ」
    「私でもいいんですか?」
 「ベルがいいんだよ」
 「こ、こちらこそよろしくお願いいたします」

    夢かと思いました。なぜならユーレイル様は、沢山のご令嬢から人気があり、とても顔が整っていることで有名だったからです。

 半分は、とても嬉しく幸せな気持ち。そして半分は間違えなのではないかと不安になってしまいました。しかし、ユーレイル様の態度からその不安はいつしか薄まっていきました。

 そう、この時私は自分がどんな容姿をしていたのか忘れていたのです。魔法でカエルになることができても、カエルから魔法で人間になれないことを忘れていました。

 次の年の春。父が再婚し、新たな家族が増えました。それが、義理母のマリアと、義理の妹のアーデルです。

 初めてアーデルを見た時は、とても驚きました。それは、天使と言われても信じてしまうくらい綺麗な顔立ちだったからです。しかし、アーデルは容姿とは正反対の性格の子でした。

「ちょっと、この部屋は日当たりが悪すぎるわ、そうね、ここの部屋いいじゃない!お姉様の部屋を私が貰うわ。ありがとうお姉様」

  私は何も言っていません。しかし、アーデルの声を聞いたメイドは私の部屋の荷物を屋根裏部屋へと運び始めました。

「ちょっとアーデル。私は部屋を譲るなんて一言も言ってないです」
「お姉様、それは我が儘すぎるわ。お姉様だけこんな部屋ずるいじゃない」
「マリーベル。我が儘は辞めてちょうだい。また部屋を移動させるなんてメイド達が可哀想でしょ」

 私たちの話を聞いていた義理母のマリアは、そう言うと、メイド達に早くするのよと急かすように言葉をかけた。

 なぜ、私が悪いように言われるのか。言った覚えがないことがいつの間にか本当のようになるこの空間に吐き気を感じました。

 私が何を言ってもここでは意味がないのですね。

 その時から私は自分の意見を言うことを諦めてしまったのかもしれません。お気に入りのドレスやアクセサリーはいつの間にかアーデルの手に渡っていました。

 それでも一つだけ譲れない物がありました。それはユーレイル様に借りていた一冊の本です。

 それは、どこにでもある恋愛小説でした。しかし、私にとっては初めてお茶会でユーレイル様に出会った時に借りた大切な思い出が詰まった宝物でした。

「アーデル。その本だけは返してください。それはユーレイル様から借りた大切なものなのです。他のドレスやアクセサリーは、好きなだけ持っていってもいいです。でもそれだけはどうか、どうかお願いします」
「ユーレイル?あぁお姉様の頭の良さしか取り柄がない婚約者ね。大丈夫よ、きっと本のことなんて覚えてないから。これは私が有効活用してあげるわ。それにお姉様、本気でその容姿で好きになってもらえるとでも思ってるの?ぷっ。無理に決まってるじゃない。誰もお姉様なんて愛さないわよ」
「っ......」
「そんなガマガエルみたいな顔私だったら耐えられないわ。ふふ、自殺しちゃうかも。とりあえずこれは貰っていくわね」

 結局、手元に残ったのは古びたカーディガンと流行が外れたドレス。そして冬を越すことも出来そうにない薄っぺらい布切れだけでした。埃の被ったすきま風がひどい屋根裏部屋で私こっそり涙を流しました。

 やがて、私の部屋にあった大量にあった本は、アーデルによって売却されアーデルの新しいドレスやアクセサリーに変化していきました。

 それでも、何とか砕けそうになる心を保っていました。私にはユーレイル様がいるから。きっと助けてくれると信じていたのです。

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