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第一章 初恋の終わり
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それからオスカーの送迎はなくなり、学年が違う二人は何方かが態々会いに行かない限り、学園ですれ違う事すら無くなった。
実を言うとユリアーナは毎日オスカーを見かけている。自分から歩み寄ったほうがいいのかもしれないとは思っているが、如何してもその一歩が出なかった、彼を見かけるのは学園の食堂だったからだ。
彼の隣の席には必ずマリアンナが座っていた。
二人だけの時もあれば同じクラスなのか数人で一緒にいる時もあった。ユリアーナがオスカーと婚約して暫くしてから、友人として紹介されたマホニー伯爵家の嫡男アイザットと三人の時もあった。
どの時もマリアンナは隣で、どの時もオスカーはユリアーナが見ている事に全く気付かない。
これではオスカーは誰と婚約しているのか、まさか理解していないのではないかと少々勘繰りたくなって、月2回のお茶会の時にユリアーナは聞いてみた。因みにこのお茶会だけは毎回滞りなく続いている。
「オスカー様、少しお訊ねしたいことがあります」
「何?」
「オスカー様の婚約者は私でよろしかったのでしょうか?」
「何を言ってるの?当たり前じゃないか」
「そうですか、ありがとうございます」
この会話を3ヶ月に一度ユリアーナとオスカーはしていた。度々こんな事を聞くユリアーナを不思議にも変にも思わないオスカーが、マリアンナを構っているのは悪気や邪な気持ちはないのだろうと、ユリアーナは判断してもう何も言わず静観することにした。
それにあまりにも気弱なマリアンナを、ユリアーナは責められなくなったからでもあった。
昼休みの食堂でユリアーナとマリアンナが偶々目がバッチリ合った日の事だった。
夜自室で本を読んでいたらマリアンナがユリアーナの部屋を訪ねてきた。
「お義姉様、少しよろしいかしら?」
「あぁマリアンナどうしたの?」
「あの、あの、お義姉様ごめんなさい。私、」
そう言って泣くマリアンナは幼い頃と少しも変わらない。気弱なマリアンナの姿だった。
学園入学と同時に今は留学しているイザベラだが、幼い頃からイザベラの影で言いたいことも言えずに、彼女の精神的なサンドバックになっていたマリアンナ。
同じ様に両親が再婚した当初サンドバックになりかけていたユリアーナも彼女の気持ちはよくわかる。
もうこの国におそらく帰ることもないし、帰ってきても公爵家には一歩も入る事が出来ないイザベラ。
その状況と子供の頃のオスカーの言葉でユリアーナは立ち直ったが、マリアンナは未だ立ち直れていないのかもしれない。
『姉』という存在に怯えているようなので、ユリアーナからは極力雑談等の会話をする事はなかったが、嫌ってはいないのだと示す為に、挨拶だけは必ずしていた。
やっとユリアーナに慣れてきて、家庭教師からの課題等を相談しに来てくれるようになっていたのに、オスカーの珍介入で最近はマリアンナから避けられているようにも感じていたし、もう一つマリアンナの様子で懸念している事もあった。
そんな中、彼女は勇気を出してユリアーナを訪ねてくれたのだけど、ユリアーナの心中は複雑だった。
マリアンナ本人は気づいていないかもしれないから、人の心に踏み込む真似はしてはいけないとは思うが、おそらく間違いないとユリアーナは確信していた。
マリアンナは最初こそ戸惑っていたようだが、今はオスカーに惹かれているとユリアーナは気付いていた。
恋心かもう愛してしまってるのかは分からない。
だけど、食堂でのマリアンナの視線を見るうちにユリアーナは気付いた。
おそらく周りも気づき始めているかもしれない。
それとも二人につい目が行ってしまう、ユリアーナだけが気づいているのか、それはユリアーナにはわからない事だった。
今マリアンナが謝っているのは、どの部分なのだろうか?
「私、断れなくて。それにごめんなさいお義姉様、私お友達がいないから、クラスでもオスカー様だけが私に気を使ってくれるの」
マリアンナの言葉に嘘がないのは分かっている。
でも「謝罪はいいのよ、気にしてないわ」なんて嘘もつけなかった。
それでもユリアーナは、如何してもマリアンナを責めることが出来ずに、その日はモヤモヤして遅くまで寝付けなかった。
◇◇◇
『創作倶楽部』は昔は影の生徒会と呼ばれていたらしいのだが、それをユリアーナは入会してから知った。そしてメンバーをほぼ身内で固めている事も、同じく入ってから知らされたのだった。
メンバーは一年生が一人、二年生が三人、3年生が三人、全員で七人の少数倶楽部だ。
一年生で在籍しているヘンリーは、三年生の兄が在籍しているから入ったという。
そして二年生のエンバーともう一人の二年生ルットは従兄妹同士、そのエンバーの兄が三年生のメンバー。そしてエンバーの友人のユリアーナ。
ほぼ身内で固めた倶楽部の部長が三年生でこの国の第二王子のダイナスだ。凄く遠いがユリアーナの実母は王配の一人(ダイナスの父)と縁戚なので、ここも身内と言えば身内だ、畏れ多い事ではあるが。
元々この倶楽部は、前学園の時に発足している。表向きの発足理由は、常に視線に晒され続ける王族の憩いの場を設けたい、という事でこの倶楽部は誕生した。
初代部長は現在の王配(第一王子の父)だと言うから、意外にも歴史が長いとユリアーナは感じてしまった。
出来た当初はまだ王立学園だったのだが、あちこち留学する王太女(女王陛下)の不在の間、煩わしい公妾狙いの女性たちから王配候補の方々が逃れる為に発足したのが本当の理由だったそうだ。
だがこの倶楽部があったからこそ、ユリアーナは自分の中の卑屈で惨めな気持ちが薄れているのだ。
オスカーの学園での行動は、決して許容できるものではない。そこに理由があったしても、マリアンナを侍らせてしまっていることは、婚約者のいる令息としては良くないことなのだ。
それに気づけないオスカーも、それを諌められないユリアーナも、そして言われるがまま侍るマリアンナも貴族としては失格だった。
でもユリアーナはこれ以上惨めになりたくなかった。オスカーやマリアンナに苦言を呈するだけでも惨めな気持ちになるのだ。
だから学園で倶楽部という逃げ道は、諦めたユリアーナにとってもオアシスであった。
実を言うとユリアーナは毎日オスカーを見かけている。自分から歩み寄ったほうがいいのかもしれないとは思っているが、如何してもその一歩が出なかった、彼を見かけるのは学園の食堂だったからだ。
彼の隣の席には必ずマリアンナが座っていた。
二人だけの時もあれば同じクラスなのか数人で一緒にいる時もあった。ユリアーナがオスカーと婚約して暫くしてから、友人として紹介されたマホニー伯爵家の嫡男アイザットと三人の時もあった。
どの時もマリアンナは隣で、どの時もオスカーはユリアーナが見ている事に全く気付かない。
これではオスカーは誰と婚約しているのか、まさか理解していないのではないかと少々勘繰りたくなって、月2回のお茶会の時にユリアーナは聞いてみた。因みにこのお茶会だけは毎回滞りなく続いている。
「オスカー様、少しお訊ねしたいことがあります」
「何?」
「オスカー様の婚約者は私でよろしかったのでしょうか?」
「何を言ってるの?当たり前じゃないか」
「そうですか、ありがとうございます」
この会話を3ヶ月に一度ユリアーナとオスカーはしていた。度々こんな事を聞くユリアーナを不思議にも変にも思わないオスカーが、マリアンナを構っているのは悪気や邪な気持ちはないのだろうと、ユリアーナは判断してもう何も言わず静観することにした。
それにあまりにも気弱なマリアンナを、ユリアーナは責められなくなったからでもあった。
昼休みの食堂でユリアーナとマリアンナが偶々目がバッチリ合った日の事だった。
夜自室で本を読んでいたらマリアンナがユリアーナの部屋を訪ねてきた。
「お義姉様、少しよろしいかしら?」
「あぁマリアンナどうしたの?」
「あの、あの、お義姉様ごめんなさい。私、」
そう言って泣くマリアンナは幼い頃と少しも変わらない。気弱なマリアンナの姿だった。
学園入学と同時に今は留学しているイザベラだが、幼い頃からイザベラの影で言いたいことも言えずに、彼女の精神的なサンドバックになっていたマリアンナ。
同じ様に両親が再婚した当初サンドバックになりかけていたユリアーナも彼女の気持ちはよくわかる。
もうこの国におそらく帰ることもないし、帰ってきても公爵家には一歩も入る事が出来ないイザベラ。
その状況と子供の頃のオスカーの言葉でユリアーナは立ち直ったが、マリアンナは未だ立ち直れていないのかもしれない。
『姉』という存在に怯えているようなので、ユリアーナからは極力雑談等の会話をする事はなかったが、嫌ってはいないのだと示す為に、挨拶だけは必ずしていた。
やっとユリアーナに慣れてきて、家庭教師からの課題等を相談しに来てくれるようになっていたのに、オスカーの珍介入で最近はマリアンナから避けられているようにも感じていたし、もう一つマリアンナの様子で懸念している事もあった。
そんな中、彼女は勇気を出してユリアーナを訪ねてくれたのだけど、ユリアーナの心中は複雑だった。
マリアンナ本人は気づいていないかもしれないから、人の心に踏み込む真似はしてはいけないとは思うが、おそらく間違いないとユリアーナは確信していた。
マリアンナは最初こそ戸惑っていたようだが、今はオスカーに惹かれているとユリアーナは気付いていた。
恋心かもう愛してしまってるのかは分からない。
だけど、食堂でのマリアンナの視線を見るうちにユリアーナは気付いた。
おそらく周りも気づき始めているかもしれない。
それとも二人につい目が行ってしまう、ユリアーナだけが気づいているのか、それはユリアーナにはわからない事だった。
今マリアンナが謝っているのは、どの部分なのだろうか?
「私、断れなくて。それにごめんなさいお義姉様、私お友達がいないから、クラスでもオスカー様だけが私に気を使ってくれるの」
マリアンナの言葉に嘘がないのは分かっている。
でも「謝罪はいいのよ、気にしてないわ」なんて嘘もつけなかった。
それでもユリアーナは、如何してもマリアンナを責めることが出来ずに、その日はモヤモヤして遅くまで寝付けなかった。
◇◇◇
『創作倶楽部』は昔は影の生徒会と呼ばれていたらしいのだが、それをユリアーナは入会してから知った。そしてメンバーをほぼ身内で固めている事も、同じく入ってから知らされたのだった。
メンバーは一年生が一人、二年生が三人、3年生が三人、全員で七人の少数倶楽部だ。
一年生で在籍しているヘンリーは、三年生の兄が在籍しているから入ったという。
そして二年生のエンバーともう一人の二年生ルットは従兄妹同士、そのエンバーの兄が三年生のメンバー。そしてエンバーの友人のユリアーナ。
ほぼ身内で固めた倶楽部の部長が三年生でこの国の第二王子のダイナスだ。凄く遠いがユリアーナの実母は王配の一人(ダイナスの父)と縁戚なので、ここも身内と言えば身内だ、畏れ多い事ではあるが。
元々この倶楽部は、前学園の時に発足している。表向きの発足理由は、常に視線に晒され続ける王族の憩いの場を設けたい、という事でこの倶楽部は誕生した。
初代部長は現在の王配(第一王子の父)だと言うから、意外にも歴史が長いとユリアーナは感じてしまった。
出来た当初はまだ王立学園だったのだが、あちこち留学する王太女(女王陛下)の不在の間、煩わしい公妾狙いの女性たちから王配候補の方々が逃れる為に発足したのが本当の理由だったそうだ。
だがこの倶楽部があったからこそ、ユリアーナは自分の中の卑屈で惨めな気持ちが薄れているのだ。
オスカーの学園での行動は、決して許容できるものではない。そこに理由があったしても、マリアンナを侍らせてしまっていることは、婚約者のいる令息としては良くないことなのだ。
それに気づけないオスカーも、それを諌められないユリアーナも、そして言われるがまま侍るマリアンナも貴族としては失格だった。
でもユリアーナはこれ以上惨めになりたくなかった。オスカーやマリアンナに苦言を呈するだけでも惨めな気持ちになるのだ。
だから学園で倶楽部という逃げ道は、諦めたユリアーナにとってもオアシスであった。
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