9 / 28
8 迷惑千万
しおりを挟む
ティーラは学園には徒歩で通っている。
13歳から通っている片道45分の通学路もあと半年で終了する、もうすぐ卒業だから。
通い慣れたこの道を最近一緒に歩き始めた人がいる。
ティーラが通う学園は、王都の端にある森を利用して“自然の中の学園”を謳い文句に建てられていた。
ティーラが住む領地は王都の隣ではあるが、彼女の家は領都よりも少しばかり離れている。
学園まで歩きとなると、かなりの距離だが田舎すぎて辻馬車が1日3本しか通らない。
全ての馬車が、王都に通う騎士の就業時間に合わせて設定されている為、どの時間も早すぎるか遅すぎる。お金を払ってまでティーラは乗る気にはなれなかった。
父のルコッタは通い始めの頃は心配して付いて来たりもしていたが、1年ほど経つと安心したのか送迎はしなくなった。今はティーラ一人でテクテクと通っている。
領都からは馬車もあるのだが乗って10分で着くなら勿体無いのでティーラは乗らない。
そんなティーラと領都から一緒に歩いているのは、クラスは違うが同い年のトレッシュだ。
金髪の美少年、いや年齢的に美青年は顔だけでも学園の人気者だが、一昨年行われた剣術大会で準優勝したから、それからはファンクラブまで出来てしまうほどに人気が爆上がった。最近はそろそろ卒業間近の女子達が、騎士爵候補の彼を結婚相手として狙っているのだ。
そんな彼が最近ティーラに付き纏っているのは、彼がティーラを“見初めた”という訳ではない。
ティーラは父に似て平民にしては整った顔立ちだ、見ようによっては可愛らしくも見えて、今までも学園で知らない男の子や知ってる男の子に誘われたりもしていた、割とモテると自分でも思っていたが、トレッシュに関しては違う。
彼の思惑はティーラにとっては大変迷惑な行為なのだ。本人はそう思ってないようだけど。
彼の狙いは“メープル”だ。
しかも彼が狙っているのではない、彼の兄がメープルに一目惚れしてしまったという事らしい。
メープルはティーラの従姉妹で1年半前にルコッタベーカリーに父が連れて来た。
最初は戸惑いながらお互い辿々しく話していたけれど、世話好きの母のおかげで、今では生まれた時から一緒にいる姉妹の様に仲が良い。
メープルは外国から来たけれど、どこからきたのか父は教えてくれないし、本気で家と庭しかメープルを出さない。
一度学園の子と一緒にピクニックに行く事になった時、誘ってみたけれどメープルからも断られたし、後で父のルコッタにこっ酷く叱られた。その様は最早病的だ。それほどにルコッタの叱責は怖かった。
それ以来、メープルを外には誘っていないけれど、家の中では一緒に過ごしている。
そんなメープルをどこで見かけたのかは、まぁおそらく我が家の庭だろうとティーラは推測している。向こう側の川岸からでも見かけたのではないか?それ以外考えられない。
彼の話ではトレッシュの兄もかなりの美男子らしく、モテるらしいから自信があるみたいで、何度断っても執拗く付きまとう。
今日もダブルデートをどうかという話を学園までの道すがらずっと誘われている。
(もう!鬱陶しい!)
この事でティーラは最近学園に通うのが憂鬱になっていた。トレッシュが教室まで送るから非ぬ疑いをかけられて、嫉妬に狂った貴族令嬢達からティーラは非難轟々の嵐だ。
その日も教室に着くと侯爵家のご令嬢のリリアーヌ様が、本当に貴族令嬢なのか?と言いたくなるような足音も荒く取り巻き達とティーラの机までやってきた。
「ちょっとそこの平民!」
トレッシュが纏わり付くまでは“ティーラさん”と呼んでくれていたのに、この変わり様には面食らう。
「トレッシュに付き纏わないでと、わたくし言いましたわよね!」
(はい聞きました)
「どうして守ってくださらないの?」
(それはトレッシュに言って下さいと私言いましたよね)
「どうして黙ってるのよ!」
(言葉にしたら手を出すからですよ)
一度ティーラは勇気をだして反論してみたが、取り巻きから頬を叩かれたのだ。平民が貴族から手を出されても文句が言えない風潮にある為誰も咎めない。
それ以来痛いのは嫌だとティーラは黙りを決め込むことにしていた。
だが今日は余程機嫌でも悪かったのか、侯爵令嬢に頬を張られてしまった。
ティーラも油断していたのもあるが、その張り手が思いの外クリーンヒットしてしまい、ティーラは2つほど机を薙ぎ倒す勢いで倒れ込んだ。
その音は大きかった。
クラスは勿論のこと、両隣のクラスにまで聞こえたようで野次馬の凄い数がティーラのクラスに集まった。
「ティー!」
隣のクラスで、ティーラの友人である領主様の娘がティーラを抱き起こしてくれた。
彼女は伯爵令嬢だが、祖母が元王女という事もあって、周りから一目置かれている人だった。
「ティーラに代わって抗議させて頂くわ!」
毅然とした態度で侯爵令嬢に物申す友人が、頼もしくもありそして嬉しくもありで、ティーラはホッとして熱を孕んだ頬を押さえながら意識を手放していた。
気付いたときには学園の医務室のベッドに寝かされていた。
傍らには父のルコッタが居てティーラは驚いた。
目を開けたティーラの頬をルコッタはそっと撫でながら「すまない」と一言詫びられた。
何故詫びられたのか不思議に思ったティーラだったが、その日の夜到頭父がメープルの秘密をティーラとカミラに打ち明けた。
13歳から通っている片道45分の通学路もあと半年で終了する、もうすぐ卒業だから。
通い慣れたこの道を最近一緒に歩き始めた人がいる。
ティーラが通う学園は、王都の端にある森を利用して“自然の中の学園”を謳い文句に建てられていた。
ティーラが住む領地は王都の隣ではあるが、彼女の家は領都よりも少しばかり離れている。
学園まで歩きとなると、かなりの距離だが田舎すぎて辻馬車が1日3本しか通らない。
全ての馬車が、王都に通う騎士の就業時間に合わせて設定されている為、どの時間も早すぎるか遅すぎる。お金を払ってまでティーラは乗る気にはなれなかった。
父のルコッタは通い始めの頃は心配して付いて来たりもしていたが、1年ほど経つと安心したのか送迎はしなくなった。今はティーラ一人でテクテクと通っている。
領都からは馬車もあるのだが乗って10分で着くなら勿体無いのでティーラは乗らない。
そんなティーラと領都から一緒に歩いているのは、クラスは違うが同い年のトレッシュだ。
金髪の美少年、いや年齢的に美青年は顔だけでも学園の人気者だが、一昨年行われた剣術大会で準優勝したから、それからはファンクラブまで出来てしまうほどに人気が爆上がった。最近はそろそろ卒業間近の女子達が、騎士爵候補の彼を結婚相手として狙っているのだ。
そんな彼が最近ティーラに付き纏っているのは、彼がティーラを“見初めた”という訳ではない。
ティーラは父に似て平民にしては整った顔立ちだ、見ようによっては可愛らしくも見えて、今までも学園で知らない男の子や知ってる男の子に誘われたりもしていた、割とモテると自分でも思っていたが、トレッシュに関しては違う。
彼の思惑はティーラにとっては大変迷惑な行為なのだ。本人はそう思ってないようだけど。
彼の狙いは“メープル”だ。
しかも彼が狙っているのではない、彼の兄がメープルに一目惚れしてしまったという事らしい。
メープルはティーラの従姉妹で1年半前にルコッタベーカリーに父が連れて来た。
最初は戸惑いながらお互い辿々しく話していたけれど、世話好きの母のおかげで、今では生まれた時から一緒にいる姉妹の様に仲が良い。
メープルは外国から来たけれど、どこからきたのか父は教えてくれないし、本気で家と庭しかメープルを出さない。
一度学園の子と一緒にピクニックに行く事になった時、誘ってみたけれどメープルからも断られたし、後で父のルコッタにこっ酷く叱られた。その様は最早病的だ。それほどにルコッタの叱責は怖かった。
それ以来、メープルを外には誘っていないけれど、家の中では一緒に過ごしている。
そんなメープルをどこで見かけたのかは、まぁおそらく我が家の庭だろうとティーラは推測している。向こう側の川岸からでも見かけたのではないか?それ以外考えられない。
彼の話ではトレッシュの兄もかなりの美男子らしく、モテるらしいから自信があるみたいで、何度断っても執拗く付きまとう。
今日もダブルデートをどうかという話を学園までの道すがらずっと誘われている。
(もう!鬱陶しい!)
