幽閉されていた王女は悪女の汚名を復讐で返上する

maruko

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8 迷惑千万

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 ティーラは学園には徒歩で通っている。
 13歳から通っている片道45分の通学路もあと半年で終了する、もうすぐ卒業だから。
 通い慣れたこの道を最近一緒に歩き始めた人がいる。
 ティーラが通う学園は、王都の端にある森を利用して“自然の中の学園”を謳い文句に建てられていた。
 ティーラが住む領地は王都の隣ではあるが、彼女の家は領都よりも少しばかり離れている。
 学園まで歩きとなると、かなりの距離だが田舎すぎて辻馬車が1日3本しか通らない。
 全ての馬車が、王都に通う騎士の就業時間に合わせて設定されている為、どの時間も早すぎるか遅すぎる。お金を払ってまでティーラは乗る気にはなれなかった。
 父のルコッタは通い始めの頃は心配して付いて来たりもしていたが、1年ほど経つと安心したのか送迎はしなくなった。今はティーラ一人でテクテクと通っている。

 領都からは馬車もあるのだが乗って10分で着くなら勿体無いのでティーラは乗らない。
 そんなティーラと領都から一緒に歩いているのは、クラスは違うが同い年のトレッシュだ。
 金髪の美少年、いや年齢的に美青年は顔だけでも学園の人気者だが、一昨年行われた剣術大会で準優勝したから、それからはファンクラブまで出来てしまうほどに人気が爆上がった。最近はそろそろ卒業間近の女子達が、騎士爵候補の彼を結婚相手として狙っているのだ。
 そんな彼が最近ティーラに付き纏っているのは、彼がティーラを“見初めた”という訳ではない。
 ティーラは父に似て平民にしては整った顔立ちだ、見ようによっては可愛らしくも見えて、今までも学園で知らない男の子や知ってる男の子に誘われたりもしていた、割とモテると自分でも思っていたが、トレッシュに関しては違う。
 彼の思惑はティーラにとっては大変迷惑な行為なのだ。本人はそう思ってないようだけど。

 彼の狙いは“メープル”だ。
 しかも彼が狙っているのではない、彼の兄がメープルに一目惚れしてしまったという事らしい。

 メープルはティーラの従姉妹で1年半前にルコッタベーカリーに父が連れて来た。
 最初は戸惑いながらお互い辿々しく話していたけれど、世話好きの母のおかげで、今では生まれた時から一緒にいる姉妹の様に仲が良い。
 メープルは外国から来たけれど、どこからきたのか父は教えてくれないし、本気で家と庭しかメープルを出さない。
 一度学園の子と一緒にピクニックに行く事になった時、誘ってみたけれどメープルからも断られたし、後で父のルコッタにこっ酷く叱られた。その様は最早病的だ。それほどにルコッタの叱責は怖かった。
 それ以来、メープルを外には誘っていないけれど、家の中では一緒に過ごしている。
 そんなメープルをどこで見かけたのかは、まぁおそらく我が家の庭だろうとティーラは推測している。からでも見かけたのではないか?それ以外考えられない。

 彼の話ではトレッシュの兄もかなりの美男子らしく、モテるらしいから自信があるみたいで、何度断っても執拗く付きまとう。

 今日もダブルデートをどうかという話を学園までの道すがらずっと誘われている。

 (もう!鬱陶しい!)

 この事でティーラは最近学園に通うのが憂鬱になっていた。トレッシュが教室まで送るから非ぬ疑いをかけられて、嫉妬に狂った貴族令嬢達からティーラは非難轟々の嵐だ。

 その日も教室に着くと侯爵家のご令嬢のリリアーヌ様が、本当に貴族令嬢なのか?と言いたくなるような足音も荒く取り巻き達とティーラの机までやってきた。

「ちょっとそこの平民!」

 トレッシュが纏わり付くまでは“ティーラさん”と呼んでくれていたのに、この変わり様には面食らう。

「トレッシュに付き纏わないでと、わたくし言いましたわよね!」

 (はい聞きました)

「どうして守ってくださらないの?」

 (それはトレッシュに言って下さいと私言いましたよね)

「どうして黙ってるのよ!」

 (言葉にしたら手を出すからですよ)

 一度ティーラは勇気をだして反論してみたが、取り巻きから頬を叩かれたのだ。平民が貴族から手を出されても文句が言えない風潮にある為誰も咎めない。
 それ以来痛いのは嫌だとティーラは黙りを決め込むことにしていた。
 だが今日は余程機嫌でも悪かったのか、侯爵令嬢に頬を張られてしまった。
 ティーラも油断していたのもあるが、その張り手が思いの外クリーンヒットしてしまい、ティーラは2つほど机を薙ぎ倒す勢いで倒れ込んだ。

 その音は大きかった。

 クラスは勿論のこと、両隣のクラスにまで聞こえたようで野次馬の凄い数がティーラのクラスに集まった。

「ティー!」

 隣のクラスで、ティーラの友人である領主様の娘がティーラを抱き起こしてくれた。
 彼女は伯爵令嬢だが、祖母が元王女という事もあって、周りから一目置かれている人だった。

「ティーラに代わって抗議させて頂くわ!」

 毅然とした態度で侯爵令嬢に物申す友人が、頼もしくもありそして嬉しくもありで、ティーラはホッとして熱を孕んだ頬を押さえながら意識を手放していた。

 気付いたときには学園の医務室のベッドに寝かされていた。
 傍らには父のルコッタが居てティーラは驚いた。
 目を開けたティーラの頬をルコッタはそっと撫でながら「すまない」と一言詫びられた。

 何故詫びられたのか不思議に思ったティーラだったが、その日の夜到頭父がメープルの秘密をティーラとカミラに打ち明けた。





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