幽閉されていた王女は悪女の汚名を復讐で返上する

maruko

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5 大切な家族

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「ねぇメープル」

その日メープルは学園から帰って来たティーラに手招きとともに声をかけられた。
最近カミラとティーラが、メープルに気付かれないようにして何かコソコソとしている事に、実はメープルは気づいていたけれど、二人は母娘なのだからそんな事もあるのかなと、少し寂しさを感じながらも気づかぬふりをしていた。

「じゃじゃーん」

呼ばれてメープルが行くと、ティーラがヘッドに小さな飾りのついたネックレスのチェーンを、両手で持ちながらメープルに見せた。後ろにはカミラもいてニコニコと笑っている。

「?」

ネックレスを見せられてもメープルにはよく分からなくて、首を傾げているとティーラがじれったいという感じで言った。

「もうすぐメープルが来て一年でしょう、それにお誕生日も近いって聞いたから。これ母さんと私で作ったの」

そう言ってそのネックレスをメープルの手に握らせた。
思わず息を呑んだメープルはネックレスをまじまじと見て、そして今度はカミラとティーラを見つめる。その目からはブワッと涙が溢れ、そのまま頬を伝った。

「あっあっあっ⋯⋯」

ありがとうと言いたいのに声が続かないメープルはそのうち声が出せなくなった。
その様子に母娘は慌てふためいた。

「そっそんなに喜んでくれて嬉しいんだけど安物なのよ!」
「そっそうよ泣くほど高くないから」

長年貧乏な二人はつい値段の事しか思い浮かばないが、メープルの感動はそんな事ではない。
生まれて初めて貰う誕生日のプレゼント、感動しないわけがなかった。

「ありがとうございます」

やっとお礼を言い切ったメープルにカミラが気まずそうに言った。

「そんなに喜んで貰えるとすごく言いにくくなっちゃったんだけどさ。これ実はティーラの学園の友達から聞いた内職として扱った品なんだよ」

「内職ですか?」

「そう。少し前にさ、ティーラが友達から聞いてきて二人で始めたんだよ。そうしたら思わず良いのが出来ちゃって。それでメープルの誕生日プレゼントにしようと思いついたんだよ。だからそんなに上等じゃなくて」

「そんな事ないです!これ叔母さまとティーラが作ったの?凄いわ!」

益々感動したメープルは、その手の中にあるネックレスに頬擦りをし始めた。

「もう!メープル、大袈裟だよ。そんなにしたら言い出しにくいじゃない!」

ティーラの言葉にメープルはまたもや首を傾げた。

「その内職さ、メープルもやってみない?」

「私がですか?」

「そうだよ、パンは朝にしか焼かないだろう。昼間は手が空いてるだろうから。無理せずに少しずつでいいんだよ、ノルマなんかないし。お金は出来高から材料費を引かれた金額で、そんなには貰えないけどさ、試しにやってみたけど難しくなかったからメープルも一緒にどうかな」

カミラの言葉にメープルは瞬きを繰り返した。

「私も一緒にしてもいいんですか?」

「あぁ一緒にやろう、プレゼントの事があったから内緒でやってたけど、メープルがヤル気なら今日からでも一緒にね」

メープルは嬉しくなって天にも登るような気持ちだった。
最近感じていた寂しさと疎外感が自分へのサプライズだった事も驚くほど嬉しかったけれど、それよりも“一緒に”という言葉が身に染みるほどに歓喜した。
メープルはミシェルフォンの時、誰とも何かを“一緒に”する事がなかったから、それが本当に嬉しくて、その事実を知らない二人にこの感謝の気持ちをどうやって現そうかと考えていたら、また涙が溢れてきた。

そうしたらティーラがまたメープルを感動させる。

「家族なんだから一緒にするの当たり前じゃん!」

その言葉でメープルはこの家の家族に入れてもらえているんだとそう思ってまた嬉しさがカサ増した。

大切な大切なメープルの家族。
心の中にフワンと温かい何かが溢れてきた。

「ありがとう」

メープルは感謝の気持ちを沢山乗せて二人にお礼を言って微笑んだ。





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