この事でティーラは最近学園に通うのが憂鬱になっていた。トレッシュが教室まで送るから非ぬ疑いをかけられて、嫉妬に狂った貴族令嬢達からティーラは非難轟々の嵐だ。
その日も教室に着くと侯爵家のご令嬢のリリアーヌ様が、本当に貴族令嬢なのか?と言いたくなるような足音も荒く取り巻き達とティーラの机までやってきた。
「ちょっとそこの平民!」
トレッシュが纏わり付くまでは“ティーラさん”と呼んでくれていたのに、この変わり様には面食らう。
「トレッシュに付き纏わないでと、わたくし言いましたわよね!」
(はい聞きました)
「どうして守ってくださらないの?」
(それはトレッシュに言って下さいと私言いましたよね)
「どうして黙ってるのよ!」
(言葉にしたら手を出すからですよ)
一度ティーラは勇気をだして反論してみたが、取り巻きから頬を叩かれたのだ。平民が貴族から手を出されても文句が言えない風潮にある為誰も咎めない。
それ以来痛いのは嫌だとティーラは黙りを決め込むことにしていた。
だが今日は余程機嫌でも悪かったのか、侯爵令嬢に頬を張られてしまった。
ティーラも油断していたのもあるが、その張り手が思いの外クリーンヒットしてしまい、ティーラは2つほど机を薙ぎ倒す勢いで倒れ込んだ。
その音は大きかった。
クラスは勿論のこと、両隣のクラスにまで聞こえたようで野次馬の凄い数がティーラのクラスに集まった。
「ティー!」
隣のクラスで、ティーラの友人である領主様の娘がティーラを抱き起こしてくれた。
彼女は伯爵令嬢だが、祖母が元王女という事もあって、周りから一目置かれている人だった。
「ティーラに代わって抗議させて頂くわ!」
毅然とした態度で侯爵令嬢に物申す友人が、頼もしくもありそして嬉しくもありで、ティーラはホッとして熱を孕んだ頬を押さえながら意識を手放していた。
気付いたときには学園の医務室のベッドに寝かされていた。
傍らには父のルコッタが居てティーラは驚いた。
目を開けたティーラの頬をルコッタはそっと撫でながら「すまない」と一言詫びられた。
何故詫びられたのか不思議に思ったティーラだったが、その日の夜到頭父がメープルの秘密をティーラとカミラに打ち明けた。
27
あなたにおすすめの小説
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
全部私が悪いのです
久留茶
恋愛
ある出来事が原因でオーディール男爵家の長女ジュディス(20歳)の婚約者を横取りする形となってしまったオーディール男爵家の次女オフィーリア(18歳)。
姉の元婚約者である王国騎士団所属の色男エドガー・アーバン伯爵子息(22歳)は姉への気持ちが断ち切れず、彼女と別れる原因となったオフィーリアを結婚後も恨み続け、妻となったオフィーリアに対して辛く当たる日々が続いていた。
世間からも姉の婚約者を奪った『欲深いオフィーリア』と悪名を轟かせるオフィーリアに果たして幸せは訪れるのだろうか……。
*全18話完結となっています。
*大分イライラする場面が多いと思われますので苦手な方はご注意下さい。
*後半まで読んで頂ければ救いはあります(多分)。
*この作品は他誌にも掲載中です。
〈完結〉前世と今世、合わせて2度目の白い結婚ですもの。場馴れしておりますわ。
ごろごろみかん。
ファンタジー
「これは白い結婚だ」
夫となったばかりの彼がそう言った瞬間、私は前世の記憶を取り戻した──。
元華族の令嬢、高階花恋は前世で白い結婚を言い渡され、失意のうちに死んでしまった。それを、思い出したのだ。前世の記憶を持つ今のカレンは、強かだ。
"カーター家の出戻り娘カレンは、貴族でありながら離婚歴がある。よっぽど性格に難がある、厄介な女に違いない"
「……なーんて言われているのは知っているけど、もういいわ!だって、私のこれからの人生には関係ないもの」
白魔術師カレンとして、お仕事頑張って、愛猫とハッピーライフを楽しみます!
☆恋愛→ファンタジーに変更しました
【完結】徒花の王妃
つくも茄子
ファンタジー
その日、王妃は王都を去った。
何故か勝手についてきた宰相と共に。今は亡き、王国の最後の王女。そして今また滅びゆく国の最後の王妃となった彼女の胸の内は誰にも分からない。亡命した先で名前と身分を変えたテレジア王女。テレサとなった彼女を知る数少ない宰相。国のために生きた王妃の物語が今始まる。
「婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?」の王妃の物語。単体で読めます。
「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚
ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。
※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
いずれ追放される悪役令嬢に生まれ変わったけど、原作補正を頼りに生きます。
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚約破棄からの追放される悪役令嬢に生まれ変わったと気づいて、シャーロットは王妃様の前で屁をこいた。なのに王子の婚約者になってしまう。どうやら強固な強制力が働いていて、どうあがいてもヒロインをいじめ、王子に婚約を破棄され追放……あれ、待てよ? だったら、私、その日まで不死身なのでは?
今、私は幸せなの。ほっといて
青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。
卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。
そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。
「今、私は幸せなの。ほっといて」
小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる