私から全てを奪おうとした妹が私の婚約者に惚れ込み、色仕掛けをしたが、事情を知った私の婚約者が、私以上に憤慨し、私のかわりに復讐する話

序盤の村の村人

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「まぁ、お姉様の婚約者だから同じような方かと思っていたのに。お姉様には勿体無いほど素敵な人ね」

 嫌な予感がしました。でもユーレイル様だけはそんなことはないだろうと信じていました。なぜならドレスやアクセサリーなどの物とは違ってユーレイル様には意志がありますから。

「ねえ、メイド。お姉様を屋根裏に閉じこめといてくれる?」
「アーデル?冗談ですよね?」
「お任せくださいお嬢様」
「きっと私を見たらお姉様と婚約破棄して、私に求婚してくれるに違いないわ、だってこんなに可愛いんだもの。はぁユーレイル様に会うのが楽しみ」
「待って、離して下さい!」

   今日は、ユーレイル様が屋敷に遊びに来てくれる日でした。だから今日のためになんとか耐えていたのです。

 そんな、ずっとずっと会いたかったのに。

 私は、メイド達に強く両腕を掴まれ、引きずるようにして屋根裏へ放り込まれました。閉められたドアからは鎖が擦れるような音がします。

「お願い、開けて」

  無情にも、扉にかけられた鎖がガチャガチャと擦れる音だけが廊下に響きました。何回も扉のドアノブを動かしたせいで、手のひらが赤くなりピリピリと傷みました。

 ユーレイル様。

 私は、ゆったりと扉に寄りかかりました。ポタポタと涙が床に落ちていきます。

 視界が涙で歪み、前がよく見えません。涙を拭き取ろうとしても、思い出すたびにまた涙が溢れてきて止まらないのです。

 やがて、泣き過ぎて頭が痛くなってしまいました。泣いてもなににもならない。そう思い、もう一度、涙をドレスの裾で拭きます。

 その時、窓から心地よいテノールの声が聞こえてきました。

 これは、ユーレイル様の声......?

 屋根裏にある小さな窓からは、庭園を歩くアーデルとユーレイル様の小さな姿を見ることしか出来ませんでした。

「今日、マリーベルがいないようだけど、どうしたのかな?」
「お姉様は、体調を崩していまして。病気をうつしたくないから代わりに私に案内してほしいと言われましたわ」

 うっとりと上目遣いでユーレイル様に瞬きをしながらアーデルがそう呟きました。それにしてもアーデルは、よくそんなに嘘が次から次へと出てくるものです。

「そうなんだね、それならマリーベルのお見舞いに行かないと」

 しかし、ユーレイル様は、アーデルなど眼中にないといった様子で屋敷に戻ろうとしました。アーベルは、嘘がバレるとまずいと思ったのか、屋敷に戻ろうとするユーレイルを引き止めました。

「ちょっと待って下さい。実は、私。マリーベルがユーレイル様の本を売っている所を見てしまいましたの」
「マリーベルが?」

    違います。私から本を奪い、売り払ったのは、アーデルです。

「ええ、婚約者様の本を売るなんてと思って止めたのですが、どうしても新しいドレスが欲しかったみたいで」

 ハンカチを目に当てながら、アーデルは泣き出しました。

「ユーレイル様の大切な本を守れず申し訳ありません」

    そういうと、アーデルはユーレイル様の方へ寄りかかりました。その時、アーデルがユーレイル様に寄りかかったまま、こちらを向いて笑いました。まるで私が勝ったといったような表情で。

「アーデルは、優しいんだね。俺の本を守ろうとしてくれてありがとう」

    今にでも、本を売ったのはアーデルだとユーレイル様に伝えようと口を開きました。しかし、ユーレイル様がアーデルを抱きしめている様子を見て怖くなってしまいました。

 もし、ドレスやアクセサリー。お気に入りの本のようにユーレイル様がアーデルに奪われてしまったのなら。

 天使のような容姿のアーデルを見て恋に落ちてしまったのなら。

 これ以上見てても傷付くだけです。私は、ゆっくり窓から離れようとしました。しかし、ユーレイル様は、恋に落ちた様子ではありませんでした。

「ところで、貴方のドレスはとっても素敵だね。最新の流行で、高級な真珠まで使われてる」
「ええ、そうですの!特にこの襟元のレースのデザインがお気に入りで」

  アーデルは、自分に関心を持って貰えたのが嬉しいのか大きな声でドレスについて語りました。そして、その様子を最後までにっこりと見守った後、ユーレイル様は、口を開きました。

「貴方は、最近ここに来たばかりのはずだけど、そのドレスのお金はどこから来たのかな?」
「っ.......!」
「ましては、貴方は、さっきマリーベルが体調が悪いと仰っていたけど、病人が新しいドレスを買うと思う?」
「わ、わ、私。ちょっと用事を思い出しましたわ」

 アーデルは、慌てて屋敷に戻っていきました。

◇◇◇◇◇◇

「マリーベル大丈夫?」

      ユーレイル様は、屋根裏部屋の扉にかけられた鎖を剣で切り裂き、私を抱きしめました。

「早く見つけられなくてごめんね。まさかこんなことになってるとは知らなくて……」
「大丈夫です。それに、ユーレイル様は、何も悪くありませんから」

 私は、ユーレイル様が来てくれたことに安心して、体の力が抜けていくのを感じました。

「ゆっくりで良いから何があったのか教えてくれる?」

   私は、ゆっくりと今までの出来事をユーレイル様に話しました。

「それにしても、俺の婚約者に手を出すなんて本当にバカだね、彼女には、それなりの報復を受けてもらうよ」

 ユーレイル様が怒っている所なんて初めて見ました。しかし、ユーレイル様のお手を煩わせるわけにはいきません。

「ユーレイル様、私はもう大丈夫ですわ。だから.....」
「マリーベルは、何も気にしなくていいんだからね。後は俺に任せて。マリーベルは俺がマリーベルしか愛さないことだけ信じていてほしい」
「分かりました」

 こういう時のユーレイル様を止めても無駄なことは今までの経験から知っています。私は、ユーレイル様を信じて静かに待つことにしました。
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