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第八話 サヤ目線・語らいの時
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ある夜のこと。
ココアを飲みながら、簡単な子供の本にチャレンジしていた聖女様の傍に仕えていた時のことであった。
夜が静かに更けていく中で、聖女様はまだ慣れない文字に苦戦するのをやめ、本を寝台の隣にある小机の上に置いた。
「サヤ。まだ、眠くないから、少し話し相手になってくれぬか?」
なんだかんだと言って聖女様と話す時間は多かった。いつもご飯の時は、自分は新聞を読み上げ、こうして寝る前は傍にいさせてもらう。それは、可愛い新たな妹であり、かつ敬愛する聖女の世話役は買って出たことだった。だからこそ、聖女様も次第にサヤは、最もよく話す気兼ねない女性となっていた。
「突然で申し訳ないが。その...どうしてシスターをしておるのだ?」
それは全く宗教と縁遠かった聖女が彼女がどうして健気に仕えてくれるのか分からずした問いだったのだが、もちろん、そんな風にはサヤは受け止めなかった。自分に至らない点があったのかもしれないと思い、何をやらかしたのだろうかと記憶を思い返し始めた。
「もしかして、何かご不満がおありでしょうか?」
膝をついて、聖女様のピンクパールの眼と合わせる。
「いや、そういう意味ではない。サヤの働きには細かな気配りには、いつも感謝しかない。...ありがとうな」
どうやら何か問題を起こしたわけではなかったと安堵しつつ、少し気恥し気に言う聖女様に、お姉さん気分でサヤは可愛いと内心微笑む。同時に、そうやってお礼を言ってもらえるのがすごく嬉しかった。実は、ここにいる術師たちの世話を、聖女様に仕える前はしていたのだが、彼らはだいたい自分がしたことには気づかないし、お礼も言わないのだ。なんとなく、その不満も一緒に解消される。
「では、聖女様。私がシスターをしている経緯を知りたいということでしょうか?」
「ああ、そういうことだ。その、神にすがりたくなるような、そういうことがあったのかと思ってな」
かつて日本の常識にしっかりハマっていた聖女からすれば、それは当然の疑問だった。宗教というのは、基本的に心の弱い者が縋りつくところ。まともでない人ばかり。であるが、サヤがそうと見えるか問われれば、ただの普通の可愛らしい女の子でしなかった。だからこそ、「なぜ?」という疑問が頭から離れなかった。
「ないと言われれば、ありますが。でも、なぜですか。逆に神をもし信じないのであれば...私には善悪がよくわかりません。それに、究極として生きている理由がありません」
「いや、でも。人としてやってはいけないことはわかるだろ? それに、生きている理由がないとは大げさな」
「そうでしょうか。自分の判断が正しいのか不安ですし。もし、この世で人生が終わるのであれば、それはあまりにも空しく、生きている意味が見出せません」
「確かに判断や決断は難しい...努力をしたうえで天命を待つことは何度もあったな」
辛気臭いほどに真剣になってしまった空気にどうしたものかと思いつつも、聖女も自分のかつての経験を絞って共感できる部分を探した。昔、経営者という立場であったころの話だ。決断に困ることもしばしばある。見通せない状況の中で、それでも決断を勇気をもってしなければいけない。当然、運も大きい。そういうこともあって、不安のために神社やお寺で神頼みをなんだかんだと節々にはしていたりもした。でも、信じていると公言するほどには信じていたわけでもなかった。
でも、彼女の言いたいこともわかる。正直、会社が倒産した時。家族とも離縁した時。一体何のために自分は働き生きているのだろうか、と問いかけたこともあった。自殺しようとした経営者仲間の気持ちもわからなくもなかった。自殺するほどの勇気もなくバカバカしかったが、自暴自棄でヤケになっていたのも事実。
「確かに生きる意味がわからぬ時もあるな。して、サヤは生きる意味が分かったのか?」
「少なくとも、きっと生きている経験自体が、どんな経験であろうと学びになり、私の魂の糧であると感じています。だから、ツラいときも、きっと神が試練としてなんらかの意図で与えたのだと思えるのです」
そうか、と聖女は遠い目をして息を吐かれた。「忘れていたかったな」と小さくつぶやかれた言葉が何を思い出しているのかは、サヤにはわからなかった。ただ、その眼はからポロポロと涙が落ちているのを見て、何か聖女にもあったのだろうとは察した。
黙って、タオルを戸棚から取り出し、彼女は膝の上に置いて差し上げた。
