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第三章 葛藤
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そこでふとユリアーナは気付いた。
3日前にカインから結婚したと報告を受けた、今日はシモンから婚約解消の話を聞かされた。ではファライナは、今一人?
ではあの手紙は何だったのだろう。
手紙を読んで二人の仲はファライナの勘違いではないのかとその時思った。
シモンがファライナの事を好きだと思っていたのはユリアーナの勘違いだった。
そして二人は婚約解消。
「シモン様、ファライナ様はカインさんと新たに婚約しようとされて、シモン様と婚約を解消されたのですか?」
「いや、そうではない」
「⋯⋯⋯」
違うならあの手紙は?
益々混乱してきたユリアーナの脳内には、紫の髪に黒い瞳のファライナが目一杯蔓延ってきた。
「ユリアーナ嬢、申し訳ないが一つ約束をしてもらえないだろうか」
「約束⋯ですか?」
「あぁ、私とショーズ侯爵令嬢の婚約の解消は他言無用でお願いしたい。後出しの願いで大変申し訳ないのだが」
「他言無用、誰にも話してはいけないのですね。何故とお聞きしても?」
「理由はショーズ侯爵令嬢の性格というか、いやショーズ侯爵家というか。あの家を今ゲートラン公爵家では試しているのだ」
「試す?」
「かなり問題のある家だということが近年分かったらしくてね、兄が今準備をしている。私が君に話す許可を貰ったのは君に告白するのに資格がないと思われたくなかったからだ。婚約中の男に告白されても本気では聞いてもらえないだろう?それで兄は譲歩してくれたんだが。わかってもらえないだろうか?これはカインにも言わないでほしい」
「カインさんにもですか?」
「あぁ彼が察する分には止められないから、それはしょうがないのだが、直接的な言葉は言わないでくれないか。そうしなければ彼が暴走しかねない」
ユリアーナはシモンの言わんとすることがよく分からなかった。分からなかったけれど彼が必死な事だけは理解した。
だから黙って頷いたのだが、もう何かに巻き込まれてしまってる事は否めない。二つだけシモンに確認した。
「シモン様、私色々と混乱しております。だからと言っては申し訳ないのですが、今私の気持ちを貴方にお伝えする事はできません。ただ貴方の言葉が告白がとても嬉しかったです」
「あぁ」
「二つほど確認させてください」
「幾つでも私に答えられるのであれば」
「私が色々とカインさんに訊ねても構いませんか?」
「カインが君に話すかどうかは兎も角、それは全く構わない。だがくれぐれも」
「えぇ婚約解消の事はお話しません」
「ありがとう」
「それから⋯シモン様は本当にファライナ様の事は宜しいのですか?私は貴方がファライナ様の事を好きなのだと思っていたのです。好きなあまりの寛容なのだと思っていました」
「正直に言うと本当に最低な婚約者なのだが、先程も言った通りあまりにもファライナに関心がなさすぎたのだけど、その理由が兄と話してよく分かったんだ。出会った頃はそうでもなかったからね。私が忘れたい記憶を消していたようだ。何れこの話も君に出来るといいけれど、今は申し訳ないが話せない」
「⋯そうですか、分かりました」
「ファライナが、あぁショーズ侯爵令嬢が私との婚約解消を理解してくれていれば、この先あの家も救われるとは思うのだけどね」
「それは⋯⋯⋯いえ」
「⋯⋯いや、聞くなと言っておきながら軽率だった。あぁ一つだけ分かって欲しいのは、こんな状態の時に君に好きだと告白した事を軽率だと私は思ってない。君がもしかしたら誰かと婚約してしまうかもしれないと聞いて、その前に少しでも私の気持ちを伝えたかったんだ。君を困らせたかった訳じゃない」
二人はそんな言葉を交わした後、見つめ合った。
何かが有るのだと予感を感じさせるシモンの言葉に、それ以上は踏み込めないユリアーナは、ただシモンを見つめていた。
言いたくとも言えないシモン、ユリアーナが自分を受け入れてくれれば全てを話そうと思ったけれど、現実はそう甘くはなかったのだと感じていた。
今は初めて恋しいと思えた人と次に会える機会がある事を祈ってシモンはユリアーナを見つめることしか出来なかった。
3日前にカインから結婚したと報告を受けた、今日はシモンから婚約解消の話を聞かされた。ではファライナは、今一人?
