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第九話 攻撃はあまりにも不得意な聖女様
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かれこれと召喚されてから、2週間は既にたっていた。
視察と、勉強に追われ、流れてゆく日々はあまりにも早かった。俺は、目が覚めると、すやすやと愛らしい寝息をたてるサヤの顔が間近にあり、ウトウトしながら観察する。
まだ、夜明け前らしく、外は薄らぼんやりとは明るくなりつつあるようだった。まどろみ夢心地のまま、バレないだろうと思って額にキスをし、また夢に身を任せる。
次に目を覚ますと、すでにサヤの姿はなく、どうやら既に仕事に向かったようだった。
「おはようございます、聖女様」
「おはよう。今日も頼む」
「ええ、もちろんです」
レインは今日も授業をしてくれていた。こじんまりとした教室で、一番大好きな魔法に関して学ぼうとしていた。が、ちょっと昨日のサヤと話していて思い出してしまった過去のアレコレが頭をかすめているのも事実だった。
「ところで、レイン。聖魔法というのは、聖女にしか使えないのか?」
「そんなことはありませんよ。微々たるものであれば、使える人は大勢います。しかし、実際に聖女様の規模のクラスを使いこなせる人間はいませんね」
「ふむ、なるほど。ところで、聖女というのは、教会にとって具体的にどういう存在なのだ? おまえらが尊敬していることも、忠義を立てているのもわかっているが。俺は...平凡で失敗もする。なぜ、俺なのだ?」
レインはしばしアゴに手を当てて考えた。
「『聖女』という存在を降臨する秘術として伝承されたものを読み解いたとホッチポッチは言っていました。でも、もしかしたら、聖女様の方はどうやら『聖女』という自覚はあまり持っていらっしゃらないのですか?」
「そうだな。聖女というか、こう、そもそも性別が...」
ただの人生の敗者であり、そもそも男だったり、普通に欲も持ち合わせている自分が聖女となるのはおかしいと思うと内心ぶつぶつ呟いたが、しかし、「もともと男だ」「前の人生では...」と告白するのは憚れ、結局口をつぐんだ。それは、なんとんく彼らの期待を裏切るような気がしたからだ。
「わかりました。あとで、召喚に関してホッチポッチから話が行くようにします」
「ああ、聞いておいてくれ」
「さて、本題の魔法学の、今日は範囲設定を学びましょうか。とりあえず、さらっと概要に目を通してもらって、それからはひたすらに実技です」
魔法の密度やら、魔力量との関係、効果のある範囲を設定するための意識操作など、教科書にかてあることを一通り見た。それから、レインによって具体的にどんな風に行うのか、模擬練習をしていく。
意識を一点に集中させたり、分散させたり、魔力量を調整すると、どのように変化されるのか説明を受ける。
「聖女様の場合、広範囲にわたる魔法を拡散させることを今まで街中でもされていました。おそらく、体内の魔力量が尋常ではないので、普通に魔法を行使したつもりでも、それだけ広範囲に魔法をかけることが可能なのだと思います。逆に量が多い分、一点に集中させることは苦手かもしれません。ひとまず、広範囲にかけながら、思い通りに偏りをつくるところから始めましょうか」
こうして、まず、俺の場合は、聖魔法の範囲を、自分がいる階に留めることから始まり、徐々に魔力効果の濃度の差を練習していた。
ちなみに、一番自分が疲れにくく、かつ、見た瞬間にわかりやすいという理由で、彩度調整という無性魔法で練習に励んだ。休み時間の終わりで入ってきた侍女が数名が今にも泣きそうな目で駆け込んでいた。
「レインさん、お化けです、怪奇現象です! 灰色の世界が追いかけてきて..!!」
「白黒写真に入ってしまったかのようで。私も色が褪せそうになって」
「とにかく大変でヤバいんです!!!」
それぞれがこれでもかと一気に訴え始めたので、レインも俺も顔を見合わせて、盛大に焦った。これ、原因が自分たちであると告げて、怒られないだろうか。
「それは彩度調整の魔法のせいで...」
「ありえません! 彩度調整の魔法だって、そりゃ、多少の色あせを自分の身体にできたらいいですが、そもそも空間に対してかけるとかありえないです。まして、大昔の写真のように色あせることが可能だなんて...!!」
