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懺悔
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旦那様が亡くなって以来、私は偶に此処へ心を慰めにやってくる。
旦那様の部屋は亡くなってそろそろ一年になるのに私は、まだ片付けるのに躊躇している。
今日も此処へやって来た。
引き取った子ども達は欠けることなく皆それぞれに優秀でどの子であってもきっとこの公爵家を盛り立てて行ってくれるのではないかしら?
教育を始めて一年で素晴らしい出来なのだ。
もうすぐ隣国から一年前に発注した親子鑑定のできる魔導具が届く。
あの中の一人に決まったとしても他の4人は私の養子にして、そのまま引き取っても良いとさえ思っている。
私は実家である侯爵家から嫁入り道具の一つとして子爵を継承しているのだ。
旦那様の部屋の椅子に座ってぼんやりと寝台を眺めながら思いに耽っていたのだが⋯。
(あれは何だろう?)
旦那様のベッドは私の部屋のセミダブルと違ってクイーンサイズだった。
20年あまりの結婚生活では、たまにそこであれやこれやと誘われるがまま、いちゃついてアレを営むために、旦那様がベッドサイズを変更したのだ。
あの時はあからさまなその事に恥ずかしい気持ちになったわ。
前のベッドを移動する使用人達の目が何かを語っているようで真っ赤になったのを覚えている。
あら思考が飛んでしまった。
それは丁度旦那様の枕のあった位置で普段は隠れていた場所だ。
そんな所に抽斗が見えるのだけれども⋯。
いつもそこに私が横たわる時は無中になって旦那様に汗ばむ体で抱きついている時だから、注意深く見たことなんてなかった。
旦那様が亡くなってからも一度だけメイドに言ってベッドメイクしてもらったっきりだったし⋯。
気になってその抽斗を私は開けた。
中には手紙が一通、少し真ん中が膨らんでいる。
手に取ると中には何か小物が入っているみたい、封蝋は旦那様の物だ。
宛名が書いていなかったから少し躊躇したけれど、思い切って蝋を切った。
中には手紙と小さな鍵が入っていた。
この鍵は見覚えがある。
旦那様の執務室の机の抽斗の鍵だ。
亡くなったあと探したけれど何処にも見当たらなくて諦めていた物だった。
手紙を開くとそこには私への懺悔が書かれていた。
。・゚♡゚・。。・゚♡゚・。。・゚♡゚・。
ナタリーこの手紙を読んでいるという事は私は死んでしまっているという事だろう。
君にどうしても言えなかった秘密が私にはある。
勇気のない腰抜けな卑怯者を許してほしい。
いや許さなくてもいいけれど、いつか君が儚くなったときには必ず私の所に一度来てほしい。
いくらでも罵倒して構わないから⋯
実は私は子種のない男なんだ
発覚したのは今から10年前
一緒に隣国へ旅行に行っただろう?覚えているかい?
その時に冗談半分で王子たちとお忍びで市井の占いに行ったんだ。
将来の子供の数を訊ねるために。
私はその時は正直自身の子供は君に言ったように居なくても構わないと思っていたんだ。
だから王子達の戯れに付き合っただけのつもりだった。
結果は0人だった。
ただその後に占い婆から原因は私だと指摘されて狼狽えた。
まさかと思ったよ。
でも隣国は魔導具に精通している、子種を調べる事もできる魔導具が開発されていたんだ。
私は君に内緒で調べた。
結果は子種なしだったよ
ショックだった、何よりも君が私の母や親戚から罵倒されている原因が私だったなんて!
直ぐ君に話そうと思ったんだ
でも私は君に別れを告げられるのが怖くて言えなかった。
意気地なしの卑怯者だ。
私は君を初めて見たあの幼い時から君が大好きだった。
愛していた、いや今でも愛しているんだ。
こんな、あと何日生きられるかわからない病に侵されていても君への愛は一つも枯渇しない。
私と君との婚約に嫉妬した者達が、私が女たらしだの浮名を流してるだのと噂を立てられていても、君は私に付いてきてくれた。
そんな優しい君はこの事を打ち明けても私の側に居てくれるかもしれない。
でも離れてしまう可能性もゼロではない。
悩んで悩んで悩んで。
ごめんナタリー私はとてつもない卑怯者なんだ。
この体が最期の時を迎えていても如何しても君に側にいて欲しいと懇願し続けているんだ。
なかなか素直じゃない私と君だったがお互いに愛の言葉を贈る事は数える程だった。
私の日記を執務室の抽斗に入れてある。
情けない男の愛の言葉を読んでくれると嬉しい。
ナタリー
来世も君とともに在りたい
マルシェル・ターナー
──────────────
えっ?
どういう事?
ミランダってなに?
読み終わった私は直ぐに彼の執務室へ向かった。
鍵を開け中の日記を読んでミランダが誰かわかった。
涙が止まらない
この涙が貴方への怨みなのか
嘗て私を罵倒した義母への怒りなのか
貴方の辛い気持ちのときに寄り添えなかった悔しさなのか
私にはわからない
解るのは、私への懺悔の手紙を読んだとしても、例え気付かず読まなかったとしても⋯⋯。
旦那様、貴方を変わらず私は愛してるという事
旦那様の部屋は亡くなってそろそろ一年になるのに私は、まだ片付けるのに躊躇している。
今日も此処へやって来た。
引き取った子ども達は欠けることなく皆それぞれに優秀でどの子であってもきっとこの公爵家を盛り立てて行ってくれるのではないかしら?
教育を始めて一年で素晴らしい出来なのだ。
もうすぐ隣国から一年前に発注した親子鑑定のできる魔導具が届く。
あの中の一人に決まったとしても他の4人は私の養子にして、そのまま引き取っても良いとさえ思っている。
私は実家である侯爵家から嫁入り道具の一つとして子爵を継承しているのだ。
旦那様の部屋の椅子に座ってぼんやりと寝台を眺めながら思いに耽っていたのだが⋯。
(あれは何だろう?)
旦那様のベッドは私の部屋のセミダブルと違ってクイーンサイズだった。
20年あまりの結婚生活では、たまにそこであれやこれやと誘われるがまま、いちゃついてアレを営むために、旦那様がベッドサイズを変更したのだ。
あの時はあからさまなその事に恥ずかしい気持ちになったわ。
前のベッドを移動する使用人達の目が何かを語っているようで真っ赤になったのを覚えている。
あら思考が飛んでしまった。
それは丁度旦那様の枕のあった位置で普段は隠れていた場所だ。
そんな所に抽斗が見えるのだけれども⋯。
いつもそこに私が横たわる時は無中になって旦那様に汗ばむ体で抱きついている時だから、注意深く見たことなんてなかった。
旦那様が亡くなってからも一度だけメイドに言ってベッドメイクしてもらったっきりだったし⋯。
気になってその抽斗を私は開けた。
中には手紙が一通、少し真ん中が膨らんでいる。
手に取ると中には何か小物が入っているみたい、封蝋は旦那様の物だ。
宛名が書いていなかったから少し躊躇したけれど、思い切って蝋を切った。
中には手紙と小さな鍵が入っていた。
この鍵は見覚えがある。
旦那様の執務室の机の抽斗の鍵だ。
亡くなったあと探したけれど何処にも見当たらなくて諦めていた物だった。
手紙を開くとそこには私への懺悔が書かれていた。
。・゚♡゚・。。・゚♡゚・。。・゚♡゚・。
ナタリーこの手紙を読んでいるという事は私は死んでしまっているという事だろう。
君にどうしても言えなかった秘密が私にはある。
勇気のない腰抜けな卑怯者を許してほしい。
いや許さなくてもいいけれど、いつか君が儚くなったときには必ず私の所に一度来てほしい。
いくらでも罵倒して構わないから⋯
実は私は子種のない男なんだ
発覚したのは今から10年前
一緒に隣国へ旅行に行っただろう?覚えているかい?
その時に冗談半分で王子たちとお忍びで市井の占いに行ったんだ。
将来の子供の数を訊ねるために。
私はその時は正直自身の子供は君に言ったように居なくても構わないと思っていたんだ。
だから王子達の戯れに付き合っただけのつもりだった。
結果は0人だった。
ただその後に占い婆から原因は私だと指摘されて狼狽えた。
まさかと思ったよ。
でも隣国は魔導具に精通している、子種を調べる事もできる魔導具が開発されていたんだ。
私は君に内緒で調べた。
結果は子種なしだったよ
ショックだった、何よりも君が私の母や親戚から罵倒されている原因が私だったなんて!
直ぐ君に話そうと思ったんだ
でも私は君に別れを告げられるのが怖くて言えなかった。
意気地なしの卑怯者だ。
私は君を初めて見たあの幼い時から君が大好きだった。
愛していた、いや今でも愛しているんだ。
こんな、あと何日生きられるかわからない病に侵されていても君への愛は一つも枯渇しない。
私と君との婚約に嫉妬した者達が、私が女たらしだの浮名を流してるだのと噂を立てられていても、君は私に付いてきてくれた。
そんな優しい君はこの事を打ち明けても私の側に居てくれるかもしれない。
でも離れてしまう可能性もゼロではない。
悩んで悩んで悩んで。
ごめんナタリー私はとてつもない卑怯者なんだ。
この体が最期の時を迎えていても如何しても君に側にいて欲しいと懇願し続けているんだ。
なかなか素直じゃない私と君だったがお互いに愛の言葉を贈る事は数える程だった。
私の日記を執務室の抽斗に入れてある。
情けない男の愛の言葉を読んでくれると嬉しい。
ナタリー
来世も君とともに在りたい
マルシェル・ターナー
──────────────
えっ?
どういう事?
ミランダってなに?
読み終わった私は直ぐに彼の執務室へ向かった。
鍵を開け中の日記を読んでミランダが誰かわかった。
涙が止まらない
この涙が貴方への怨みなのか
嘗て私を罵倒した義母への怒りなのか
貴方の辛い気持ちのときに寄り添えなかった悔しさなのか
私にはわからない
解るのは、私への懺悔の手紙を読んだとしても、例え気付かず読まなかったとしても⋯⋯。
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2025.09.21 追記
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