ではあの手紙は何だったのだろう。
手紙を読んで二人の仲はファライナの勘違いではないのかとその時思った。
シモンがファライナの事を好きだと思っていたのはユリアーナの勘違いだった。
そして二人は婚約解消。
「シモン様、ファライナ様はカインさんと新たに婚約しようとされて、シモン様と婚約を解消されたのですか?」
「いや、そうではない」
「⋯⋯⋯」
違うならあの手紙は?
益々混乱してきたユリアーナの脳内には、紫の髪に黒い瞳のファライナが目一杯蔓延ってきた。
「ユリアーナ嬢、申し訳ないが一つ約束をしてもらえないだろうか」
「約束⋯ですか?」
「あぁ、私とショーズ侯爵令嬢の婚約の解消は他言無用でお願いしたい。後出しの願いで大変申し訳ないのだが」
「他言無用、誰にも話してはいけないのですね。何故とお聞きしても?」
「理由はショーズ侯爵令嬢の性格というか、いやショーズ侯爵家というか。あの家を今ゲートラン公爵家では試しているのだ」
「試す?」
「かなり問題のある家だということが近年分かったらしくてね、兄が今準備をしている。私が君に話す許可を貰ったのは君に告白するのに資格がないと思われたくなかったからだ。婚約中の男に告白されても本気では聞いてもらえないだろう?それで兄は譲歩してくれたんだが。わかってもらえないだろうか?これはカインにも言わないでほしい」
「カインさんにもですか?」
「あぁ彼が察する分には止められないから、それはしょうがないのだが、直接的な言葉は言わないでくれないか。そうしなければ彼が暴走しかねない」
ユリアーナはシモンの言わんとすることがよく分からなかった。分からなかったけれど彼が必死な事だけは理解した。
だから黙って頷いたのだが、もう何かに巻き込まれてしまってる事は否めない。二つだけシモンに確認した。
「シモン様、私色々と混乱しております。だからと言っては申し訳ないのですが、今私の気持ちを貴方にお伝えする事はできません。ただ貴方の言葉が告白がとても嬉しかったです」
「あぁ」
「二つほど確認させてください」
「幾つでも私に答えられるのであれば」
「私が色々とカインさんに訊ねても構いませんか?」
「カインが君に話すかどうかは兎も角、それは全く構わない。だがくれぐれも」
「えぇ婚約解消の事はお話しません」
「ありがとう」
「それから⋯シモン様は本当にファライナ様の事は宜しいのですか?私は貴方がファライナ様の事を好きなのだと思っていたのです。好きなあまりの寛容なのだと思っていました」
「正直に言うと本当に最低な婚約者なのだが、先程も言った通りあまりにもファライナに関心がなさすぎたのだけど、その理由が兄と話してよく分かったんだ。出会った頃はそうでもなかったからね。私が忘れたい記憶を消していたようだ。何れこの話も君に出来るといいけれど、今は申し訳ないが話せない」
「⋯そうですか、分かりました」
「ファライナが、あぁショーズ侯爵令嬢が私との婚約解消を理解してくれていれば、この先あの家も救われるとは思うのだけどね」
「それは⋯⋯⋯いえ」
「⋯⋯いや、聞くなと言っておきながら軽率だった。あぁ一つだけ分かって欲しいのは、こんな状態の時に君に好きだと告白した事を軽率だと私は思ってない。君がもしかしたら誰かと婚約してしまうかもしれないと聞いて、その前に少しでも私の気持ちを伝えたかったんだ。君を困らせたかった訳じゃない」
二人はそんな言葉を交わした後、見つめ合った。
何かが有るのだと予感を感じさせるシモンの言葉に、それ以上は踏み込めないユリアーナは、ただシモンを見つめていた。
言いたくとも言えないシモン、ユリアーナが自分を受け入れてくれれば全てを話そうと思ったけれど、現実はそう甘くはなかったのだと感じていた。
今は初めて恋しいと思えた人と次に会える機会がある事を祈ってシモンはユリアーナを見つめることしか出来なかった。
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