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第一章 初恋の終わり
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義母エリーヌに説得されて、ユリアーナはまだ婚約解消のことは父に言い出せずに卒業の日を迎えた。
それにこの国では、学園卒業後の卒業パーティーは数年前を最後に開催される事が無くなった。
だから、今日の晩餐はユリアーナの卒業祝いで、ルルベルド伯爵夫妻も招待をしていた。
ユリアーナは迷っていたから結局今もまだ決断を下せずにいた。
卒業式の朝は両親とマリアンナ、使用人達も一緒にエントランスに集まってユリアーナを見送ってくれた。
マリアンナは今日の卒業式は欠席するらしい。
「お父様、お義母様、マリアンナ、みんな行ってきます!」
「ユリアーナ行っておいで、あとで会場に行くからね」
父が抱きしめながらユリアーナに言った。
「「「お嬢様卒業おめでとうございます!行ってらっしゃいませ!!!!」」」
使用人達も声を合わせてお祝いを言ってくれる。ユリアーナは自分は何て恵まれているのだろうと感じていた。
馬車に乗り卒業式へと学園に向かった。
卒業式は滞りなく終わりエンバーと抱き合いながら別れを惜しんだ。彼女は半年後に公爵家に嫁ぐ事が決まっている。今後は婚姻まで公爵家で過ごす事になっていた。
「リーア、アトルスでも頑張ってね。結婚式には帰って来てくれるでしょう?」
「当たり前じゃない!絶対に帰ってくるわ」
「ダイナス様によろしくね」
「えぇわかったわ。会えたら伝えるわね」
創作倶楽部の先輩でライレーン王国第二王子のダイナスは1年前にアトルスに留学している。ユリアーナの行く院にいるので会う機会もあるかもしれない。
一人でも知っている人がいるのは心強いとユリアーナは思っていた。
エンバーとの別れを惜しんだあと、父が学園長に挨拶をしている間に、さきに馬車停に来ていたユリアーナだったが、そこにはオスカーがいた。
彼は苦々しい顔をしてどうやらユリアーナを待っていたようだ。
「君は酷い人だね」
「どういう意味かしら?」
オスカーの言葉の意味がわからずユリアーナが訊ねるとオスカーは益々苛つくように言った。
「マリアンナを晩餐から外したんだろう!君の卒業祝いなら一緒に祝の席に呼ぶべきだ!」
最後の最後までオスカーにはマリアンナしか見えていないようだ。ユリアーナは乾いた笑いしか出なかった。
卒業おめでとうの言葉くらい普段の彼ならきっと言ってくれただろうとユリアーナは思う。
マリアンナの事になるとこうもオスカーはだめな男になるのかと呆れてしまった。そしてこの時オスカーへの恋心がユリアーナの中で霧散した。
(終わったなぁ)
最後まで義妹の事で責められる、何て惨めな婚約者なのだろう。
心の中で自嘲してユリアーナはオスカーに告げた。
「そんな事は父のロッサルト公爵に言ってくださいな。私はまだ家長ではないわ」
「くっ」
オスカーはユリアーナの言葉に踵を返してその場から立ち去った。
◇◇◇
「卒業おめでとうユリアーナ」
ロッサルト公爵の祝の言葉でその日の晩餐は始まった。テーブルには両家族3名ずつが並んで座っていた。ユリアーナの両隣に父と義母、ユリアーナの対面には伯爵夫妻を両隣にオスカーが座っている。
伯爵夫妻からはお祝いの言葉や留学先からも手紙が欲しいという懇願、結婚式のドレスを注文してからアトルスに行った方がいいのではなどと、終始結婚式に向けての話が多かった。オスカーは自分の気持ちを両親には伝えていないのだと、ユリアーナは知った。
伯爵夫妻の話に濁しながら曖昧な返事をしたり相槌を打つに留めたが、ユリアーナはかなり精神的に疲弊していた。
雰囲気だけは和やかに進んでゆく晩餐だったが、ユリアーナはあまり食が進まなくて、無理矢理詰め込んでいた。
するとデザートに差し掛かり皆に給仕がお茶を注いで回っている時、
「ユリアーナ、3年間よく頑張ったな。父に何か願い事はないか?何でも叶えてあげるぞ!」
戯けた調子で父がユリアーナに聞いてきた。
「何でも?」
「あぁ」
「本当に何でもよろしいのですか?」
「いいぞ!言ってごらん」
「それでは、婚約を解消しようと思います」
──カチャン──
義母が動揺したのかスプーンをソーサーに落としてしまった。
「も、もうしわけありません」
(お義母様、ごめんなさい)
そんな義母を目の端に捉えながら心の中で義母に謝罪をしてユリアーナはオスカーを見つめた。
彼は真っ直ぐこちらを見ているが、その瞳には何の熱も感じられなかった。
先日ユリアーナは気づいたのだ。
オスカーがユリアーナとマリアンナを間違えているという事は、あの日二人で話した意地悪な姉はオスカーの中ではイザベラではなく、ユリアーナになっているという事に。それで数々の彼の行為の意味が理解できた。
この国で社交をしないと位置づけられたイザベラとマリアンナはお茶会にすら出席はしていない。その上イザベラはこの国の学園には入学していないから、オスカーの中にはイザベラという人物すらいないのだ。
おそらく伯爵夫妻はそれがどんな意味を持つのか、考えずに態と話さなかったのだと思った。
きっと伯爵夫妻は二人の養子は18 歳までしか、公爵家とは関わりがない事を父から聞いて知っていたのかもしれない。それならば言う必要がないと判断したのだろう。
オスカーがマリアンナと関わっている事にも気づいていなかったのではないだろうか。
なんともお粗末な結果で父にも伯爵夫妻にも悪気がないからユリアーナは誰も責められないと思った。
「どうしてそう思ったのか、聞かせてくれないか」
ユリシーズは静かに娘に訊ねた。
「ごめんなさいお父様、ルルベルド伯爵夫妻にもご迷惑おかけします」
ユリアーナは丁寧に深々と頭を下げた。
そんなユリアーナに三人は困惑していた。
するとオスカーが口を開いた。
それにこの国では、学園卒業後の卒業パーティーは数年前を最後に開催される事が無くなった。
だから、今日の晩餐はユリアーナの卒業祝いで、ルルベルド伯爵夫妻も招待をしていた。
ユリアーナは迷っていたから結局今もまだ決断を下せずにいた。
卒業式の朝は両親とマリアンナ、使用人達も一緒にエントランスに集まってユリアーナを見送ってくれた。
マリアンナは今日の卒業式は欠席するらしい。
「お父様、お義母様、マリアンナ、みんな行ってきます!」
「ユリアーナ行っておいで、あとで会場に行くからね」
父が抱きしめながらユリアーナに言った。
「「「お嬢様卒業おめでとうございます!行ってらっしゃいませ!!!!」」」
使用人達も声を合わせてお祝いを言ってくれる。ユリアーナは自分は何て恵まれているのだろうと感じていた。
馬車に乗り卒業式へと学園に向かった。
卒業式は滞りなく終わりエンバーと抱き合いながら別れを惜しんだ。彼女は半年後に公爵家に嫁ぐ事が決まっている。今後は婚姻まで公爵家で過ごす事になっていた。
「リーア、アトルスでも頑張ってね。結婚式には帰って来てくれるでしょう?」
「当たり前じゃない!絶対に帰ってくるわ」
「ダイナス様によろしくね」
「えぇわかったわ。会えたら伝えるわね」
創作倶楽部の先輩でライレーン王国第二王子のダイナスは1年前にアトルスに留学している。ユリアーナの行く院にいるので会う機会もあるかもしれない。
一人でも知っている人がいるのは心強いとユリアーナは思っていた。
エンバーとの別れを惜しんだあと、父が学園長に挨拶をしている間に、さきに馬車停に来ていたユリアーナだったが、そこにはオスカーがいた。
彼は苦々しい顔をしてどうやらユリアーナを待っていたようだ。
「君は酷い人だね」
「どういう意味かしら?」
オスカーの言葉の意味がわからずユリアーナが訊ねるとオスカーは益々苛つくように言った。
「マリアンナを晩餐から外したんだろう!君の卒業祝いなら一緒に祝の席に呼ぶべきだ!」
最後の最後までオスカーにはマリアンナしか見えていないようだ。ユリアーナは乾いた笑いしか出なかった。
卒業おめでとうの言葉くらい普段の彼ならきっと言ってくれただろうとユリアーナは思う。
マリアンナの事になるとこうもオスカーはだめな男になるのかと呆れてしまった。そしてこの時オスカーへの恋心がユリアーナの中で霧散した。
(終わったなぁ)
最後まで義妹の事で責められる、何て惨めな婚約者なのだろう。
心の中で自嘲してユリアーナはオスカーに告げた。
「そんな事は父のロッサルト公爵に言ってくださいな。私はまだ家長ではないわ」
「くっ」
オスカーはユリアーナの言葉に踵を返してその場から立ち去った。
◇◇◇
「卒業おめでとうユリアーナ」
ロッサルト公爵の祝の言葉でその日の晩餐は始まった。テーブルには両家族3名ずつが並んで座っていた。ユリアーナの両隣に父と義母、ユリアーナの対面には伯爵夫妻を両隣にオスカーが座っている。
伯爵夫妻からはお祝いの言葉や留学先からも手紙が欲しいという懇願、結婚式のドレスを注文してからアトルスに行った方がいいのではなどと、終始結婚式に向けての話が多かった。オスカーは自分の気持ちを両親には伝えていないのだと、ユリアーナは知った。
伯爵夫妻の話に濁しながら曖昧な返事をしたり相槌を打つに留めたが、ユリアーナはかなり精神的に疲弊していた。
雰囲気だけは和やかに進んでゆく晩餐だったが、ユリアーナはあまり食が進まなくて、無理矢理詰め込んでいた。
するとデザートに差し掛かり皆に給仕がお茶を注いで回っている時、
「ユリアーナ、3年間よく頑張ったな。父に何か願い事はないか?何でも叶えてあげるぞ!」
戯けた調子で父がユリアーナに聞いてきた。
「何でも?」
「あぁ」
「本当に何でもよろしいのですか?」
「いいぞ!言ってごらん」
「それでは、婚約を解消しようと思います」
──カチャン──
義母が動揺したのかスプーンをソーサーに落としてしまった。
「も、もうしわけありません」
(お義母様、ごめんなさい)
そんな義母を目の端に捉えながら心の中で義母に謝罪をしてユリアーナはオスカーを見つめた。
彼は真っ直ぐこちらを見ているが、その瞳には何の熱も感じられなかった。
先日ユリアーナは気づいたのだ。
オスカーがユリアーナとマリアンナを間違えているという事は、あの日二人で話した意地悪な姉はオスカーの中ではイザベラではなく、ユリアーナになっているという事に。それで数々の彼の行為の意味が理解できた。
この国で社交をしないと位置づけられたイザベラとマリアンナはお茶会にすら出席はしていない。その上イザベラはこの国の学園には入学していないから、オスカーの中にはイザベラという人物すらいないのだ。
おそらく伯爵夫妻はそれがどんな意味を持つのか、考えずに態と話さなかったのだと思った。
きっと伯爵夫妻は二人の養子は18 歳までしか、公爵家とは関わりがない事を父から聞いて知っていたのかもしれない。それならば言う必要がないと判断したのだろう。
オスカーがマリアンナと関わっている事にも気づいていなかったのではないだろうか。
なんともお粗末な結果で父にも伯爵夫妻にも悪気がないからユリアーナは誰も責められないと思った。
「どうしてそう思ったのか、聞かせてくれないか」
ユリシーズは静かに娘に訊ねた。
「ごめんなさいお父様、ルルベルド伯爵夫妻にもご迷惑おかけします」
ユリアーナは丁寧に深々と頭を下げた。
そんなユリアーナに三人は困惑していた。
するとオスカーが口を開いた。
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