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13 誓い~始まり
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メープル達の乗ってきた荷馬車とは別の荷馬車が、並行して停まっていた。
其方に投げ入れられたメープルは、うめき声すら上げずに放心していた。
荷馬車は勢いよく出発した。
呆然としたメープルを男達は麻袋に入れる。
「おとなしくしといてくれよ、あんたが暴れれば暴れるほど周りが迷惑するんだからな」
言い含めるように男の一人がメープルに言った。その言葉もメープルには聞こえているのかも分からない。
どれくらいの時間が経過したのか、麻袋の中のメープルに剣と剣が交わる音と男達の怒号の声が聞こえた。
暫く聞こえた音はそのうち止んでいたが、メープルにはそんな事などどうでも良かった。
「叔父様、叔母様、ティーラ⋯ごめんなさい」
そればかりを呟いているメープルの目には涙はなかった。心も乾いて涙すら乾ききってしまっていた。
不意に麻袋が開けられた。
「居たぞ!」
見知らぬ顔の男に抱き上げられたメープルは、もう抵抗などしなかった。
「大丈夫か?助けに来た。遅くなってすまない」
その声が聞こえた時、メープルは咄嗟に懇願した。
「叔父様達が切られたの、お願い助けて」
メープルの声は枯れ果てていた。か細く囁くようにしか出ない声で必死に男に言い募る。
男は何も言わず首を振り、メープルの背中をトントンと優しく撫でるように叩いた。
その途端メープルの目に乾いた大地の光景が蘇る。
重ねられたカミラとティーラ、優しく頬を撫でながら事切れたルコッタ。
「うわぁぁぁぁぁ」
メープルは男の胸に顔を埋め出なかった声を振り絞り慟哭した。
◇◇◇
「落ちないようにしがみついていてくれ」
男はメープルを抱き上げたまま馬に乗り優しく囁いた。
辺りは薄暗くこの場所がメープルには何処なのかわからなかった。
不意に気づいたのは男の耳にメープルと同じピアスが揺れていた。
驚いて男の顔をメープルは見上げる。
「もうすぐ村に差し掛かる、目を瞑っていて」
何を思ったか、男がメープルに再び囁いた、その意図は分からなかったけれど、言われた通りメープルは瞳を閉じた。
◇◇◇
「ミシェルフォン⋯だったよね」
いつの間にか馬は止まっていた。腕の中で震えていたメープルは、その呼び掛けの瞬間ミシェルフォンに戻り声の主を見上げた。
知らぬ間に村を抜けていたようだ。
「降りるよ」
見上げたミシェルフォンに男は優しく言って、彼女を軽々と抱いたまま馬からストンと降りた。
そのしがみつく男の胸板は鍛えられているようで、ミシェルフォンには服越しに握った感触が初めての感覚だった。
一緒に移動していた他の男達が用意した焚き火を中心に、辺りは薄ぼんやりではあるが明るくなっていた、それを頼りに腕の中からくるりと周りを見渡す。
「降ろしてください」
ミシェルフォンが小さな声でお願いすると、誰かが運んでいたのだろう、大きな葛籠の上に男はそっと降ろしてくれた。
今日自分に起きた出来事がミシェルフォンには信じられなかった、いやそうではない、信じたくなかった。
この2年間、人生で初めての穏やかで幸せな日々があっという間に音を立てて崩れた。
大好きな家族がミシェルフォンの目の前で息絶えた。
乾いていた涙が堰を切ったように溢れる⋯あとからあとからとめどなく
その様子を数名の男達が静かに見守っていた。
どのくらいの時間が経ったのか、涙を腕と手で擦りながら、ミシェルフォンはその身のたおやかさからは想像もできないほど力強く立ち上がった。
「絶対に許さない!」
「俺達も同じ気持ちだ」
今日初めて会ったその男がミシェルフォンの肩に手を置いて同意した。
男の方へ振り向きそのまま見上げると夜空には星が無数に瞬いていた、そして幾筋か流れた。
(ティーラ⋯今日は星が見えたよ)
その流れた星に誓うようにミシェルフォンはもう一度力強く言い放つ。
「絶対に許さない!」
