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17 魔法陣の損壊
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※暴力的な表現が作中に出てきます
苦手な方はご自衛ください
------------------
城から眺める王都が、徐々に瓦礫と化していくのをこの6年歯噛みしながら見つめていた。
毎日王国の重鎮達から突き上げられても、如何にも対応策は皆無だ。
だが全て私のせいか?
お前らは何か考える事をするつもりはないのか?
は?私が怖くて言えない?
では黙っているから言ってみろ!
⋯⋯ほら!
お前らも何も対策などないではないか!!
そもそも私は道具を開発しただけだ。
喜んで使ったのは父であり、そしてお前らだ。
私が気付いたときには装置は発動していたし、その対応自体お前らがしていたのだろう?
私は政治など知らん!
私は自分の希望を言っただけだ!
それを慮ったのはお前らだ!
ええええい!五月蝿い!
◇◇◇
王国会議で貴族達に突き上げられた、カイラッサ王国国王ハンザーライトは、イライラした足取りで自室へと戻り、怒りに任せて腰に装備していた帯剣を外し壁に投げつけた。
ソファにドカッと座って天井を見上げ落ち着こうとそのまま目を閉じた。
しかし落ち着けるはずもない。
彼の治めるカイラッサ王国が、繁栄から徐々に廃れて行ってもう6年も経過していた。そろそろ国自体が限界かもしれない。
国の砂漠化は元々この国では日常だったが、ハンザーライトが魔導具を開発したことにより、この20年国は潤っていた。
それに胡座をかいていた者たちが、今一丸となってハンザーライトを責める。
彼はそれに我慢ならなかった。
王子が逃げてから暫くはまだ異変は起きていなかった。
元々彼がいた時も潤っていたのは国の中央部だけだったが、それだけでもだいぶ違っていたのだ。
『雨が降る』
それだけでこんなにも違うのかと皆ハンザーライトに感謝と賞賛を贈り、彼を若くして君主に押し上げたのも貴族達だった。
それがここに来て掌を返された。
ハンザーライトは天才ではあったが、天才に有りがちな類稀な頭脳は持ち合わせても、人の気持ちや痛みを推し量る思いやりという物を全く理解しなかった。
今も分かっていない。
それに貴族等の言うことがハンザーライトには理解できないでいた。
彼等が言う事は今後の対策でも何でもなく、只々ハンザーライトの今までの言動や行動の責任を追及するものばかり。これでは会議をするだけ無駄だと言える。
ハンザーライトはソファに座ったまま背凭れ上部に肘を付き振り向いて、後ろに控えていた側近に訊ねた。
「行方はまだ分からないのか?」
「⋯⋯⋯⋯何方の、と聞いても?」
「何方もだ!⋯全くあいつらが逃げる算段をしていた事に誰も気づかなかったとは⋯それすらも私のせいにする、もう意味がわからない!」
「⋯⋯どうやら一緒に行動しているのではないかと推察されます」
「は?⋯⋯やはり共鳴するのだな、失敗した。ピアスを埋め込んでしまったからな、外せる様にしておけば良かった。そうすれば何方かが外していたかもしれないのに」
「それではこちらも見つける事は不可能ではないでしょうか?」
当たり前の事を側近に指摘されハンザーライトは、やり込められた事に快感を覚える。
彼は論破が得意ではない、いつも自分の思う事を言っているだけで、それに忖度するのは相手側の問題だと考えている。
国王には逆らえない等と勝手に思っているのは相手だと、勝手な持論を持っていた。
だからハンザーライトの意見を程よく反論する人物を好んで側に置いている。
(前の側近も良かったがなぁ)
以前側に置いていたのは宰相の息子だったらしい、興味がないから切り捨ててから知ったことだった。
偶々虫の居所が悪かったハンザーライトに、いつものように反論してきたから、苛ついて斬って放置しただけだ。空気を読まなかったアイツが悪い。
彼は反省というものを持ち合わせていないので今もそう思っていた。
「あの女も人質として成り立たないんじゃないか?もう国に返したらどうだ?いやそもそもこの国に私がいる必要はあるか?国を出ればいいんじゃないか?お前どう思う?」
まさかの国王が国を捨てる発言。
側近は問答無用でハンザーライトを斬った。
「うわぁぁぁぁあ」
ソファに付いていた肘毎斬られたハンザーライトは、その場で痛みに転げ回った。
その様子を横目でチラリと見てそれを持って彼はその部屋を出て行った。
国王の奇声は子供の頃からイタズラでよく出されていたから、暫くは誰も異変には気付かないはず。
ハンザーライトの状態に周囲が気付くのが遅いか早いかは神のみぞ知る。
そんな事を考えながら側近は地下へと向かった。
その手には斬ったハンザーライトの腕が握られている。
地下に設置されている魔導具の鍵はハンザーライトの腕に埋め込まれていた。生体反応が必要でも今すぐならまだ間に合うはずだ。
漸くチャンスが訪れたこの機会は逃せない。
側近は地下の部屋の魔導具に鍵を翳した、すると魔導具の蓋がゆっくりと開いた。
中にあった魔法陣の紙を取り出し丁寧に畳むと、懐に入れた。
それからトリストに教えられていた市井に抜ける道へと向かう。
「やっとやっとお役に立てました」
だが彼の喜びの呟きは誰にも届かなかった。
異変に気付き追いかけてきた王宮騎士に、抜け道に辿り着く前に背中から斬られたから。
斬られたと分かった時、彼は胸元の魔法陣の紙を自分の血で汚し使えなくする事は忘れなかった。
名もなき彼はハンザーライトに一泡吹かせた。
嘗ての親友にあの世で会えるだろうか?
そんな事を考えながら目を閉じた。
苦手な方はご自衛ください
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城から眺める王都が、徐々に瓦礫と化していくのをこの6年歯噛みしながら見つめていた。
毎日王国の重鎮達から突き上げられても、如何にも対応策は皆無だ。
だが全て私のせいか?
お前らは何か考える事をするつもりはないのか?
は?私が怖くて言えない?
では黙っているから言ってみろ!
⋯⋯ほら!
お前らも何も対策などないではないか!!
そもそも私は道具を開発しただけだ。
喜んで使ったのは父であり、そしてお前らだ。
私が気付いたときには装置は発動していたし、その対応自体お前らがしていたのだろう?
私は政治など知らん!
私は自分の希望を言っただけだ!
それを慮ったのはお前らだ!
ええええい!五月蝿い!
◇◇◇
王国会議で貴族達に突き上げられた、カイラッサ王国国王ハンザーライトは、イライラした足取りで自室へと戻り、怒りに任せて腰に装備していた帯剣を外し壁に投げつけた。
ソファにドカッと座って天井を見上げ落ち着こうとそのまま目を閉じた。
しかし落ち着けるはずもない。
彼の治めるカイラッサ王国が、繁栄から徐々に廃れて行ってもう6年も経過していた。そろそろ国自体が限界かもしれない。
国の砂漠化は元々この国では日常だったが、ハンザーライトが魔導具を開発したことにより、この20年国は潤っていた。
それに胡座をかいていた者たちが、今一丸となってハンザーライトを責める。
彼はそれに我慢ならなかった。
王子が逃げてから暫くはまだ異変は起きていなかった。
元々彼がいた時も潤っていたのは国の中央部だけだったが、それだけでもだいぶ違っていたのだ。
『雨が降る』
それだけでこんなにも違うのかと皆ハンザーライトに感謝と賞賛を贈り、彼を若くして君主に押し上げたのも貴族達だった。
それがここに来て掌を返された。
ハンザーライトは天才ではあったが、天才に有りがちな類稀な頭脳は持ち合わせても、人の気持ちや痛みを推し量る思いやりという物を全く理解しなかった。
今も分かっていない。
それに貴族等の言うことがハンザーライトには理解できないでいた。
彼等が言う事は今後の対策でも何でもなく、只々ハンザーライトの今までの言動や行動の責任を追及するものばかり。これでは会議をするだけ無駄だと言える。
ハンザーライトはソファに座ったまま背凭れ上部に肘を付き振り向いて、後ろに控えていた側近に訊ねた。
「行方はまだ分からないのか?」
「⋯⋯⋯⋯何方の、と聞いても?」
「何方もだ!⋯全くあいつらが逃げる算段をしていた事に誰も気づかなかったとは⋯それすらも私のせいにする、もう意味がわからない!」
「⋯⋯どうやら一緒に行動しているのではないかと推察されます」
「は?⋯⋯やはり共鳴するのだな、失敗した。ピアスを埋め込んでしまったからな、外せる様にしておけば良かった。そうすれば何方かが外していたかもしれないのに」
「それではこちらも見つける事は不可能ではないでしょうか?」
当たり前の事を側近に指摘されハンザーライトは、やり込められた事に快感を覚える。
彼は論破が得意ではない、いつも自分の思う事を言っているだけで、それに忖度するのは相手側の問題だと考えている。
国王には逆らえない等と勝手に思っているのは相手だと、勝手な持論を持っていた。
だからハンザーライトの意見を程よく反論する人物を好んで側に置いている。
(前の側近も良かったがなぁ)
以前側に置いていたのは宰相の息子だったらしい、興味がないから切り捨ててから知ったことだった。
偶々虫の居所が悪かったハンザーライトに、いつものように反論してきたから、苛ついて斬って放置しただけだ。空気を読まなかったアイツが悪い。
彼は反省というものを持ち合わせていないので今もそう思っていた。
「あの女も人質として成り立たないんじゃないか?もう国に返したらどうだ?いやそもそもこの国に私がいる必要はあるか?国を出ればいいんじゃないか?お前どう思う?」
まさかの国王が国を捨てる発言。
側近は問答無用でハンザーライトを斬った。
「うわぁぁぁぁあ」
ソファに付いていた肘毎斬られたハンザーライトは、その場で痛みに転げ回った。
その様子を横目でチラリと見てそれを持って彼はその部屋を出て行った。
国王の奇声は子供の頃からイタズラでよく出されていたから、暫くは誰も異変には気付かないはず。
ハンザーライトの状態に周囲が気付くのが遅いか早いかは神のみぞ知る。
そんな事を考えながら側近は地下へと向かった。
その手には斬ったハンザーライトの腕が握られている。
地下に設置されている魔導具の鍵はハンザーライトの腕に埋め込まれていた。生体反応が必要でも今すぐならまだ間に合うはずだ。
漸くチャンスが訪れたこの機会は逃せない。
側近は地下の部屋の魔導具に鍵を翳した、すると魔導具の蓋がゆっくりと開いた。
中にあった魔法陣の紙を取り出し丁寧に畳むと、懐に入れた。
それからトリストに教えられていた市井に抜ける道へと向かう。
「やっとやっとお役に立てました」
だが彼の喜びの呟きは誰にも届かなかった。
異変に気付き追いかけてきた王宮騎士に、抜け道に辿り着く前に背中から斬られたから。
斬られたと分かった時、彼は胸元の魔法陣の紙を自分の血で汚し使えなくする事は忘れなかった。
名もなき彼はハンザーライトに一泡吹かせた。
嘗ての親友にあの世で会えるだろうか?
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