1 / 12
1 家出は梟の声と共に
しおりを挟む
何処からか梟の声がする。夜の静寂に弱く響くその声に私は緊張から息を呑む
─ゴクリ─
その音が思ったよりも私の耳に響いた。
足元は靴下だけで忍び足、靴は両手に持っている。
ソォーッとソォーッと歩くのに廊下の軋む音が心臓に悪い。
人気はないが見回りの使用人に見つかりたくはない。
この屋敷の裏口近くには使用人達の宿舎がある。其方からは出られない。正門は当然乍門番が複数人デデンと構えている。
彼等は1時間起きに交代で見回りもしているから蟻一匹もこの屋敷には侵入できない。
でも外部の人間が侵入は出来なくても内部の人間が出るのはタイミング次第で可能だ。
今日当主夫妻は一晩不在、弟も友人宅へとお出かけだ。この時を私は狙っていた。
目指すのは父の執務室。
やっとの思いで辿り着くと扉を開く。
─ギギ─
扉の音にまたもや私は息を呑む。
油の差しが悪いんじゃない?お父様に言って家令を叱ってもらわなきゃ!なんて考えてそれを伝える事はないんだと思い出す。
父の執務室の窓を開くと私はそこから体を乗り上げ外に出た。最後の最後で肩掛けにしていた鞄が少し大きすぎたようで、窓枠に引っかかり余計な時間がかかってしまい焦る。
地面に足が着いてから靴を履く。
比較的ヒールの低い靴を選んだけれど、それでも土の上を歩くにはヒールの高さが邪魔をして歩きにくい。
事前に狙っていた場所へ肩に下げていた重い鞄を胸元まで両手で持ち上げて抱きかかえる様にして走った。
丁度見回りの二人が軽口を言い合いながらも規則正しい足音を響かせ通り過ぎる音が聞こえた。
壁に凭れて大きく息を吐いた。
ここは昔、弟と一緒に家の者に内緒で外に遊びに出る時作った穴。
弟の事だから彼女に会いたい時に今も利用しているはず、壁をトントンと拳で叩くとスポっとそこに穴が開いた。ほらね案の定、しかも昔よりも穴が大きい。
スルッと体を滑らせてさっきの壁をこちら側から引っ張り出してまた同じ様に嵌めた。
これでよし!
それから私は通りの向こうの森へと消えていった。
ハハハ脱出成功!
あとは野となれ山となれ。
─ゴクリ─
その音が思ったよりも私の耳に響いた。
足元は靴下だけで忍び足、靴は両手に持っている。
ソォーッとソォーッと歩くのに廊下の軋む音が心臓に悪い。
人気はないが見回りの使用人に見つかりたくはない。
この屋敷の裏口近くには使用人達の宿舎がある。其方からは出られない。正門は当然乍門番が複数人デデンと構えている。
彼等は1時間起きに交代で見回りもしているから蟻一匹もこの屋敷には侵入できない。
でも外部の人間が侵入は出来なくても内部の人間が出るのはタイミング次第で可能だ。
今日当主夫妻は一晩不在、弟も友人宅へとお出かけだ。この時を私は狙っていた。
目指すのは父の執務室。
やっとの思いで辿り着くと扉を開く。
─ギギ─
扉の音にまたもや私は息を呑む。
油の差しが悪いんじゃない?お父様に言って家令を叱ってもらわなきゃ!なんて考えてそれを伝える事はないんだと思い出す。
父の執務室の窓を開くと私はそこから体を乗り上げ外に出た。最後の最後で肩掛けにしていた鞄が少し大きすぎたようで、窓枠に引っかかり余計な時間がかかってしまい焦る。
地面に足が着いてから靴を履く。
比較的ヒールの低い靴を選んだけれど、それでも土の上を歩くにはヒールの高さが邪魔をして歩きにくい。
事前に狙っていた場所へ肩に下げていた重い鞄を胸元まで両手で持ち上げて抱きかかえる様にして走った。
丁度見回りの二人が軽口を言い合いながらも規則正しい足音を響かせ通り過ぎる音が聞こえた。
壁に凭れて大きく息を吐いた。
ここは昔、弟と一緒に家の者に内緒で外に遊びに出る時作った穴。
弟の事だから彼女に会いたい時に今も利用しているはず、壁をトントンと拳で叩くとスポっとそこに穴が開いた。ほらね案の定、しかも昔よりも穴が大きい。
スルッと体を滑らせてさっきの壁をこちら側から引っ張り出してまた同じ様に嵌めた。
これでよし!
それから私は通りの向こうの森へと消えていった。
ハハハ脱出成功!
あとは野となれ山となれ。
51
あなたにおすすめの小説
これで、私も自由になれます
たくわん
恋愛
社交界で「地味で会話がつまらない」と評判のエリザベート・フォン・リヒテンシュタイン。婚約者である公爵家の長男アレクサンダーから、舞踏会の場で突然婚約破棄を告げられる。理由は「華やかで魅力的な」子爵令嬢ソフィアとの恋。エリザベートは静かに受け入れ、社交界の噂話の的になる。
『龍の生け贄婚』令嬢、夫に溺愛されながら、自分を捨てた家族にざまぁします
卯月八花
恋愛
公爵令嬢ルディーナは、親戚に家を乗っ取られ虐げられていた。
ある日、妹に魔物を統べる龍の皇帝グラルシオから結婚が申し込まれる。
泣いて嫌がる妹の身代わりとして、ルディーナはグラルシオに嫁ぐことになるが――。
「だからお前なのだ、ルディーナ。俺はお前が欲しかった」
グラルシオは実はルディーナの曾祖父が書いたミステリー小説の熱狂的なファンであり、直系の子孫でありながら虐げられる彼女を救い出すために、結婚という名目で呼び寄せたのだ。
敬愛する作家のひ孫に眼を輝かせるグラルシオ。
二人は、強欲な親戚に奪われたフォーコン公爵家を取り戻すため、奇妙な共犯関係を結んで反撃を開始する。
これは不遇な令嬢が最強の龍皇帝に溺愛され、捨てた家族に復讐を果たす大逆転サクセスストーリーです。
(ハッピーエンド確約/ざまぁ要素あり/他サイト様にも掲載中)
もし面白いと思っていただけましたら、お気に入り登録・いいねなどしていただけましたら、作者の大変なモチベーション向上になりますので、ぜひお願いします!
婚約破棄された氷の令嬢 ~偽りの聖女を暴き、炎の公爵エクウスに溺愛される~
ふわふわ
恋愛
侯爵令嬢アイシス・ヴァレンティンは、王太子レグナムの婚約者として厳しい妃教育に耐えてきた。しかし、王宮パーティーで突然婚約破棄を宣告される。理由は、レグナムの幼馴染で「聖女」と称されるエマが「アイシスにいじめられた」という濡れ衣。実際はすべてエマの策略だった。
絶望の底で、アイシスは前世の記憶を思い出す――この世界は乙女ゲームで、自分は「悪役令嬢」として破滅する運命だった。覚醒した氷魔法の力と前世知識を武器に、辺境のフロスト領へ追放されたアイシスは、自立の道を選ぶ。そこで出会ったのは、冷徹で「炎の公爵」と恐れられるエクウス・ドラゴン。彼はアイシスの魔法に興味を持ち、政略結婚を提案するが、実は一目惚れで彼女を溺愛し始める。
アイシスは氷魔法で領地を繁栄させ、騎士ルークスと魔導師セナの忠誠を得ながら、逆ハーレム的な甘い日常を過ごす。一方、王都ではエマの偽聖女の力が暴かれ、レグナムは後悔の涙を流す。最終決戦で、アイシスとエクウスの「氷炎魔法」が王国軍を撃破。偽りの聖女は転落し、王国は変わる。
**氷の令嬢は、炎の公爵に溺愛され、運命を逆転させる**。
婚約破棄の屈辱から始まる、爽快ザマアと胸キュン溺愛の物語。
あなたの幸せを、心からお祈りしています【宮廷音楽家の娘の逆転劇】
たくわん
恋愛
「平民の娘ごときが、騎士の妻になれると思ったのか」
宮廷音楽家の娘リディアは、愛を誓い合った騎士エドゥアルトから、一方的に婚約破棄を告げられる。理由は「身分違い」。彼が選んだのは、爵位と持参金を持つ貴族令嬢だった。
傷ついた心を抱えながらも、リディアは決意する。
「音楽の道で、誰にも見下されない存在になってみせる」
革新的な合奏曲の創作、宮廷初の「音楽会」の開催、そして若き隣国王子との出会い——。
才能と努力だけを武器に、リディアは宮廷音楽界の頂点へと駆け上がっていく。
一方、妻の浪費と実家の圧力に苦しむエドゥアルトは、次第に転落の道を辿り始める。そして彼は気づくのだ。自分が何を失ったのかを。
完 さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。
水鳥楓椛
恋愛
わたくし、エリザベート・ラ・ツェリーナは今日愛しの婚約者である王太子レオンハルト・フォン・アイゼンハーツに婚約破棄をされる。
なんでそんなことが分かるかって?
それはわたくしに前世の記憶があるから。
婚約破棄されるって分かっているならば逃げればいいって思うでしょう?
でも、わたくしは愛しの婚約者さまの役に立ちたい。
だから、どんなに惨めなめに遭うとしても、わたくしは彼の前に立つ。
さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。
不謹慎なブス令嬢を演じてきましたが、もうその必要はありません。今日ばっかりはクズ王子にはっきりと言ってやります!
幌あきら
恋愛
【恋愛ファンタジー・クズ王子系・ざまぁ】
この王子との婚約ばっかりは拒否する理由がある――!
アレリア・カッチェス侯爵令嬢は、美麗クズ王子からの婚約打診が嫌で『不謹慎なブス令嬢』を装っている。
しかしそんな苦労も残念ながら王子はアレリアを諦める気配はない。
アレリアは王子が煩わしく領内の神殿に逃げるが、あきらめきれない王子はアレリアを探して神殿まで押しかける……!
王子がなぜアレリアに執着するのか、なぜアレリアはこんなに頑なに王子を拒否するのか?
その秘密はアレリアの弟の結婚にあった――?
クズ王子を書きたくて、こんな話になりました(笑)
いろいろゆるゆるかとは思いますが、よろしくお願いいたします!
他サイト様にも投稿しています。
婚約者と従妹に裏切られましたが、私の『呪われた耳』は全ての嘘をお見通しです
法華
恋愛
『音色の魔女』と蔑まれる伯爵令嬢リディア。婚約者であるアラン王子は、可憐でか弱い従妹のセリーナばかりを寵愛し、リディアを心無い言葉で傷つける日々を送っていた。
そんなある夜、リディアは信じていた婚約者と従妹が、自分を貶めるために共謀している事実を知ってしまう。彼らにとって自分は、家の利益のための道具でしかなかったのだ。
全てを失い絶望の淵に立たされた彼女だったが、その裏切りこそが、彼女を新たな出会いと覚醒へと導く序曲となる。
忌み嫌われた呪いの力で、嘘で塗り固められた偽りの旋律に終止符を打つ時、自分を裏切った者たちが耳にするのは、破滅へのレクイエム。
これは、不遇の令嬢が真実の音色を見つけ、本当の幸せを掴むまでの逆転の物語。
婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜
夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」
婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。
彼女は涙を見せず、静かに笑った。
──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。
「そなたに、我が祝福を授けよう」
神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。
だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。
──そして半年後。
隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、
ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。
「……この命、お前に捧げよう」
「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」
かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。
──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、
“氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる