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第三章 葛藤
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ホームには懐かしい顔が列車の窓ガラス越しに見えた。
半年前と変わらない、いや、少し痩せてる?そうユリアーナが思った父であるユリシーズが迎えに来てくれていた。
「ユリアーナお帰り!」
列車を降りた途端ユリシーズは、そう言ってユリアーナをギュッと抱きしめる。ユリアーナは父の抱擁で帰ってきたんだと実感した。
だが義母が続いて降りるとユリシーズは「お帰り」と、口では優しくそう言っていたけれど、二人の間の空気が半年前と違う事をユリアーナは感じた。
アトルスの白亜の城に慣れてきていたユリアーナは、久しぶりの我が家を小さいと感じてしまって、何だか父に申し訳ない気持ちになり心の中で謝罪した。でも慣れ親しんだ使用人達がユリアーナを歓迎してくれると、やっぱりここが自分の場所だと思えるのだった。
その日は3人で夕食を取り、ユリアーナはそのまま自室に向かった。義母から帰国の初日に父と離婚の話をすると前もって聞いていたからだ。
ユリアーナは部屋に戻ると、メイド達によって荷解きが終わっている荷物の中のそれを探した。
ユリアーナの長年愛用していたデスクの上に小さなオルゴールがちょこんと在る。
それを見てホッとすると直ぐに撥条を巻く、ゆっくりと流れるメロディは伯父お薦めの異国の音だ。
知らない曲なのに何故か懐かしさを感じるその音を伯父はユリアーナに譲ってくれた。
ソファに沈みながら目を閉じる。
今頃義母が父に話をしているだろうか?
その話し合いが終わればユリアーナは義母とは母娘ではなくなる。
そう思うと寂寥感が湧いてきた。
義母やイザベラ、マリアンナと初めて会ったときの事。
マナー教師に我儘を言って困らせたユリアーナを、義母が優しく諭してくれた時。
イザベラに虐められて、マリアンナと二人で家出をして(幼いので庭の小屋に籠っただけ)心配かけるなと泣いて叱責された時。
教師からお墨付きを貰えた時、自分の事のように喜んでくれた義母。
婚約を喜んでくれた笑顔。
オスカーに解消を打診されて、打ちのめされたユリアーナを抱きしめてくれた事。
沢山の想い出がユリアーナの脳裏に浮かぶ。
間違いなくユリアーナは義母に守られていたと感じていた、愛くしんでもらえたと疑わない。
「⋯⋯⋯ありがとうお義母様」
ユリアーナは涙は拭かずに呟いた。
◇◇◇
次の日の朝、ユリアーナを起こしに来たのは義母だった。
昨夜の感傷に暮れたユリアーナとは違い、彼女は何かを吹っ切ったそんな感じで、朝っぱらから大胆にもユリアーナの布団を引っぺがした。
「ユリアーナ、遅いわよ!何時まで寝ているの?作戦決行よ!」
昨夜泣いたユリアーナを察して顔を洗った後、義母は冷たいお絞りを瞼に当ててくれた。
「ユリアーナ、悲しんでくれたのね。ありがとう。私貴方を育てられて本当に良かったわ。離れても何かあれば頼って頂戴。私は非力だけれど貴方の為に出来る事は何でもしようと、これから先も思っているのだから」
義母の優しい言葉に感動しているのも束の間、彼女は感傷に浸らせてはくれなかった。
「さぁ、旦那様は今グラグラ揺れているところよ。私が散々言ったから。でもねやっぱり貴方の言葉とは重みが違うの。だから、最後のひと押しをお願いね」
義母の作戦でのユリアーナの役目は、たった一言を父に言ってくれとお願いされている。
義母と侍女に手伝われ、着替えてユリアーナは食堂へ向かった。
朝食の席には、もう義母は着かないと先程ユリアーナは聞かされた。
二人っきりで食べる食事は久しぶりだとユリアーナは思ったが、緊張しているのはそれだけではない。
義母からの最後のお願いはユリアーナの本当の気持ちだから、父にちゃんと届けなければいけないと気合が入りすぎて体が震えているのだ。
「どうした?ユリアーナ、眠れなかったのか?無口すぎるだろう。何か心配事でも「お父様!」」
ユリアーナはユリシーズの言葉を遮ったが、思いの外声が大きくなりすぎた。ユリシーズの顔が吃驚しすぎて固まってしまっている。だがユリアーナはそんな事を気に掛ける余裕は無かった。
お腹に力を入れて、打ち合わせ通りにユリシーズに寂しそうに微笑む。
「お父様、私お母様とずっと一緒に暮らしたいわ」
ユリアーナのその言葉に父ユリシーズはクシャリと顔を歪め、マナー違反も何のその突然立ち上がった。
そしてユリアーナの所へやって来て、座ったままのユリアーナをギュッと抱きしめた。
それはホームで抱きしめられた時よりも強い力で、ユリアーナは父の想いを知る。
「アトルスにエリーヌを迎えに行くよ、ユリアーナありがとう」
父の決心にユリアーナはホッと息を吐き、両手を父の腰に回し抱きしめ返した。
その様子を義母エリーヌは扉の隙間から確かめて、手紙を執事のアルホーンに託しそのままロッサルト公爵家を出て行った。
彼女の行く先は最愛の夫が眠る場所。
彼の好きだったお酒を買って辻馬車乗り場へと向かう。
「旦那様、私達母娘を長い間お守り頂きありがとうございました」
辻馬車の酷い揺れに揺られながら、エリーヌはユリシーズへの感謝を呟いた。
✎ ------------------------
※本日更新の2話目、3話目は私用の為、通常よりも遅い時間に投稿になります
お読み頂いてる皆様の読書スケジュールを違える事をお許しください🙇♀
半年前と変わらない、いや、少し痩せてる?そうユリアーナが思った父であるユリシーズが迎えに来てくれていた。
「ユリアーナお帰り!」
列車を降りた途端ユリシーズは、そう言ってユリアーナをギュッと抱きしめる。ユリアーナは父の抱擁で帰ってきたんだと実感した。
だが義母が続いて降りるとユリシーズは「お帰り」と、口では優しくそう言っていたけれど、二人の間の空気が半年前と違う事をユリアーナは感じた。
アトルスの白亜の城に慣れてきていたユリアーナは、久しぶりの我が家を小さいと感じてしまって、何だか父に申し訳ない気持ちになり心の中で謝罪した。でも慣れ親しんだ使用人達がユリアーナを歓迎してくれると、やっぱりここが自分の場所だと思えるのだった。
その日は3人で夕食を取り、ユリアーナはそのまま自室に向かった。義母から帰国の初日に父と離婚の話をすると前もって聞いていたからだ。
ユリアーナは部屋に戻ると、メイド達によって荷解きが終わっている荷物の中のそれを探した。
ユリアーナの長年愛用していたデスクの上に小さなオルゴールがちょこんと在る。
それを見てホッとすると直ぐに撥条を巻く、ゆっくりと流れるメロディは伯父お薦めの異国の音だ。
知らない曲なのに何故か懐かしさを感じるその音を伯父はユリアーナに譲ってくれた。
ソファに沈みながら目を閉じる。
今頃義母が父に話をしているだろうか?
