幽閉されていた王女は悪女の汚名を復讐で返上する

maruko

文字の大きさ
27 / 28

26 -0-ゼロ

しおりを挟む
 シャンデリアはあの日と同じで煌々と輝いている。

 ホールの人数もあの日と同じ位
 皆に囲まれて床に崩れ落ちているのもあの日と同じ赤みがかった茶色の髪に緑の瞳を持つ女性、そして真っ赤なドレス。

 違っているのは
 ホールに居る人々が着用しているのがあの日は夜会服、今日は鎧兜。
 床に崩れ落ちている女性があの日はこのトラウスマ王国の第一王女のミシェルフォン、今日は第二王女のアリーチェルだという事。

 怯えた目で見上げる顔と、その顔を侮蔑な瞳で見据える顔。二人は同じ顔をしていた。
 それもそのはず二人は同じ腹から少しの時間差でうまれたのだから。

「アリーチェル、この日を私は待ち侘びた。やっとここまで来たわ」

「お、お姉様。お願い助けて」

「⋯⋯」

「お願い!お姉様!私達二人っきりの姉妹じゃない!」

「⋯⋯今更お姉様なんて言っても、貴方と姉妹だったことなどないわ。その絆はきっとお母様のお腹の中に二人とも忘れて来ちゃたのね」

 ミシェルフォンはアリーチェルに向かって最期の言葉をかけた。

「悪い王女もここまでね、貴方の罪は貴方が償いなさい。私はいらないわ。連れて行って!」

 ミシェルフォンの命令に鎧をまとった騎士が嫌がるアリーチェルを3人がかりで運んでいった。

 それを見届けてホールの壇上に置かれた玉座に座る人物の元へ、ゆっくりと歩みを進めた。

 近づくミシェルフォンに鎮座していた人物が立ち上がり両手を広げて彼女を待つ。
 その手に導かれる様にミシェルフォンは早足で向かう。
 大きく広いその胸にミシェルフォンが飛び込むと彼はギュッと抱きしめてその腕に力を込めた。

「最後の仕上げだな」

「えぇ、そうね」

 抱き合う二人に仲間達が近付いて、皆で輪になった。

「さぁ、ダッセン。ホワントの仇を討ちましょう」

 ミシェルフォンが声をかけたダッセンは、ピシッと騎士の礼を決めた。


 ◇◇◇


 トラウスマ王国王都の広場には、先日アリーチェルが用意した舞台がそのまま残されていた。
 今、そこにはの拘束用の柱が1本用意されていた。

 あの日から地下牢に繋がれていたアリーチェルが、兵士達に拘束されながらその場に連れ出されてきた。

 舞台の前には悪政を強いた悪女の最期を一目見ようと皆が集まっている。
 その集まる民衆の顔を見ながらミシェルフォンは、自分が初めて馬車に乗せられたと同じだと感じた。

 ダッセンの姉でミシェルフォンの長年の教育係を務めていたホワントの亡骸は、ミシェルフォンが幽閉されていた地下牢で発見された。
 厳しい拷問の末亡き者にされたのは、一目で分かるほど拷問の跡が酷かった。その床に広がる血溜まりは乾ききっていなかった。

 その亡骸を見つけたダッセンの嘆きは大きく、ミシェルフォン達は間に合わなかった悔しさに皆が拳を震わせた。

 体を捩りながら連れてこられたアリーチェルは、頭から麻袋を被せられていた。そのまま彼女は柱に縛り付けられる。
 そして罵声の中、麻袋は剥ぎとられた。

 アリーチェルの瞳には太陽の光が映って、一瞬眩しく目を閉じた。
 再び開けた時にその双眸に映ったのは憎悪に歪む人々の顔だった。

「私は何もしていないわ!私はアリーチェル・トラウスマよ!ミシェルフォンじゃないわ!」

 アリーチェルは叫ぶ!
 だが、そんなはもう人々に通用しなかった。

 ただ民衆の罵声を煽っただけだった。

 執行人に選ばれたのはダッセン。
 彼は一歩ずつゆっくりとそこに歩を進める。

 アリーチェルは柱に縛られたまま、膝を無理矢理尽かされ体を背中から押さえられる、自然と頭を垂れる格好になる。柱に括り付けられたままだから、縄が体に食い込んで内臓が口から飛び出そうな程だった。

 長く豊かで腰まであった赤味がかった茶色の髪は、肩よりも短くざんばらに切られていた。

 ゆっくりと歩いていたダッセンが到頭そこへ辿り着いた。

 姉ホワントと離れ離れになったのは、もう20年も前だった。年の離れた姉はダッセンを養う為に、メルティアの侍女として働いていた。

 在りし日のホワントの顔がダッセンの脳裏に浮かぶ。

「姉上、さぞ無念でしたでしょう、これで貴方の無念を少しでも晴らせてあげられるでしょうか?」

 その言葉に返答してくれる人はもういない。
 自然と溢れていた涙をそっとガンドレットを駆使して拭う。

 振り被った剣に一点集中。

 ダッセンは渾身の一撃を白い首筋に振り下ろした。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!

月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、 花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。 姻族全員大騒ぎとなった

全部私が悪いのです

久留茶
恋愛
ある出来事が原因でオーディール男爵家の長女ジュディス(20歳)の婚約者を横取りする形となってしまったオーディール男爵家の次女オフィーリア(18歳)。 姉の元婚約者である王国騎士団所属の色男エドガー・アーバン伯爵子息(22歳)は姉への気持ちが断ち切れず、彼女と別れる原因となったオフィーリアを結婚後も恨み続け、妻となったオフィーリアに対して辛く当たる日々が続いていた。 世間からも姉の婚約者を奪った『欲深いオフィーリア』と悪名を轟かせるオフィーリアに果たして幸せは訪れるのだろうか……。 *全18話完結となっています。 *大分イライラする場面が多いと思われますので苦手な方はご注意下さい。 *後半まで読んで頂ければ救いはあります(多分)。 *この作品は他誌にも掲載中です。

〈完結〉前世と今世、合わせて2度目の白い結婚ですもの。場馴れしておりますわ。

ごろごろみかん。
ファンタジー
「これは白い結婚だ」 夫となったばかりの彼がそう言った瞬間、私は前世の記憶を取り戻した──。 元華族の令嬢、高階花恋は前世で白い結婚を言い渡され、失意のうちに死んでしまった。それを、思い出したのだ。前世の記憶を持つ今のカレンは、強かだ。 "カーター家の出戻り娘カレンは、貴族でありながら離婚歴がある。よっぽど性格に難がある、厄介な女に違いない" 「……なーんて言われているのは知っているけど、もういいわ!だって、私のこれからの人生には関係ないもの」 白魔術師カレンとして、お仕事頑張って、愛猫とハッピーライフを楽しみます! ☆恋愛→ファンタジーに変更しました

【完結】徒花の王妃

つくも茄子
ファンタジー
その日、王妃は王都を去った。 何故か勝手についてきた宰相と共に。今は亡き、王国の最後の王女。そして今また滅びゆく国の最後の王妃となった彼女の胸の内は誰にも分からない。亡命した先で名前と身分を変えたテレジア王女。テレサとなった彼女を知る数少ない宰相。国のために生きた王妃の物語が今始まる。 「婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?」の王妃の物語。単体で読めます。

「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚

ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。 ※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

いずれ追放される悪役令嬢に生まれ変わったけど、原作補正を頼りに生きます。

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚約破棄からの追放される悪役令嬢に生まれ変わったと気づいて、シャーロットは王妃様の前で屁をこいた。なのに王子の婚約者になってしまう。どうやら強固な強制力が働いていて、どうあがいてもヒロインをいじめ、王子に婚約を破棄され追放……あれ、待てよ? だったら、私、その日まで不死身なのでは?

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...