20 / 28
19 カウントダウン 3
しおりを挟む
「何?」
キングサイズのベッドの上で病に倒れたはずの王は、その大きな体で胡座をかいていた。歪んだ瞳で手にした書簡の文字を追っている時に、天井から密やかな声が聞こえた。
「ふん⋯おい水が入ってないぞ」
報告を聞き終えて憮然とした王が、水を飲もうと手を伸ばすと空の水差しが目に入り苛ついた。
ガラガラと朝の仕度用具と序の水差しをワゴンに乗せ運んできたのは、王妃の侍女だった。
その侍女を目に留めた瞬間、王は溜息を吐いた。
案の定、その後ろから彼の妻であるマリグリドがしゃなりしゃなりと着いてきていた。
「王妃が何用だ」
「まぁ陛下、夫が病なら妻は看病と相場は決まっておりますわ」
「ふん白々しい。あぁ序に聞いていけ、アリーチェルが帰国する」
それを聞いた王妃は手に持っていた扇をバキッと折った。
「何ですって!貴方それを認めたの?あの女狐が帰ってきたら王位はどうされるのですか?」
トラウスマ国王であるオーザンは、王妃マリグリドの金切り声に頭を掻きむしった。
「五月蝿い!出ていけ!王妃を外に出せ!」
一度文句が始まると自分の気の済む返事が返ってくるまで、延々と聞かされるのがわかっていたオーザンは、始まる前にマリグリドを追い出した。
オーザンには幼い頃から夢があった。
トラウスマ王国を帝国にするという夢だ。
だが、元来自分で動くのが嫌いな怠け者のオーザンは勝手に帝国になる事を望んでいた。
自分では知恵など出すのも面倒臭い、だから側近に考えさせる。
それが7年前までは上手く行っていた。
思う様に行かなくなったのは、前王妃の残した双子の王女の片割れアリーチェルが原因だった。
オーザンは気付いていないがアリーチェルはオーザンからその怠惰な性質を受け継いでいた。
自分のしたいようにして後始末は他者がするのが当たり前、それがアリーチェルだった。
アリーチェルの外見は母親に似てかなりの美貌の持ち主だった、それは赤子の時から変わらない。
オーザンは前王妃のメルティアの顔を大層気に入っていた。魔力を持つ国民が少ないのは帝国になる為にはマイナス要素だと宰相から促され、渋々重い腰を上げ、魔力持ちが多数いるというセルディ王国へ遊学に赴いた時に見初めたのだ。
その時大国であったトラウスマ王国の国力を持って同盟をチラつかせて婚姻まで強引に進めた。
そして産まれた双子の片割れは、とんでもない逸材で、発展途上のカイラッサ王国から永遠に金を引っ張れる話が舞い込んだ。
帝国になる為には国力を付けなければならない、それには金が必要だと考えたオーザンはその話に飛びついたのに、メルティアが反対した。小国から嫁いできたくせに生意気と直ぐに処刑したが、オーザンはその途端、王妃の美貌が惜しくなった。
だからアリーチェルは生かしたのだ。
日に日にメルティアに似てきたアリーチェルにオーザンは満足していた。
金もある、国力もついてきた。理想の顔をした女もいる。段々と理想に近づいてきたと喜んだのも束の間、アリーチェルがやらかしたのだ。
事もあろうにアリーチェルはカイラッサ国王と密書を交わし、自分と双子の姉であるミシェルフォンを彼に差し出す契約を国璽を使って結んでしまった。
それを知ったのは、カイラッサ国王に唆されてミシェルフォンを手放した後だった。
それからトラウスマ王国の衰退が徐々に始まっていったのだ。
今オーザンはその責任から逃れる為に、病で伏せている事にしている。
そこに元凶のアリーチェルが帰国すると連絡が来た。
オーザンは断頭台の準備をするように命じるのだった。
キングサイズのベッドの上で病に倒れたはずの王は、その大きな体で胡座をかいていた。歪んだ瞳で手にした書簡の文字を追っている時に、天井から密やかな声が聞こえた。
「ふん⋯おい水が入ってないぞ」
報告を聞き終えて憮然とした王が、水を飲もうと手を伸ばすと空の水差しが目に入り苛ついた。
ガラガラと朝の仕度用具と序の水差しをワゴンに乗せ運んできたのは、王妃の侍女だった。
その侍女を目に留めた瞬間、王は溜息を吐いた。
案の定、その後ろから彼の妻であるマリグリドがしゃなりしゃなりと着いてきていた。
「王妃が何用だ」
「まぁ陛下、夫が病なら妻は看病と相場は決まっておりますわ」
「ふん白々しい。あぁ序に聞いていけ、アリーチェルが帰国する」
それを聞いた王妃は手に持っていた扇をバキッと折った。
「何ですって!貴方それを認めたの?あの女狐が帰ってきたら王位はどうされるのですか?」
トラウスマ国王であるオーザンは、王妃マリグリドの金切り声に頭を掻きむしった。
「五月蝿い!出ていけ!王妃を外に出せ!」
一度文句が始まると自分の気の済む返事が返ってくるまで、延々と聞かされるのがわかっていたオーザンは、始まる前にマリグリドを追い出した。
オーザンには幼い頃から夢があった。
トラウスマ王国を帝国にするという夢だ。
だが、元来自分で動くのが嫌いな怠け者のオーザンは勝手に帝国になる事を望んでいた。
自分では知恵など出すのも面倒臭い、だから側近に考えさせる。
それが7年前までは上手く行っていた。
思う様に行かなくなったのは、前王妃の残した双子の王女の片割れアリーチェルが原因だった。
オーザンは気付いていないがアリーチェルはオーザンからその怠惰な性質を受け継いでいた。
自分のしたいようにして後始末は他者がするのが当たり前、それがアリーチェルだった。
アリーチェルの外見は母親に似てかなりの美貌の持ち主だった、それは赤子の時から変わらない。