その話し合いが終わればユリアーナは義母とは母娘ではなくなる。
そう思うと寂寥感が湧いてきた。
義母やイザベラ、マリアンナと初めて会ったときの事。
マナー教師に我儘を言って困らせたユリアーナを、義母が優しく諭してくれた時。
イザベラに虐められて、マリアンナと二人で家出をして(幼いので庭の小屋に籠っただけ)心配かけるなと泣いて叱責された時。
教師からお墨付きを貰えた時、自分の事のように喜んでくれた義母。
婚約を喜んでくれた笑顔。
オスカーに解消を打診されて、打ちのめされたユリアーナを抱きしめてくれた事。
沢山の想い出がユリアーナの脳裏に浮かぶ。
間違いなくユリアーナは義母に守られていたと感じていた、愛くしんでもらえたと疑わない。
「⋯⋯⋯ありがとうお義母様」
ユリアーナは涙は拭かずに呟いた。
◇◇◇
次の日の朝、ユリアーナを起こしに来たのは義母だった。
昨夜の感傷に暮れたユリアーナとは違い、彼女は何かを吹っ切ったそんな感じで、朝っぱらから大胆にもユリアーナの布団を引っぺがした。
「ユリアーナ、遅いわよ!何時まで寝ているの?作戦決行よ!」
昨夜泣いたユリアーナを察して顔を洗った後、義母は冷たいお絞りを瞼に当ててくれた。
「ユリアーナ、悲しんでくれたのね。ありがとう。私貴方を育てられて本当に良かったわ。離れても何かあれば頼って頂戴。私は非力だけれど貴方の為に出来る事は何でもしようと、これから先も思っているのだから」
義母の優しい言葉に感動しているのも束の間、彼女は感傷に浸らせてはくれなかった。
「さぁ、旦那様は今グラグラ揺れているところよ。私が散々言ったから。でもねやっぱり貴方の言葉とは重みが違うの。だから、最後のひと押しをお願いね」
義母の作戦でのユリアーナの役目は、たった一言を父に言ってくれとお願いされている。
義母と侍女に手伝われ、着替えてユリアーナは食堂へ向かった。
朝食の席には、もう義母は着かないと先程ユリアーナは聞かされた。
二人っきりで食べる食事は久しぶりだとユリアーナは思ったが、緊張しているのはそれだけではない。
義母からの最後のお願いはユリアーナの本当の気持ちだから、父にちゃんと届けなければいけないと気合が入りすぎて体が震えているのだ。
「どうした?ユリアーナ、眠れなかったのか?無口すぎるだろう。何か心配事でも「お父様!」」
ユリアーナはユリシーズの言葉を遮ったが、思いの外声が大きくなりすぎた。ユリシーズの顔が吃驚しすぎて固まってしまっている。だがユリアーナはそんな事を気に掛ける余裕は無かった。
お腹に力を入れて、打ち合わせ通りにユリシーズに寂しそうに微笑む。
「お父様、私お母様とずっと一緒に暮らしたいわ」
ユリアーナのその言葉に父ユリシーズはクシャリと顔を歪め、マナー違反も何のその突然立ち上がった。
そしてユリアーナの所へやって来て、座ったままのユリアーナをギュッと抱きしめた。
それはホームで抱きしめられた時よりも強い力で、ユリアーナは父の想いを知る。
「アトルスにエリーヌを迎えに行くよ、ユリアーナありがとう」
父の決心にユリアーナはホッと息を吐き、両手を父の腰に回し抱きしめ返した。
その様子を義母エリーヌは扉の隙間から確かめて、手紙を執事のアルホーンに託しそのままロッサルト公爵家を出て行った。
彼女の行く先は最愛の夫が眠る場所。
彼の好きだったお酒を買って辻馬車乗り場へと向かう。
「旦那様、私達母娘を長い間お守り頂きありがとうございました」
辻馬車の酷い揺れに揺られながら、エリーヌはユリシーズへの感謝を呟いた。
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※本日更新の2話目、3話目は私用の為、通常よりも遅い時間に投稿になります
お読み頂いてる皆様の読書スケジュールを違える事をお許しください🙇♀
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