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第三章 葛藤
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頭を下げたままのマリアンナを見てユリアーナは胸が苦しくなった。婚約解消した当時なら如何思ったかは、今はその時ではないからユリアーナにも分からない。だが今はあれからそろそろ一年という時間が流れ、しかもとうにユリアーナの心にはオスカーの恋慕は消えている。
「マ、マリ。お願い頭を上げてくれない?」
ユリアーナの懇願に頭を上げたマリアンナの顔に浮かんでいるのは、ユリアーナが思っているのとは違う表情に見えた、感謝が見て取れてユリアーナは困惑してしまった。
「お義姉様、謝罪の機会をありがとうございます」
「えっ?」
「私、あの時も、そして今までもお義姉様にもお義父様にも謝罪の機会を頂けませんでした。そればかりか誰も私を責めてくれなかった。私はそれが苦しかったのです、当事者の私がそんな事を願うなんて、贅沢なことを言っているのは分かっていますがそれが本音でした」
「そう、ごめんなさいマリ。私貴方の心に寄り添えなかったわ」
ユリアーナの謝罪にマリアンナは、とんでもない!と言って泣きそうな顔をする。
「お義姉様が謝罪する必要はまるでありません。それこそ私罰が当ります。お願いですから止めてください」
マリアンナに厳しく言われてユリアーナは怯んだ。こんなに強く意見を言えるようになったのも、マリアンナが変わったのだと改めてユリアーナは理解するのだった。
「お義姉様、私、学園に入るまで自分の境遇という物をよく分かってなかったのです。あの頃の私の一番の憂いはイザベラ姉様で。丁度お姉様が居なくなった所だったから、こんな事言うのは何ですけどもう安心じゃないのか、なんて思っていたんです。そうしたら学園で初日は何人かだったのが、日に日に遠巻きにされる人数が増えていって。悲しくて怖かった、そんな時にオスカー様にお声をかけられたの」
ユリアーナはあの頃の自分を叱責したい気分に駆られた。マリアンナが友人が居ないのが、彼女の性格からなのだと勝手に決めつけていた。公爵家でも一人で居るのが多かったマリアンナだったから、一人が気楽なのだと勝手に決めつけていた。
良く考えれば彼女はユリアーナに訴えていたではないか!
『私、断れなくて。それにごめんなさいお義姉様、私お友達がいないから、クラスでもオスカー様だけが私に気を使ってくれるの』
確か、食堂でオスカーと一緒にいるマリアンナと目が合った日の夜、そうマリアンナが言っていた。
如何してクラスでオスカーだけが気を使うのか、如何して友達が居ないのか、考えれば分かったはずなのに、ユリアーナは自分の事しか考えていなかった。ただ只管オスカーがマリアンナに心を砕くのが辛いとそればかりだった。
「マリ、ご⋯」
再び謝罪をしそうになってユリアーナは飲み込んだ。この謝罪は本当に今更だった。
「嬉しさと戸惑いと心の中はぐちゃぐちゃで、でも一人はとても怖くて私。どうしても離れたくなかったんです。自分の寂しさからお義姉様の気持ちなど全然考えてなくて、駄目だと分かっていたのに、お母様にも散々言われていたのに。手を離せませんでした。だけどお義姉様、私オスカー様にも酷いことをしてしまっていたの。私が恋だと思い込んでいたものが、ただの依存だという事にあの婚約解消の日に気付いてしまって。それでもねお義姉様、お二人には本当に申し訳ないと今でも思っているけれど、あの時の私は正しくオスカー様に救われたのです。きっとオスカー様がいなければ私の心は壊れていたのかもしれないとも思うのです。お義姉様に謝罪しておきながら、言い訳にもならない傲慢な私の気持ちを聞いてお義姉様は許せないかもしれないけれど、これが私の本当の気持ちなの。纏まってなくて上手に言えなかったかもしれないのだけど」
「⋯⋯⋯っ」
ユリアーナはマリアンナの告白に言葉を失った。
たらればの話になるけれど、もし学園でユリアーナがマリアンナを気遣っていたら、マリアンナはオスカーに依存する事もなく、ひょっとしたら彼から思い切って離れる事も出来たかもしれない、そうしたら結果は変わっていたのだろう。
人の心とは本当に難しく思い通りにならないものだとはここ最近の出来事で思ったけれど、視野の広さを持てれば状況すらも変わるのだという事をマリアンナの言葉でユリアーナは思い知った。
だけどユリアーナはマリアンナの告白を傲慢だとは思えなかった、それに聞きたがったのはユリアーナだ。
そして、今回アトルスに来た目的を思い出す。
ファライナに意見をしようなんてそれこそがユリアーナの傲慢なのではないかと気付いた。
ファライナとシモンの事は二人の事だ。
ユリアーナがしゃしゃり出る必要はない、それこそ二人にとっては余計なお世話だ。
ユリアーナはこのまま二人には会わずに観光でもして帰ろうと決めた。
「マ、マリ。お願い頭を上げてくれない?」
ユリアーナの懇願に頭を上げたマリアンナの顔に浮かんでいるのは、ユリアーナが思っているのとは違う表情に見えた、感謝が見て取れてユリアーナは困惑してしまった。
「お義姉様、謝罪の機会をありがとうございます」
「えっ?」
「私、あの時も、そして今までもお義姉様にもお義父様にも謝罪の機会を頂けませんでした。そればかりか誰も私を責めてくれなかった。私はそれが苦しかったのです、当事者の私がそんな事を願うなんて、贅沢なことを言っているのは分かっていますがそれが本音でした」
「そう、ごめんなさいマリ。私貴方の心に寄り添えなかったわ」
ユリアーナの謝罪にマリアンナは、とんでもない!と言って泣きそうな顔をする。
「お義姉様が謝罪する必要はまるでありません。それこそ私罰が当ります。お願いですから止めてください」
マリアンナに厳しく言われてユリアーナは怯んだ。こんなに強く意見を言えるようになったのも、マリアンナが変わったのだと改めてユリアーナは理解するのだった。
「お義姉様、私、学園に入るまで自分の境遇という物をよく分かってなかったのです。あの頃の私の一番の憂いはイザベラ姉様で。丁度お姉様が居なくなった所だったから、こんな事言うのは何ですけどもう安心じゃないのか、なんて思っていたんです。そうしたら学園で初日は何人かだったのが、日に日に遠巻きにされる人数が増えていって。悲しくて怖かった、そんな時にオスカー様にお声をかけられたの」
ユリアーナはあの頃の自分を叱責したい気分に駆られた。マリアンナが友人が居ないのが、彼女の性格からなのだと勝手に決めつけていた。公爵家でも一人で居るのが多かったマリアンナだったから、一人が気楽なのだと勝手に決めつけていた。
良く考えれば彼女はユリアーナに訴えていたではないか!
『私、断れなくて。それにごめんなさいお義姉様、私お友達がいないから、クラスでもオスカー様だけが私に気を使ってくれるの』
確か、食堂でオスカーと一緒にいるマリアンナと目が合った日の夜、そうマリアンナが言っていた。
如何してクラスでオスカーだけが気を使うのか、如何して友達が居ないのか、考えれば分かったはずなのに、ユリアーナは自分の事しか考えていなかった。ただ只管オスカーがマリアンナに心を砕くのが辛いとそればかりだった。
「マリ、ご⋯」
再び謝罪をしそうになってユリアーナは飲み込んだ。この謝罪は本当に今更だった。
「嬉しさと戸惑いと心の中はぐちゃぐちゃで、でも一人はとても怖くて私。どうしても離れたくなかったんです。自分の寂しさからお義姉様の気持ちなど全然考えてなくて、駄目だと分かっていたのに、お母様にも散々言われていたのに。手を離せませんでした。だけどお義姉様、私オスカー様にも酷いことをしてしまっていたの。私が恋だと思い込んでいたものが、ただの依存だという事にあの婚約解消の日に気付いてしまって。それでもねお義姉様、お二人には本当に申し訳ないと今でも思っているけれど、あの時の私は正しくオスカー様に救われたのです。きっとオスカー様がいなければ私の心は壊れていたのかもしれないとも思うのです。お義姉様に謝罪しておきながら、言い訳にもならない傲慢な私の気持ちを聞いてお義姉様は許せないかもしれないけれど、これが私の本当の気持ちなの。纏まってなくて上手に言えなかったかもしれないのだけど」
「⋯⋯⋯っ」
ユリアーナはマリアンナの告白に言葉を失った。
たらればの話になるけれど、もし学園でユリアーナがマリアンナを気遣っていたら、マリアンナはオスカーに依存する事もなく、ひょっとしたら彼から思い切って離れる事も出来たかもしれない、そうしたら結果は変わっていたのだろう。
人の心とは本当に難しく思い通りにならないものだとはここ最近の出来事で思ったけれど、視野の広さを持てれば状況すらも変わるのだという事をマリアンナの言葉でユリアーナは思い知った。
だけどユリアーナはマリアンナの告白を傲慢だとは思えなかった、それに聞きたがったのはユリアーナだ。
そして、今回アトルスに来た目的を思い出す。
ファライナに意見をしようなんてそれこそがユリアーナの傲慢なのではないかと気付いた。
ファライナとシモンの事は二人の事だ。
ユリアーナがしゃしゃり出る必要はない、それこそ二人にとっては余計なお世話だ。
ユリアーナはこのまま二人には会わずに観光でもして帰ろうと決めた。
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