「すまんな。年甲斐もなく」
黙って首を横に振った。年甲斐と言っても、見た目は自分よりも若く見えるくらいから違和感を覚えた。不思議に思いつつ、タオルを眼頭に当てながら、聖女は静かに泣いている様子をチラッと見る。お傍にいた方がいいのか、一人にしてあげた方がいいのか逡巡する。
迷いあぐねて棒立ちしていたサヤに聖女は言葉をなげかける。
「...なぁ、我がままを言ってもいいか?今日は一緒に寝たい」
「いいですよ、そんな可愛らしい我がままなら」
ほどなくして支度が整い、ある程度聖女も落ち着き、二人は同じベッドの上に転がっていた。
聖女は、自分の気持ちが整理できぬままではあったが、ただ、罪悪感をやや感じつつも、首元近くにぐりぐりと頭を押し付ける。長い髪の毛から漂うシャンプーが甘く誘う。そして、若干腕に感じる胸という柔らかい存在にドギマギもしていた。ブラのないノーガードの至宝の存在に、下心が抑えても出てしまう。でも、体裁を取り繕うためにも、手を直接は出さない。
「聖女様は、今日は甘えん坊ですね」
よしよしと頭を撫でられ、抱きしめ返される。
こうやって人の温もり、特に女性の柔らかさを最後に感じたのはいつだったかな、と聖女は苦笑いする。なぜか、苦い経験や失敗の数々も許されて、受け止められる気がしていた。そして、そのサヤの柔らかな身体の温もり感じて安堵を覚える。消えがたい空しさや悲しさも、母親に包まれたような安心感で手放してしまう。そして、ゆっくりとまぶたが重くなり閉じた。
サヤも、妹のように可愛い聖女が落ち着いたのを見て、安堵していた。聖女が何に苦しまれているのかはわからない。でも、素直に甘えてくる聖女が可愛らしくて仕方なかった。
*********************
秋風が気持ちよくなってきました。なぜか、夏のラムネ瓶を見ると切なく感じる季節ですね。
昨日は友人と朝の3時近くまで長電話をしていました。
まじめな友人なので、話題もわりかしシリアスだったのもあり、なんとなく今日はセンチメンタル気味です。
でも、テレビ電話であっても、やっぱり実際に会うのには勝てないです。
人のぬくもりというか、愛情や優しさというのは、直で感じるのに価値があると個人的に思っています。きっとサービス業の多くも、そこにお金が払われているんだと勝手に思っています。
そう、聖女様ではないけれども、やっぱり人の温もりは直接味わいたいもんです....。
ココアを飲みながら、簡単な子供の本にチャレンジしていた聖女様の傍に仕えていた時のことであった。
夜が静かに更けていく中で、聖女様はまだ慣れない文字に苦戦するのをやめ、本を寝台の隣にある小机の上に置いた。
「サヤ。まだ、眠くないから、少し話し相手になってくれぬか?」
なんだかんだと言って聖女様と話す時間は多かった。いつもご飯の時は、自分は新聞を読み上げ、こうして寝る前は傍にいさせてもらう。それは、可愛い新たな妹であり、かつ敬愛する聖女の世話役は買って出たことだった。だからこそ、聖女様も次第にサヤは、最もよく話す気兼ねない女性となっていた。
「突然で申し訳ないが。その...どうしてシスターをしておるのだ?」
それは全く宗教と縁遠かった聖女が彼女がどうして健気に仕えてくれるのか分からずした問いだったのだが、もちろん、そんな風にはサヤは受け止めなかった。自分に至らない点があったのかもしれないと思い、何をやらかしたのだろうかと記憶を思い返し始めた。
「もしかして、何かご不満がおありでしょうか?」
膝をついて、聖女様のピンクパールの眼と合わせる。
「いや、そういう意味ではない。サヤの働きには細かな気配りには、いつも感謝しかない。...ありがとうな」
どうやら何か問題を起こしたわけではなかったと安堵しつつ、少し気恥し気に言う聖女様に、お姉さん気分でサヤは可愛いと内心微笑む。同時に、そうやってお礼を言ってもらえるのがすごく嬉しかった。実は、ここにいる術師たちの世話を、聖女様に仕える前はしていたのだが、彼らはだいたい自分がしたことには気づかないし、お礼も言わないのだ。なんとなく、その不満も一緒に解消される。
「では、聖女様。私がシスターをしている経緯を知りたいということでしょうか?」
「ああ、そういうことだ。その、神にすがりたくなるような、そういうことがあったのかと思ってな」
かつて日本の常識にしっかりハマっていた聖女からすれば、それは当然の疑問だった。宗教というのは、基本的に心の弱い者が縋りつくところ。まともでない人ばかり。であるが、サヤがそうと見えるか問われれば、ただの普通の可愛らしい女の子でしなかった。だからこそ、「なぜ?」という疑問が頭から離れなかった。
「ないと言われれば、ありますが。でも、なぜですか。逆に神をもし信じないのであれば...私には善悪がよくわかりません。それに、究極として生きている理由がありません」
「いや、でも。人としてやってはいけないことはわかるだろ? それに、生きている理由がないとは大げさな」
「そうでしょうか。自分の判断が正しいのか不安ですし。もし、この世で人生が終わるのであれば、それはあまりにも空しく、生きている意味が見出せません」
「確かに判断や決断は難しい...努力をしたうえで天命を待つことは何度もあったな」
辛気臭いほどに真剣になってしまった空気にどうしたものかと思いつつも、聖女も自分のかつての経験を絞って共感できる部分を探した。昔、経営者という立場であったころの話だ。決断に困ることもしばしばある。見通せない状況の中で、それでも決断を勇気をもってしなければいけない。当然、運も大きい。そういうこともあって、不安のために神社やお寺で神頼みをなんだかんだと節々にはしていたりもした。でも、信じていると公言するほどには信じていたわけでもなかった。
でも、彼女の言いたいこともわかる。正直、会社が倒産した時。家族とも離縁した時。一体何のために自分は働き生きているのだろうか、と問いかけたこともあった。自殺しようとした経営者仲間の気持ちもわからなくもなかった。自殺するほどの勇気もなくバカバカしかったが、自暴自棄でヤケになっていたのも事実。
「確かに生きる意味がわからぬ時もあるな。して、サヤは生きる意味が分かったのか?」
「少なくとも、きっと生きている経験自体が、どんな経験であろうと学びになり、私の魂の糧であると感じています。だから、ツラいときも、きっと神が試練としてなんらかの意図で与えたのだと思えるのです」
そうか、と聖女は遠い目をして息を吐かれた。「忘れていたかったな」と小さくつぶやかれた言葉が何を思い出しているのかは、サヤにはわからなかった。ただ、その眼はからポロポロと涙が落ちているのを見て、何か聖女にもあったのだろうとは察した。
黙って、タオルを戸棚から取り出し、彼女は膝の上に置いて差し上げた。
「すまんな。年甲斐もなく」
黙って首を横に振った。年甲斐と言っても、見た目は自分よりも若く見えるくらいから違和感を覚えた。不思議に思いつつ、タオルを眼頭に当てながら、聖女は静かに泣いている様子をチラッと見る。お傍にいた方がいいのか、一人にしてあげた方がいいのか逡巡する。
迷いあぐねて棒立ちしていたサヤに聖女は言葉をなげかける。
「...なぁ、我がままを言ってもいいか?今日は一緒に寝たい」
「いいですよ、そんな可愛らしい我がままなら」
ほどなくして支度が整い、ある程度聖女も落ち着き、二人は同じベッドの上に転がっていた。
聖女は、自分の気持ちが整理できぬままではあったが、ただ、罪悪感をやや感じつつも、首元近くにぐりぐりと頭を押し付ける。長い髪の毛から漂うシャンプーが甘く誘う。そして、若干腕に感じる胸という柔らかい存在にドギマギもしていた。ブラのないノーガードの至宝の存在に、下心が抑えても出てしまう。でも、体裁を取り繕うためにも、手を直接は出さない。
「聖女様は、今日は甘えん坊ですね」
よしよしと頭を撫でられ、抱きしめ返される。
こうやって人の温もり、特に女性の柔らかさを最後に感じたのはいつだったかな、と聖女は苦笑いする。なぜか、苦い経験や失敗の数々も許されて、受け止められる気がしていた。そして、そのサヤの柔らかな身体の温もり感じて安堵を覚える。消えがたい空しさや悲しさも、母親に包まれたような安心感で手放してしまう。そして、ゆっくりとまぶたが重くなり閉じた。
サヤも、妹のように可愛い聖女が落ち着いたのを見て、安堵していた。聖女が何に苦しまれているのかはわからない。でも、素直に甘えてくる聖女が可愛らしくて仕方なかった。
*********************
秋風が気持ちよくなってきました。なぜか、夏のラムネ瓶を見ると切なく感じる季節ですね。
昨日は友人と朝の3時近くまで長電話をしていました。
まじめな友人なので、話題もわりかしシリアスだったのもあり、なんとなく今日はセンチメンタル気味です。
でも、テレビ電話であっても、やっぱり実際に会うのには勝てないです。
人のぬくもりというか、愛情や優しさというのは、直で感じるのに価値があると個人的に思っています。きっとサービス業の多くも、そこにお金が払われているんだと勝手に思っています。
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