オーザンは前王妃のメルティアの顔を大層気に入っていた。魔力を持つ国民が少ないのは帝国になる為にはマイナス要素だと宰相から促され、渋々重い腰を上げ、魔力持ちが多数いるというセルディ王国へ遊学に赴いた時に見初めたのだ。
その時大国であったトラウスマ王国の国力を持って同盟をチラつかせて婚姻まで強引に進めた。
そして産まれた双子の片割れは、とんでもない逸材で、発展途上のカイラッサ王国から永遠に金を引っ張れる話が舞い込んだ。
帝国になる為には国力を付けなければならない、それには金が必要だと考えたオーザンはその話に飛びついたのに、メルティアが反対した。小国から嫁いできたくせに生意気と直ぐに処刑したが、オーザンはその途端、王妃の美貌が惜しくなった。
だからアリーチェルは生かしたのだ。
日に日にメルティアに似てきたアリーチェルにオーザンは満足していた。
金もある、国力もついてきた。理想の顔をした女もいる。段々と理想に近づいてきたと喜んだのも束の間、アリーチェルがやらかしたのだ。
事もあろうにアリーチェルはカイラッサ国王と密書を交わし、自分と双子の姉であるミシェルフォンを彼に差し出す契約を国璽を使って結んでしまった。
それを知ったのは、カイラッサ国王に唆されてミシェルフォンを手放した後だった。
それからトラウスマ王国の衰退が徐々に始まっていったのだ。
今オーザンはその責任から逃れる為に、病で伏せている事にしている。
そこに元凶のアリーチェルが帰国すると連絡が来た。
オーザンは断頭台の準備をするように命じるのだった。
31
あなたにおすすめの小説
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
全部私が悪いのです
久留茶
恋愛
ある出来事が原因でオーディール男爵家の長女ジュディス(20歳)の婚約者を横取りする形となってしまったオーディール男爵家の次女オフィーリア(18歳)。
姉の元婚約者である王国騎士団所属の色男エドガー・アーバン伯爵子息(22歳)は姉への気持ちが断ち切れず、彼女と別れる原因となったオフィーリアを結婚後も恨み続け、妻となったオフィーリアに対して辛く当たる日々が続いていた。
世間からも姉の婚約者を奪った『欲深いオフィーリア』と悪名を轟かせるオフィーリアに果たして幸せは訪れるのだろうか……。
*全18話完結となっています。
*大分イライラする場面が多いと思われますので苦手な方はご注意下さい。
*後半まで読んで頂ければ救いはあります(多分)。
*この作品は他誌にも掲載中です。
〈完結〉前世と今世、合わせて2度目の白い結婚ですもの。場馴れしておりますわ。
ごろごろみかん。
ファンタジー
「これは白い結婚だ」
夫となったばかりの彼がそう言った瞬間、私は前世の記憶を取り戻した──。
元華族の令嬢、高階花恋は前世で白い結婚を言い渡され、失意のうちに死んでしまった。それを、思い出したのだ。前世の記憶を持つ今のカレンは、強かだ。
"カーター家の出戻り娘カレンは、貴族でありながら離婚歴がある。よっぽど性格に難がある、厄介な女に違いない"
「……なーんて言われているのは知っているけど、もういいわ!だって、私のこれからの人生には関係ないもの」
白魔術師カレンとして、お仕事頑張って、愛猫とハッピーライフを楽しみます!
☆恋愛→ファンタジーに変更しました
【完結】徒花の王妃
つくも茄子
ファンタジー
その日、王妃は王都を去った。
何故か勝手についてきた宰相と共に。今は亡き、王国の最後の王女。そして今また滅びゆく国の最後の王妃となった彼女の胸の内は誰にも分からない。亡命した先で名前と身分を変えたテレジア王女。テレサとなった彼女を知る数少ない宰相。国のために生きた王妃の物語が今始まる。
「婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?」の王妃の物語。単体で読めます。
「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚
ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。
※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
いずれ追放される悪役令嬢に生まれ変わったけど、原作補正を頼りに生きます。
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚約破棄からの追放される悪役令嬢に生まれ変わったと気づいて、シャーロットは王妃様の前で屁をこいた。なのに王子の婚約者になってしまう。どうやら強固な強制力が働いていて、どうあがいてもヒロインをいじめ、王子に婚約を破棄され追放……あれ、待てよ? だったら、私、その日まで不死身なのでは?
今、私は幸せなの。ほっといて
青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。
卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。
そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。
「今、私は幸せなの。ほっといて」
小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる