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第一章 初恋の終わり
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オスカーの一連の所業に頭を痛めていたのは、ユリアーナだけではなかった。義母エリーヌもまたオスカーは悩みの種だった。
オスカーとユリアーナの婚約を決めたのはユリシーズだったから、エリーヌが口を挟むことはなかった。
彼女が苦言を堂々と呈す事が出来るのはマリアンナに対してだけだった。
「マリ、貴方分かっているわよね」
何度となく声を掛け続けた。マリアンナも「大丈夫わかってる」そういつも答えていた。
だが、気弱なマリアンナが、誘いを受けて断る事が出来ないことも母であるエリーヌはよく知っていた。
「イザベラの様に隣国に留学させるのだった」
何度後悔したかわからない。
オスカーが何故かマリアンナに興味を示し構うたびに、ユリアーナの表情が抜け落ちて行くのをエリーヌは感じていた。
本当はマリアンナをこの国の学園に入学させるつもりはなかった。この国の貴族に嫁がせるつもりもなかったし、当然社交界に出すつもりもない。
そういうことも相まってイザベラはその素行にも問題があった為、早々に彼女は隣国へと向かわせた。昔に比べたらだいぶ落ち着いたそうだが、前回少し様子を見に行った時も卑屈な態度は変わらなかった為、マリアンナを一緒にしてはおけないと彼女は此方の学園に入学させる事にしたのだ。
『イザベラ・ロッサルト』
彼女はエリーヌの最初の子で、6歳まで母と同じ様に祖父母に虐められて育ったからか、卑屈で他責思考が強い娘になってしまった。
それだけならまだ何とかなったかもしれないが(自信はない)ロッサルト公爵とエリーヌが結婚して、形ばかりではあるが公爵令嬢になった事が、イザベラの自己顕示欲まで強めてしまった。
卑屈だったイザベラは祖父母に否定されて育った為か、自分より弱い者は虐めても構わないという考えを、齢4歳にて発動させた。2つ違いのマリアンナを両親の知らぬ間に虐めていたのだ。
エリーヌが気付いたのは奇しくも子爵家を追い出されてからだった。それまではエリーヌ自体にも余裕がなかった為、子供達をちゃんと見ていなかった弊害が娘に出ていた。
だが、それでもエリーヌにとっては初めての子供で亡き夫の忘れ形見だ。
エリーヌは愛人に刺されてしまったが亡き夫を今も慕っている。
公爵とはある意味主従関係にあるとエリーヌは思っている。彼はエリーヌと同じ様に元妻を忘れていないし、手紙ではあるが連絡も取り合っている。
エリーヌの二人の娘の事がなければ、もう一度復縁することも可能だったのではないかと、今でもその大きな恩をエリーヌは感じていた。
しかもイザベラの留学の世話もユリシーズの元妻がしてくれている。
彼女は体が回復してから、その語学力を活かして、アトルス王国の外交官補佐を非常勤でしていた。
その彼女が後ろ盾になってくれたおかげで、他国でもイザベラは蔑ろにされることなく学園生活を送る事ができた。
今イザベラはその治りきらなかった性格を矯正する為に、王宮でユリシーズの元妻エリーヌの外交官補佐の補佐という、無理矢理取ってつけたような仕事をしている。
本来なら2年になるタイミングでアトルス王国学園の寮にマリアンナは行かせるつもりだった。
だが矯正中のイザベラに、サンドバックになっていたマリアンナが側に来てしまうのは、イザベラがまたもやマリアンナに甘えて元の木阿弥になるのを防ぐ為、マリアンナの留学に待ったがかかった。
その為、マリアンナはオスカーの庇護下から抜け出せないでいる、しかも最近はマリアンナもオスカーを慕っているのではないかとエリーヌは疑っていた。
そんな時、その会話を聞いてしまったのだ。
◇◇◇
「ユリアーナ、君には申し訳ないと思っている」
ユリアーナとオスカーの婚約当初から決められた月2回のお茶会は、ユリアーナが卒業したあと1年間アトルス王国の大学院に留学する為、その日が最後になる日だった。
彼女が留学を終え、オスカーが学園を卒業する1年後には二人の婚姻が決まっている。
その声は偶然エリーヌの耳に入った。
二人のお茶会を今日はサロンに用意した。
学生最後のお茶会だからと、エリーヌは茶葉も茶菓子も厳選して用意させた。
その事にユリアーナは感謝の言葉を言って、エリーヌに抱きついた。彼女はいつもエリーヌを母と慕ってくれる。昔少しだけ契約婚の事をユリアーナに話した事がある。それでもユリアーナのエリーヌに対する態度は変わることはなかった。
だからこそオスカーにはユリアーナをただ一人の女性として大事にして欲しいのだ。
エリーヌは切に願っていた。
それなのに⋯⋯。
その日、サロンからの声がエリーヌがいた執務室に届いた。窓を開けていたからだろうと閉めようと思ってエリーヌが窓に近づいた時に、そのオスカーの言葉が聞こえた。
オスカーが何を言い出すのか、気になったエリーヌは窓を開けたままにしてそこに佇んだ。
「私はマリアンナに思いを寄せている。だがそれは君と出会う前からなんだ。彼女はよく覚えていないようだけどマリアンナは私と幼い時に出会っていて。その時私は彼女に恋をしたんだと思う。彼女は私の初恋なんだ」
なんてことを言い出すのだ!
エリーヌは思わず怒鳴りたくなる衝動を抑えた。
胸に手を当てて祈るように、お願い早まらないで!そう思っていた。
だがエリーヌの願いは叶わなかった。
「婚約を解消してはくれないだろうか」
オスカーは最後のお茶会でユリアーナにそう告げていた。
オスカーとユリアーナの婚約を決めたのはユリシーズだったから、エリーヌが口を挟むことはなかった。
彼女が苦言を堂々と呈す事が出来るのはマリアンナに対してだけだった。
「マリ、貴方分かっているわよね」
何度となく声を掛け続けた。マリアンナも「大丈夫わかってる」そういつも答えていた。
だが、気弱なマリアンナが、誘いを受けて断る事が出来ないことも母であるエリーヌはよく知っていた。
「イザベラの様に隣国に留学させるのだった」
何度後悔したかわからない。
オスカーが何故かマリアンナに興味を示し構うたびに、ユリアーナの表情が抜け落ちて行くのをエリーヌは感じていた。
本当はマリアンナをこの国の学園に入学させるつもりはなかった。この国の貴族に嫁がせるつもりもなかったし、当然社交界に出すつもりもない。
そういうことも相まってイザベラはその素行にも問題があった為、早々に彼女は隣国へと向かわせた。昔に比べたらだいぶ落ち着いたそうだが、前回少し様子を見に行った時も卑屈な態度は変わらなかった為、マリアンナを一緒にしてはおけないと彼女は此方の学園に入学させる事にしたのだ。
『イザベラ・ロッサルト』
彼女はエリーヌの最初の子で、6歳まで母と同じ様に祖父母に虐められて育ったからか、卑屈で他責思考が強い娘になってしまった。
それだけならまだ何とかなったかもしれないが(自信はない)ロッサルト公爵とエリーヌが結婚して、形ばかりではあるが公爵令嬢になった事が、イザベラの自己顕示欲まで強めてしまった。
卑屈だったイザベラは祖父母に否定されて育った為か、自分より弱い者は虐めても構わないという考えを、齢4歳にて発動させた。2つ違いのマリアンナを両親の知らぬ間に虐めていたのだ。
エリーヌが気付いたのは奇しくも子爵家を追い出されてからだった。それまではエリーヌ自体にも余裕がなかった為、子供達をちゃんと見ていなかった弊害が娘に出ていた。
だが、それでもエリーヌにとっては初めての子供で亡き夫の忘れ形見だ。
エリーヌは愛人に刺されてしまったが亡き夫を今も慕っている。
公爵とはある意味主従関係にあるとエリーヌは思っている。彼はエリーヌと同じ様に元妻を忘れていないし、手紙ではあるが連絡も取り合っている。
エリーヌの二人の娘の事がなければ、もう一度復縁することも可能だったのではないかと、今でもその大きな恩をエリーヌは感じていた。
しかもイザベラの留学の世話もユリシーズの元妻がしてくれている。
彼女は体が回復してから、その語学力を活かして、アトルス王国の外交官補佐を非常勤でしていた。
その彼女が後ろ盾になってくれたおかげで、他国でもイザベラは蔑ろにされることなく学園生活を送る事ができた。
今イザベラはその治りきらなかった性格を矯正する為に、王宮でユリシーズの元妻エリーヌの外交官補佐の補佐という、無理矢理取ってつけたような仕事をしている。
本来なら2年になるタイミングでアトルス王国学園の寮にマリアンナは行かせるつもりだった。
だが矯正中のイザベラに、サンドバックになっていたマリアンナが側に来てしまうのは、イザベラがまたもやマリアンナに甘えて元の木阿弥になるのを防ぐ為、マリアンナの留学に待ったがかかった。
その為、マリアンナはオスカーの庇護下から抜け出せないでいる、しかも最近はマリアンナもオスカーを慕っているのではないかとエリーヌは疑っていた。
そんな時、その会話を聞いてしまったのだ。
◇◇◇
「ユリアーナ、君には申し訳ないと思っている」
ユリアーナとオスカーの婚約当初から決められた月2回のお茶会は、ユリアーナが卒業したあと1年間アトルス王国の大学院に留学する為、その日が最後になる日だった。
彼女が留学を終え、オスカーが学園を卒業する1年後には二人の婚姻が決まっている。
その声は偶然エリーヌの耳に入った。
二人のお茶会を今日はサロンに用意した。
学生最後のお茶会だからと、エリーヌは茶葉も茶菓子も厳選して用意させた。
その事にユリアーナは感謝の言葉を言って、エリーヌに抱きついた。彼女はいつもエリーヌを母と慕ってくれる。昔少しだけ契約婚の事をユリアーナに話した事がある。それでもユリアーナのエリーヌに対する態度は変わることはなかった。
だからこそオスカーにはユリアーナをただ一人の女性として大事にして欲しいのだ。
エリーヌは切に願っていた。
それなのに⋯⋯。
その日、サロンからの声がエリーヌがいた執務室に届いた。窓を開けていたからだろうと閉めようと思ってエリーヌが窓に近づいた時に、そのオスカーの言葉が聞こえた。
オスカーが何を言い出すのか、気になったエリーヌは窓を開けたままにしてそこに佇んだ。
「私はマリアンナに思いを寄せている。だがそれは君と出会う前からなんだ。彼女はよく覚えていないようだけどマリアンナは私と幼い時に出会っていて。その時私は彼女に恋をしたんだと思う。彼女は私の初恋なんだ」
なんてことを言い出すのだ!
エリーヌは思わず怒鳴りたくなる衝動を抑えた。
胸に手を当てて祈るように、お願い早まらないで!そう思っていた。
だがエリーヌの願いは叶わなかった。
「婚約を解消してはくれないだろうか」
オスカーは最後のお茶会でユリアーナにそう告げていた。
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