25 / 80
第二章 アトルス王国にて
25
しおりを挟む
結局ユリアーナはお言葉に目一杯甘えて、次の休みも植物園に訪った。
植物園のどこで落ち合うかなんて話していなかったけれど、自然とそこにいる気がしてあの屋台の所までユリアーナが行くと、果たしてシモンはそこに居た。
しかも何故かシモンは前回会ったときに、ユリアーナが迷って結局飲まなかった方のジュースを購入して待っていた。
えっと⋯⋯エスパー?
「丁度よかった、どうぞ」
「何方かの分ではありませんか?」
「いや、なんとなく今日も来てくれるんじゃないかと思ったから」
「⋯⋯⋯⋯ありがとうございます」
シモンの言葉に戸惑うユリアーナは、待っていてくれたと喜んでいいのかよく分からなかった⋯喜ぶって何?
本気で自分の頭がよく回ってないように思えて、取り敢えず飲もう!とストローで一気に吸い上げてしまった。それを見たシモンが、チャームポイントをこれでもかと見せつけながら笑っていた。
「あぁ失礼、笑っちゃって。でも美味しそうにのむから、はは」
美味しそうと笑いの因果関係は全く分からなかったが、シモンが笑ってくれたなら良かったとユリアーナは思った⋯良かったって何?
今日のユリアーナは自分でもよく分からない感情に振り回されて、来たばかりなのに少し疲れてしまった。だから笑顔のシモンに何気なく聞いてその答えに玉砕したのだがまたもや玉砕って何故?と変な思考ループに陥った。
「でもどうしてこの時間にご用意下さったのですか?すごい勘ですね」
「いや、ファライナが来る時は大体この時間位だったから、ご令嬢はこのくらいかなって思って」
「⋯そうですか!氷が程よく溶けてとっても冷たくて美味しいです。ありがとうございます」
笑顔は引き攣ってなかっただろうか?
そんな事を思いながら、なんでもないように笑うシモンにツキンと胸が疼いた。
そういえば⋯⋯ファライナと護衛騎士って⋯。
いやそんな事は聞いては駄目だと、ユリアーナの心の警報がしっかりと危険を伝えたので聞かずにすんだ⋯聞かずにすんだって⋯もう!私何なの?
ユリアーナの脳と心の葛藤などお構いなしにシモンが立ち上がって、飲み終わったカップを屋台に返しに行っていた。戻ってくると「じゃあ行こうか」と本当になんでもないように言ってくるから、ユリアーナは自分のヤキモキしているよく分からない感情が、馬鹿馬鹿しくなってもう思考の停止を脳に命じた。
それからは只管メモを片手に本来の目的、お勉強の時間だった。
「これはカメルレイって言って主に薬草の繋ぎの役目をしてくれるんだ」
「繋ぎ?」
「あぁそうだな、例えばこの前説明したこれエンテッドは何だったかな?」
「えっとこれは熱を下げるのに良い薬草だったかな?」
前回はメモができなかったが、ユリアーナは屋敷に帰ってから出来るだけ覚えてる事を書き出して復習していた。それを思い浮かべながら答えた。
「正解!凄いなよく覚えられたね。結構沢山説明したのに。私の生徒は優秀だなぁ」
「ふふ、ありがとうございます師匠!」
「じゃあ次はこれ」
「えっとこれはルーライです、炎症を抑える為に使います」
「正解!じゃあこれは?」
「これですか?⋯⋯アレ?これ聞きました?ごめんなさい覚えてないです」
「はははそれも正解!これは先日は鉢植えの方にあったんだ、だから説明してない」
「⋯⋯⋯⋯試しましたね」
「ごめん、ごめん」
笑いながら謝罪するシモンが憎らしくて少し睨んでからユリアーナも笑った。楽しい!楽しい!
どうしてシモンといると楽しいのか、それとも薬草の知識を取り込めるのが嬉しいのか、ユリアーナは後者なのだと自分に言い聞かせた。
「はは、これはステッサランって言って血を止めるんだ」
「血止めですね、ステッサラン⋯⋯と」
効能と薬草の名をメモしながら葉の特徴なども書き込んでいく。そんなユリアーナを見ながらシモンも眩しそうにしていたのだがユリアーナは気付かなかった。
「今問題に出した3つの薬草を使って怪我を治す薬を作るんだけど、3つだけを混ぜても不思議なことにあまり効果がないんだ」
「そうなんですか?」
「うん、思ったよりもって位なんだけどね。ただここにこれ、さっきのカメルレイを混ぜると途端に効能が倍くらいに発揮するんだよ」
「ええっ!倍ですか?」
「あぁ植物の不思議だよね。だから薬草の研究は止められないよ」
「倍⋯凄い」
「ねぇユリアーナ嬢、もし良かったら簡単な薬の作り方も教えようか?」
「えっ?でも私は薬師には」
「うん、薬師になる必要はないよ。でもさ知識として蓄える分には邪魔にならないだろう?」
「⋯⋯そうですね!私が知ってる事でいつか役に立つかもしれませんし、教えて頂けますか?」
ユリアーナが聞くとシモンは何故か照れたように頷いた。
その笑顔を見て何故かユリアーナはオスカーを思い出した。どうしてなのか自分でも分からない感情が湧き上がって思わず涙が溢れてしまった。
そんなユリアーナを見てシモンは慌てふためいた。
それはそうだろう
今の今まで笑いながら薬草の話をしていたのに、突然泣き出したのだから。
「ど、どうしたんだ?えっ?ユリアーナ嬢?」
言いながらシモンは胸ポケットからハンカチを取り出してユリアーナの涙を拭こうとした。
その真っ白なハンカチを見てユリアーナは尚更涙が溢れた。
もう自分でもよく分からない。
今日の私はどうかしている!
心の中でユリアーナは自分の感情を理解できなくて、ただ溢れる涙をどうにか止めようと必死になるけれど、どうしても止まらない。
そんなジレンマに陥っていた。
植物園のどこで落ち合うかなんて話していなかったけれど、自然とそこにいる気がしてあの屋台の所までユリアーナが行くと、果たしてシモンはそこに居た。
しかも何故かシモンは前回会ったときに、ユリアーナが迷って結局飲まなかった方のジュースを購入して待っていた。
えっと⋯⋯エスパー?
「丁度よかった、どうぞ」
「何方かの分ではありませんか?」
「いや、なんとなく今日も来てくれるんじゃないかと思ったから」
「⋯⋯⋯⋯ありがとうございます」
シモンの言葉に戸惑うユリアーナは、待っていてくれたと喜んでいいのかよく分からなかった⋯喜ぶって何?
本気で自分の頭がよく回ってないように思えて、取り敢えず飲もう!とストローで一気に吸い上げてしまった。それを見たシモンが、チャームポイントをこれでもかと見せつけながら笑っていた。
「あぁ失礼、笑っちゃって。でも美味しそうにのむから、はは」
美味しそうと笑いの因果関係は全く分からなかったが、シモンが笑ってくれたなら良かったとユリアーナは思った⋯良かったって何?
今日のユリアーナは自分でもよく分からない感情に振り回されて、来たばかりなのに少し疲れてしまった。だから笑顔のシモンに何気なく聞いてその答えに玉砕したのだがまたもや玉砕って何故?と変な思考ループに陥った。
「でもどうしてこの時間にご用意下さったのですか?すごい勘ですね」
「いや、ファライナが来る時は大体この時間位だったから、ご令嬢はこのくらいかなって思って」
「⋯そうですか!氷が程よく溶けてとっても冷たくて美味しいです。ありがとうございます」
笑顔は引き攣ってなかっただろうか?
そんな事を思いながら、なんでもないように笑うシモンにツキンと胸が疼いた。
そういえば⋯⋯ファライナと護衛騎士って⋯。
いやそんな事は聞いては駄目だと、ユリアーナの心の警報がしっかりと危険を伝えたので聞かずにすんだ⋯聞かずにすんだって⋯もう!私何なの?
ユリアーナの脳と心の葛藤などお構いなしにシモンが立ち上がって、飲み終わったカップを屋台に返しに行っていた。戻ってくると「じゃあ行こうか」と本当になんでもないように言ってくるから、ユリアーナは自分のヤキモキしているよく分からない感情が、馬鹿馬鹿しくなってもう思考の停止を脳に命じた。
それからは只管メモを片手に本来の目的、お勉強の時間だった。
「これはカメルレイって言って主に薬草の繋ぎの役目をしてくれるんだ」
「繋ぎ?」
「あぁそうだな、例えばこの前説明したこれエンテッドは何だったかな?」
「えっとこれは熱を下げるのに良い薬草だったかな?」
前回はメモができなかったが、ユリアーナは屋敷に帰ってから出来るだけ覚えてる事を書き出して復習していた。それを思い浮かべながら答えた。
「正解!凄いなよく覚えられたね。結構沢山説明したのに。私の生徒は優秀だなぁ」
「ふふ、ありがとうございます師匠!」
「じゃあ次はこれ」
「えっとこれはルーライです、炎症を抑える為に使います」
「正解!じゃあこれは?」
「これですか?⋯⋯アレ?これ聞きました?ごめんなさい覚えてないです」
「はははそれも正解!これは先日は鉢植えの方にあったんだ、だから説明してない」
「⋯⋯⋯⋯試しましたね」
「ごめん、ごめん」
笑いながら謝罪するシモンが憎らしくて少し睨んでからユリアーナも笑った。楽しい!楽しい!
どうしてシモンといると楽しいのか、それとも薬草の知識を取り込めるのが嬉しいのか、ユリアーナは後者なのだと自分に言い聞かせた。
「はは、これはステッサランって言って血を止めるんだ」
「血止めですね、ステッサラン⋯⋯と」
効能と薬草の名をメモしながら葉の特徴なども書き込んでいく。そんなユリアーナを見ながらシモンも眩しそうにしていたのだがユリアーナは気付かなかった。
「今問題に出した3つの薬草を使って怪我を治す薬を作るんだけど、3つだけを混ぜても不思議なことにあまり効果がないんだ」
「そうなんですか?」
「うん、思ったよりもって位なんだけどね。ただここにこれ、さっきのカメルレイを混ぜると途端に効能が倍くらいに発揮するんだよ」
「ええっ!倍ですか?」
「あぁ植物の不思議だよね。だから薬草の研究は止められないよ」
「倍⋯凄い」
「ねぇユリアーナ嬢、もし良かったら簡単な薬の作り方も教えようか?」
「えっ?でも私は薬師には」
「うん、薬師になる必要はないよ。でもさ知識として蓄える分には邪魔にならないだろう?」
「⋯⋯そうですね!私が知ってる事でいつか役に立つかもしれませんし、教えて頂けますか?」
ユリアーナが聞くとシモンは何故か照れたように頷いた。
その笑顔を見て何故かユリアーナはオスカーを思い出した。どうしてなのか自分でも分からない感情が湧き上がって思わず涙が溢れてしまった。
そんなユリアーナを見てシモンは慌てふためいた。
それはそうだろう
今の今まで笑いながら薬草の話をしていたのに、突然泣き出したのだから。
「ど、どうしたんだ?えっ?ユリアーナ嬢?」
言いながらシモンは胸ポケットからハンカチを取り出してユリアーナの涙を拭こうとした。
その真っ白なハンカチを見てユリアーナは尚更涙が溢れた。
もう自分でもよく分からない。
今日の私はどうかしている!
心の中でユリアーナは自分の感情を理解できなくて、ただ溢れる涙をどうにか止めようと必死になるけれど、どうしても止まらない。
そんなジレンマに陥っていた。
733
あなたにおすすめの小説
ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
【完結】あなた方は信用できません
玲羅
恋愛
第一王子から婚約破棄されてしまったラスナンド侯爵家の長女、ファシスディーテ。第一王子に寄り添うはジプソフィル子爵家のトレニア。
第一王子はひどい言いがかりをつけ、ファシスディーテをなじり、断罪する。そこに救いの手がさしのべられて……?
婚約破棄されたその後は、何も起きない日々でした
ふわふわ
恋愛
婚約破棄――
それは、多くの令嬢にとって人生を揺るがす一大事件。
けれど彼女は、泣き叫ぶことも、復讐に走ることもなかった。
「……では、私は日常に戻ります」
派手なざまぁも、劇的な逆転劇もない。
彼女が選んだのは、線を引き、基準を守り、同じ判断を繰り返すこと。
王宮では改革が進み、領地では生活が整えられていく。
誰かが声高に称えられることもなく、
誰かが悪役として裁かれることもない。
それでも――
混乱は起きず、争いは減り、
人々は「明日も今日と同じである」ことを疑わなくなっていく。
選ばない勇気。
変えない決断。
名を残さず、英雄にならない覚悟。
これは、
婚約破棄をきっかけに
静かに日常を守り続けた一人の令嬢と、
その周囲が“当たり前”を取り戻していく物語。
派手ではない。
けれど、確かに強い。
――それでも、日常は続く。
悪役令嬢として、愛し合う二人の邪魔をしてきた報いは受けましょう──ですが、少々しつこすぎやしませんか。
ふまさ
恋愛
「──いい加減、ぼくにつきまとうのはやめろ!」
ぱんっ。
愛する人にはじめて頬を打たれたマイナの心臓が、どくん、と大きく跳ねた。
甘やかされて育ってきたマイナにとって、それはとてつもない衝撃だったのだろう。そのショックからか。前世のものであろう記憶が、マイナの頭の中を一気にぐるぐると駆け巡った。
──え?
打たれた衝撃で横を向いていた顔を、真正面に向ける。王立学園の廊下には大勢の生徒が集まり、その中心には、三つの人影があった。一人は、マイナ。目の前には、この国の第一王子──ローランドがいて、その隣では、ローランドの愛する婚約者、伯爵令嬢のリリアンが怒りで目を吊り上げていた。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。
木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。
「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」
シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。
妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。
でも、それなら側妃でいいのではありませんか?
どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる