幽閉されていた王女は悪女の汚名を復讐で返上する

maruko

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「何?」

 キングサイズのベッドの上で病に倒れたはずの王は、その大きな体で胡座をかいていた。歪んだ瞳で手にした書簡の文字を追っている時に、天井から密やかな声が聞こえた。

「ふん⋯おい水が入ってないぞ」

 報告を聞き終えて憮然とした王が、水を飲もうと手を伸ばすと空の水差しが目に入り苛ついた。
 ガラガラと朝の仕度用具と序の水差しをワゴンに乗せ運んできたのは、王妃の侍女だった。
 その侍女を目に留めた瞬間、王は溜息を吐いた。
 案の定、その後ろから彼の妻であるマリグリドがしゃなりしゃなりと着いてきていた。

「王妃が何用だ」

「まぁ陛下、夫が病なら妻は看病と相場は決まっておりますわ」

「ふん白々しい。あぁ序に聞いていけ、アリーチェルが帰国する」

 それを聞いた王妃は手に持っていた扇をバキッと折った。

「何ですって!貴方それを認めたの?あの女狐が帰ってきたら王位はどうされるのですか?」

 トラウスマ国王であるオーザンは、王妃マリグリドの金切り声に頭を掻きむしった。

「五月蝿い!出ていけ!王妃を外に出せ!」

 一度文句が始まると自分の気の済む返事が返ってくるまで、延々と聞かされるのがわかっていたオーザンは、始まる前にマリグリドを追い出した。

 オーザンには幼い頃から夢があった。
 トラウスマ王国を帝国にするという夢だ。
 だが、元来自分で動くのが嫌いな怠け者のオーザンは帝国になる事を望んでいた。

 自分では知恵など出すのも面倒臭い、だから側近に考えさせる。

 それが7年前までは上手く行っていた。
 思う様に行かなくなったのは、前王妃の残した双子の王女の片割れアリーチェルが原因だった。

 オーザンは気付いていないがアリーチェルはオーザンからその怠惰な性質を受け継いでいた。
 自分のしたいようにして後始末は他者がするのが当たり前、それがアリーチェルだった。

 アリーチェルの外見は母親に似てかなりの美貌の持ち主だった、それは赤子の時から変わらない。

 オーザンは前王妃のメルティアの顔を大層気に入っていた。魔力を持つ国民が少ないのは帝国になる為にはマイナス要素だと宰相から促され、渋々重い腰を上げ、魔力持ちが多数いるというセルディ王国へ遊学に赴いた時に見初めたのだ。

 その時大国であったトラウスマ王国の国力を持って同盟をチラつかせて婚姻まで強引に進めた。

 そして産まれた双子の片割れは、とんでもない逸材で、発展途上のカイラッサ王国から永遠に金を引っ張れる話が舞い込んだ。

 帝国になる為には国力を付けなければならない、それには金が必要だと考えたオーザンはその話に飛びついたのに、メルティアが反対した。小国から嫁いできたくせに生意気と直ぐに処刑したが、オーザンはその途端、王妃の美貌が惜しくなった。
 だからアリーチェルは生かしたのだ。

 日に日にメルティアに似てきたアリーチェルにオーザンは満足していた。

 金もある、国力もついてきた。理想の顔をした女もいる。段々と理想に近づいてきたと喜んだのも束の間、アリーチェルがやらかしたのだ。

 事もあろうにアリーチェルはカイラッサ国王と密書を交わし、自分と双子の姉であるミシェルフォンを彼に差し出す契約を国璽を使って結んでしまった。

 それを知ったのは、カイラッサ国王に唆されてミシェルフォンを手放した後だった。

 それからトラウスマ王国の衰退が徐々に始まっていったのだ。
 今オーザンはその責任から逃れる為に、病で伏せている事にしている。
 そこに元凶のアリーチェルが帰国すると連絡が来た。

 オーザンは断頭台の準備をするように命じるのだった。






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