その誓いに男達も頷いて皆で星空を見上げた。
まだこの時、ミシェルフォンには敵の姿は見えていなかった。
其方に投げ入れられたメープルは、うめき声すら上げずに放心していた。
荷馬車は勢いよく出発した。
呆然としたメープルを男達は麻袋に入れる。
「おとなしくしといてくれよ、あんたが暴れれば暴れるほど周りが迷惑するんだからな」
言い含めるように男の一人がメープルに言った。その言葉もメープルには聞こえているのかも分からない。
どれくらいの時間が経過したのか、麻袋の中のメープルに剣と剣が交わる音と男達の怒号の声が聞こえた。
暫く聞こえた音はそのうち止んでいたが、メープルにはそんな事などどうでも良かった。
「叔父様、叔母様、ティーラ⋯ごめんなさい」
そればかりを呟いているメープルの目には涙はなかった。心も乾いて涙すら乾ききってしまっていた。
不意に麻袋が開けられた。
「居たぞ!」
見知らぬ顔の男に抱き上げられたメープルは、もう抵抗などしなかった。
「大丈夫か?助けに来た。遅くなってすまない」
その声が聞こえた時、メープルは咄嗟に懇願した。
「叔父様達が切られたの、お願い助けて」
メープルの声は枯れ果てていた。か細く囁くようにしか出ない声で必死に男に言い募る。
男は何も言わず首を振り、メープルの背中をトントンと優しく撫でるように叩いた。
その途端メープルの目に乾いた大地の光景が蘇る。
重ねられたカミラとティーラ、優しく頬を撫でながら事切れたルコッタ。
「うわぁぁぁぁぁ」
メープルは男の胸に顔を埋め出なかった声を振り絞り慟哭した。
◇◇◇
「落ちないようにしがみついていてくれ」
男はメープルを抱き上げたまま馬に乗り優しく囁いた。
辺りは薄暗くこの場所がメープルには何処なのかわからなかった。
不意に気づいたのは男の耳にメープルと同じピアスが揺れていた。
驚いて男の顔をメープルは見上げる。
「もうすぐ村に差し掛かる、目を瞑っていて」
何を思ったか、男がメープルに再び囁いた、その意図は分からなかったけれど、言われた通りメープルは瞳を閉じた。
◇◇◇
「ミシェルフォン⋯だったよね」
いつの間にか馬は止まっていた。腕の中で震えていたメープルは、その呼び掛けの瞬間ミシェルフォンに戻り声の主を見上げた。
知らぬ間に村を抜けていたようだ。
「降りるよ」
見上げたミシェルフォンに男は優しく言って、彼女を軽々と抱いたまま馬からストンと降りた。
そのしがみつく男の胸板は鍛えられているようで、ミシェルフォンには服越しに握った感触が初めての感覚だった。
一緒に移動していた他の男達が用意した焚き火を中心に、辺りは薄ぼんやりではあるが明るくなっていた、それを頼りに腕の中からくるりと周りを見渡す。
「降ろしてください」
ミシェルフォンが小さな声でお願いすると、誰かが運んでいたのだろう、大きな葛籠の上に男はそっと降ろしてくれた。
今日自分に起きた出来事がミシェルフォンには信じられなかった、いやそうではない、信じたくなかった。
この2年間、人生で初めての穏やかで幸せな日々があっという間に音を立てて崩れた。
大好きな家族がミシェルフォンの目の前で息絶えた。
乾いていた涙が堰を切ったように溢れる⋯あとからあとからとめどなく
その様子を数名の男達が静かに見守っていた。
どのくらいの時間が経ったのか、涙を腕と手で擦りながら、ミシェルフォンはその身のたおやかさからは想像もできないほど力強く立ち上がった。
「絶対に許さない!」
「俺達も同じ気持ちだ」
今日初めて会ったその男がミシェルフォンの肩に手を置いて同意した。
男の方へ振り向きそのまま見上げると夜空には星が無数に瞬いていた、そして幾筋か流れた。
(ティーラ⋯今日は星が見えたよ)
その流れた星に誓うようにミシェルフォンはもう一度力強く言い放つ。
「絶対に許さない!」
その誓いに男達も頷いて皆で星空を見上げた。
まだこの時、ミシェルフォンには敵の姿は見えていなかった。
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