【本編完結】婚約を解消いたしましょう

maruko

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第一章 初恋の終わり

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「はぁーー」

 大きく嘆息をするルルベルド伯爵は帰宅して直ぐに三人で執務室へと向かった。
 執事に嫡男を呼ぶように伝え、彼を待ってる間に伯爵は立ったままのオスカーに座るように言った。

「父上、お呼びと伺いました」

「あぁ座ってくれ、オスカーいつまでそうしてるつもりだ。話が長くなるのだから座れ」

 嫡男が入室しても気づかないほどオスカーは呆けたままでいた。伯爵は次男の様子を気に掛ける様な配慮はしない、素早く今日の問題に対処しなければならないからだ。オスカーが座ってから伯爵はロッサルト公爵との縁組がなくなったと嫡男に伝える。

「オスカーまさかお前、初恋の君の事を」

「なんだお前知っていたのか?」

「いえ、えぇまぁオスカーが浮かれていたので聞きました。でも若気の至だと」

「あぁそう思って甘く見ていたが、オスカーにとってはそうじゃなかったんだろう。我々もちゃんと伝えるべきだった事を伝えていなかったから、私の責任でもある、軽視するべきじゃなかった」

「伝える事?」

 帰ってからずっと下を向いていたオスカーが漸く頭を上げて父を見つめた。

「お前が願ったマリアンナ嬢は、この国を出る事は公爵が再婚した時から決まっていたんだ、それは夫人の願いだったし令嬢も知ってる事だ、だからお前の願いなど始めから叶うことはなかったのだ」

 そう言ってからオスカーは昔のストマント子爵家の醜聞と業突伯爵の話を父から聞かされた。

「そんな、じゃあ私がしていた事は全て⋯」

 ここに来てオスカーは、自分の言動がお門違いもいいところで、しかもその事でユリアーナを傷つけていた事にも気づいた。

「オスカー、取り敢えず婚約は破談だ、ユリアーナ様は解消と言ってくれたが破棄も頭に入れて置かないといけない。そうなればお前は貴族としてはもうやっていけないかもしれないが、あと一年はしっかりと学園で学ぶ事だな、わかったな」

「はい」

 オスカーは父に返事はしたが、その胸のうちは複雑だった。オスカーには後悔しかなかった。自分の勘違いが招いた結果が、きっと二人の令嬢の今後に、必ず影響してしまうのだと、ここに来て漸く気づけた。

 彼の後悔⋯だがそれも全てが時既に遅し。

 オスカーはこれ以降ずっと後悔を抱えて生きていく事になる。

 ◇◇◇

 数日後、ロッサルト公爵は執務室でユリアーナにサインをさせていた。婚約解消の書類へのサインだ。3年前ここで婚約のサインをさせた時は、ハニカミながらの笑顔を向けた愛娘は、今日は淡々としていた。
 だが書き終わって顔をあげたユリアーナは父にあの時とは違う笑顔を向けた。

「お父様、婚約を続けられなくてごめんなさい。でもこんなに早く決着してくれて感謝します。ありがとうございます」

 その言葉にユリシーズは娘をしっかりと抱きしめた。最愛の妻が産んでくれた最愛の娘を、婚約解消等とくだらない醜聞に巻き込んだ自分を許せなかった。だがそんなユリシーズにユリアーナは微笑みながら告げる。

「お父様、マリアンナには今まで通りでお願いします。決してあの娘のせいではないわ。だから一緒にお母様の所にも行こうと思うの。あの娘きっと今頃修道院に行こうとしていると思うのよ、お義母様も一緒に。だからちゃんと止めて、今すぐに!」

 ユリアーナの言葉にユリシーズは執務室を急いで出た。あの日からエリーヌはユリシーズの顔を見る度に謝罪を繰り返していた。そんなエリーヌをユリシーズは苦々しく思って避けるようにしていた。だがユリアーナの願いは叶えなければならない。

 エリーヌの部屋に行くとそこにはマリアンナもいて、二人で荷造りをしている所だった。

「どこへ行こうとしているんだ」

「旦那様!」

 ユリシーズが入ってきた事に声をかけられるまで気づかなかったエリーヌは慌てた。
 するとやはり二人揃って修道院に行こうとしていたようだった。

「ユリアーナはマリアンナも一緒にアトルスに行くと言ってるのに、勝手に修道院に行ったらユリアーナが悲しむ。それは駄目だ私の命令だ」

 ユリシーズの言葉にマリアンナは泣いて詫た。

「ごめんなさい、お義父様!私、私、オスカー様を!」

「もういい、もう終わったことだ。マリアンナのせいではないとユリアーナは言っていたよ。だからマリアンナ、君ももう⋯忘れるんだ。それとエリーヌ、君が辛いならユリアーナ達と一緒にアトルスに行ってはどうだろうか?」

「えっ?」

「君は本心は子爵令息のお墓があるこの国は出たくないだろう。だがおそらくまたもやあの伯爵が変な噂を流すかもしれない。それならば国を一度出るのも気分が変わっていいのではないだろうか?」

「よろしいのですか?」

「あぁ君の献身のおかげでユリアーナは優しい娘に育ってくれた。それは本当に感謝しているんだ。ユリアーナももう成人したし、マリアンナも寮に入る。だからもう君も自由になってもいいんじゃないかな」

「あっありがとうございます」

「お父様、みんな居なくなって寂しくなるんじゃない?」

 ユリシーズが声のした方に振り向くと、いつの間にか部屋の入り口にはユリアーナもやって来ていた。そんな愛娘の顔を見て、彼女は全てを水に流して二人を気遣い、態と戯けた様に言っているのだとユリシーズは感じた。だから⋯

「あぁそれを口実に私もアトルスに遊びに行こう」

 ユリシーズは笑いながらユリアーナにウインクした。

 それから1週間後、ユリアーナ達三人は隣国アトルス王国へと旅立った。

 三人の乗る汽車をユリシーズは一人ホームで見送った。

 その姿を見えなくなるまで窓を開けて身体を乗り出しユリアーナは見つめていた。

 窓を閉め背筋を伸ばして座席に座ると対面からエリーヌとマリアンナがユリアーナを気遣う様に見つめていた。

「今日から三人とも新たな出発ね」

 そう言ったユリアーナはもう泣いてなどいなかった。

 その琥珀色アンバーの瞳にはアトルス王国へ向ける希望が映っていた。




 第一章end


 ✎ ------------------------

 これにて第一章『初恋の終わり編』完結いたします。

 沢山のお気に入り、いいね、エールを
 ありがとうございます•ᴗ•ꕤ

 次話からは第二章アトルス王国編になります
 引き続きよろしくお願いします🙇‍♀




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