幽閉されていた王女は悪女の汚名を復讐で返上する

maruko

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 母が処刑されていた。
 その事実を知ったのはアリーチェルが6歳の時だった。母に成り代わって王妃になった元側妃マリグリドの嫌がらせによるものだった。

 アリーチェルは父であるトラウスマ国王オーザンに殊の外可愛がられていた。それは娘を可愛がるというより、お気に入りの人形を着飾らせて楽しんでいる、そう周りは見ていた。

 元王妃メルティアに付き従ってこの国に来ていたホワントは、王妃は処刑され弟を人質に取られた上に祖国まで滅ぼされた。隙あらばと国王に復讐する事を考えていたが、それはホワントには難しかった。祖国を滅ぼされた事で仲間が一人も居ない上に、トラウスマ王国で国王によって幾ら辛酸を嘗める事になっても、恐れから誰も味方にはなってくれなかった。ホワントは復讐の算段がつかず悔しくて夜も眠れぬ程だった。アリーチェルがマリグリドからその話を聞かされたのは丁度その頃だった。

「ほわんとおかあさまはしょけいされたときいたわ、それはほんとう?」

 城の中ではメルティアの話はマリグリドによって禁句だった為、ホワントは慌ててアリーチェルを目に付いた空き部屋へと手を引いて中に入った。

「王女様、誰からそんな話を聞いたのですか?」

「おかあさまよ、あのかたわたしのほんとうのおかあさまではなかったのね」

「王女様!」

 ホワントはアリーチェルを抱きしめた。
 淡々と話すアリーチェルは事の次第がきっと分からないのだろうとホワントは思った。
 だから、どんなに理不尽な理由でメルティアが処刑されたのか、双子の姉が地下牢に繋がれているのかをアリーチェルに話して聞かせた。

 俯いたまま話を聞いていたアリーチェルは、聞き終えるとホワントに抱きついた。
 震える体をホワントは優しく抱きしめ「いつか王妃様の仇を討ちましょう」そう言って慰めたが、アリーチェルが震えているのは、笑いを我慢していたからだとは気づかなかった。
 これはホワントのせいではない。
 まさか6歳の子が、ホワントの話を聞いて私利私欲の為に、姉を利用しようと思いついていただなんて考えもしないだろう。

 アリーチェルはその時、自分にソックリな姉がいる事を知った。

 (ふふ、わたしにもかげむしゃいるんだ。いやなことはぜんぶかわりにしてもらおう)

 アリーチェルはオーザンの他力本願な性質をしっかりと受け継いでいた。
 ホワントの誤算はそれを見抜けなかった事だった。

 アリーチェルは自身が皇帝になる事を夢見た。
 それを為すためにカイラッサ国王も父であるトラウスマ国王も、手駒にするつもりで動いた。
 だが、アリーチェルの最大の弱点は頭と煽てに弱い事だった。

 そして彼女に付いていたのはトラウスマ王国の宰相の息子だったが、彼も机上の空論が得意な男だった。

 だから途中までは色々と上手く行った、だが彼らは爪が甘かった。

 カイラッサ国王と密約して何とか回りくどい方法で姉を追い落とすことに成功した。あの悪女の茶番劇はミシェルフォンがカイラッサ王国に囚われる事で完成する物だったのに、途中で邪魔が入っていた。

 意気揚々とカイラッサ国王に嫁いだアリーチェルは、そこで初めて自分の計画が失敗した事を知った。
 しかも大国のはずのカイラッサ王国は、徐々に衰退して行くばかりでアリーチェルはここでも計画が崩れた。

「ルヴァン!貴方の計画は穴だらけじゃない!しかもハンザーライトの奴、斬られて腕が欠損してから毎日うめき声が煩くて寝られないのよ!」

「アリーチェル様、そう言われても。私の計画は完璧でした、動かない奴等のせいですよ!それより帰国命令が出されましたよ。如何します?」

「帰ったら皇帝になれるの?」

 トラウスマ王国の宰相の息子であるルヴァンは、この期に及んでまだ夢見がちなアリーチェルに呆れた。だが、まだ利用価値がある。
 私が一国の国王になる為に。

「ではアリーチェル様、充分な兵士とともにご帰還するのは如何でしょう?カイラッサ王国には屈強な男たちが多くいますが、彼らは国を出たがっています。連れて帰ればお役に立てると思いますよ」

「あらっ、そうね、じゃあそうして。私はお昼寝するから後はよろしくね」

 アリーチェルは、カイラッサの城で自分勝手に過ごしていた。嫁いできても怠惰な生活は変わることはなかった。








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