侍女の話を聞いて、俺は疑いの目をレインに向ける。
「なぁ、レイン。おまえ、まさか、研究のために空間に魔法がかけられるかどうか試してたり...」
「ま、まぁ、進歩のためには研究は欠かせないのですよ。私だと、聖女ほどの魔力量はないから、論理的には言えても、現実世界で実験するところまではなかなかいかないので」
レインは時々こうした魔法オタクなところがあり、勝手に実験データを取られることがちょくちょく起きる。オタクだと諦め、デコピンで俺は許してやることにする。というのも、それ以上に殴ろうとしても、すっと避けられてレインに攻撃できないので、デコピンくらいさせろ!と言ってパチンっとしているのだ。
デコピンをしても、俺の指が痛いだけで、レインのおでこは全く赤くもならないのだが。
「さて、休み時間です。ホッチポッチを探してきますね」
レインは、悔し気に見つめる俺を残して、足取り軽く教室から出ていった。なんだか気に食わない。
出ていったあとで、様子を見ていた侍女がこっそりと聖女の耳元に囁いた。
「聖女様。まだ、魔法を習ったばかりなので気づかなくて当然なのですが」
急に顔を近づけられたことで、ドギマギして顔を赤くさせる。耳元でかかる息がこそばゆい。
「レインさん、おそらく反射魔法をかけてました。だから、デコピンのダメージはすべて聖女様の指に跳ね返ってるかと...」
その言葉を聞いてようやく真実を悟った俺は、「あやつっ!!」と怒って、教室を飛び出す。当然、なんらかの仕返しをしてやろうと意気込んだのだが、結局殴りかかっても、簡単に避けられて、俺の息だけが荒くなるだけであった。
/*********/
えっと。時間軸がちょっとゴチャゴチャしてますね。一番先をいってるのが、なぜかレイン目線での回という...。
理由は簡単です、毎日テキトーに書いてるからです(笑)
先に繋がる話も一応構成しようとしているのですが、なんというか、「あれ、読者的には『いきなりすぎる』ってなるかもだな」と思い、今さらになって、他の登場人物の空白や思いを埋めている最中です。
後で時間軸通りになるように整理しようかな...。とりあえず、挨拶の回が終わるまでは厳しいです。お許しください。
視察と、勉強に追われ、流れてゆく日々はあまりにも早かった。俺は、目が覚めると、すやすやと愛らしい寝息をたてるサヤの顔が間近にあり、ウトウトしながら観察する。
まだ、夜明け前らしく、外は薄らぼんやりとは明るくなりつつあるようだった。まどろみ夢心地のまま、バレないだろうと思って額にキスをし、また夢に身を任せる。
次に目を覚ますと、すでにサヤの姿はなく、どうやら既に仕事に向かったようだった。
「おはようございます、聖女様」
「おはよう。今日も頼む」
「ええ、もちろんです」
レインは今日も授業をしてくれていた。こじんまりとした教室で、一番大好きな魔法に関して学ぼうとしていた。が、ちょっと昨日のサヤと話していて思い出してしまった過去のアレコレが頭をかすめているのも事実だった。
「ところで、レイン。聖魔法というのは、聖女にしか使えないのか?」
「そんなことはありませんよ。微々たるものであれば、使える人は大勢います。しかし、実際に聖女様の規模のクラスを使いこなせる人間はいませんね」
「ふむ、なるほど。ところで、聖女というのは、教会にとって具体的にどういう存在なのだ? おまえらが尊敬していることも、忠義を立てているのもわかっているが。俺は...平凡で失敗もする。なぜ、俺なのだ?」
レインはしばしアゴに手を当てて考えた。
「『聖女』という存在を降臨する秘術として伝承されたものを読み解いたとホッチポッチは言っていました。でも、もしかしたら、聖女様の方はどうやら『聖女』という自覚はあまり持っていらっしゃらないのですか?」
「そうだな。聖女というか、こう、そもそも性別が...」
ただの人生の敗者であり、そもそも男だったり、普通に欲も持ち合わせている自分が聖女となるのはおかしいと思うと内心ぶつぶつ呟いたが、しかし、「もともと男だ」「前の人生では...」と告白するのは憚れ、結局口をつぐんだ。それは、なんとんく彼らの期待を裏切るような気がしたからだ。
「わかりました。あとで、召喚に関してホッチポッチから話が行くようにします」
「ああ、聞いておいてくれ」
「さて、本題の魔法学の、今日は範囲設定を学びましょうか。とりあえず、さらっと概要に目を通してもらって、それからはひたすらに実技です」
魔法の密度やら、魔力量との関係、効果のある範囲を設定するための意識操作など、教科書にかてあることを一通り見た。それから、レインによって具体的にどんな風に行うのか、模擬練習をしていく。
意識を一点に集中させたり、分散させたり、魔力量を調整すると、どのように変化されるのか説明を受ける。
「聖女様の場合、広範囲にわたる魔法を拡散させることを今まで街中でもされていました。おそらく、体内の魔力量が尋常ではないので、普通に魔法を行使したつもりでも、それだけ広範囲に魔法をかけることが可能なのだと思います。逆に量が多い分、一点に集中させることは苦手かもしれません。ひとまず、広範囲にかけながら、思い通りに偏りをつくるところから始めましょうか」
こうして、まず、俺の場合は、聖魔法の範囲を、自分がいる階に留めることから始まり、徐々に魔力効果の濃度の差を練習していた。
ちなみに、一番自分が疲れにくく、かつ、見た瞬間にわかりやすいという理由で、彩度調整という無性魔法で練習に励んだ。休み時間の終わりで入ってきた侍女が数名が今にも泣きそうな目で駆け込んでいた。
「レインさん、お化けです、怪奇現象です! 灰色の世界が追いかけてきて..!!」
「白黒写真に入ってしまったかのようで。私も色が褪せそうになって」
「とにかく大変でヤバいんです!!!」
それぞれがこれでもかと一気に訴え始めたので、レインも俺も顔を見合わせて、盛大に焦った。これ、原因が自分たちであると告げて、怒られないだろうか。
「それは彩度調整の魔法のせいで...」
「ありえません! 彩度調整の魔法だって、そりゃ、多少の色あせを自分の身体にできたらいいですが、そもそも空間に対してかけるとかありえないです。まして、大昔の写真のように色あせることが可能だなんて...!!」
侍女の話を聞いて、俺は疑いの目をレインに向ける。
「なぁ、レイン。おまえ、まさか、研究のために空間に魔法がかけられるかどうか試してたり...」
「ま、まぁ、進歩のためには研究は欠かせないのですよ。私だと、聖女ほどの魔力量はないから、論理的には言えても、現実世界で実験するところまではなかなかいかないので」
レインは時々こうした魔法オタクなところがあり、勝手に実験データを取られることがちょくちょく起きる。オタクだと諦め、デコピンで俺は許してやることにする。というのも、それ以上に殴ろうとしても、すっと避けられてレインに攻撃できないので、デコピンくらいさせろ!と言ってパチンっとしているのだ。
デコピンをしても、俺の指が痛いだけで、レインのおでこは全く赤くもならないのだが。
「さて、休み時間です。ホッチポッチを探してきますね」
レインは、悔し気に見つめる俺を残して、足取り軽く教室から出ていった。なんだか気に食わない。
出ていったあとで、様子を見ていた侍女がこっそりと聖女の耳元に囁いた。
「聖女様。まだ、魔法を習ったばかりなので気づかなくて当然なのですが」
急に顔を近づけられたことで、ドギマギして顔を赤くさせる。耳元でかかる息がこそばゆい。
「レインさん、おそらく反射魔法をかけてました。だから、デコピンのダメージはすべて聖女様の指に跳ね返ってるかと...」
その言葉を聞いてようやく真実を悟った俺は、「あやつっ!!」と怒って、教室を飛び出す。当然、なんらかの仕返しをしてやろうと意気込んだのだが、結局殴りかかっても、簡単に避けられて、俺の息だけが荒くなるだけであった。
/*********/
えっと。時間軸がちょっとゴチャゴチャしてますね。一番先をいってるのが、なぜかレイン目線での回という...。
理由は簡単です、毎日テキトーに書いてるからです(笑)
先に繋がる話も一応構成しようとしているのですが、なんというか、「あれ、読者的には『いきなりすぎる』ってなるかもだな」と思い、今さらになって、他の登場人物の空白や思いを埋めている最中です。
後で時間軸通りになるように整理しようかな...。とりあえず、挨拶の回が終わるまでは厳しいです。お許しください。
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