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帰国編
【70】
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アントリックは急いでいた。
周りの長閑な景色など何のその、愛馬に鞭を打ち只管走る王都を目指して。
だがスタート地点はモンマルトルの最西、幾らアントリックの優秀な愛馬でも休み無しで走り続ける事は出来ない。
気は急くが馬を休ませる為の休憩を取っているのだが⋯⋯。
共に連れてきたトールは遅れをとってまだ霞にも見えない。
あまりにも見えないのでアントリックは道を間違えたのでは?と己の方向感覚を疑っていた。
イライラとドキドキが重なっていたアントリックは、ようやっと追い付いたトールに開口一番嫌味を炸裂した。
「お前、乗馬は得意ではなかったのか?乗馬大会での優勝は眉唾か?」
「ハァハァ、そのヤル気は常に出せばよろしいのに、ユメール様が絡む時だけヤル気になったりポンコツになったりお忙しいですね」
息を切らしたトールはやっと追い付いた主に不本意ながら嫌味を言われたが、きっちり嫌味で返す事も忘れてはいなかった。
「皇帝が着く前に辿り着かねば、この苦労も水の泡だぞ」
「突然予定を決めたくせに偉そうに言わないで下さい」
「何ぉぅ」
「そもそも国境なぞもっと早く越えていたくせにユメール様に会いに行って決定的に嫌われるのが怖い、会うのが怖いと仰ってグズグズしていたのは皇子ですよ」
「⋯なっ!だがそのお陰でユメに会えたではないか」
「其れはそうですが、もっと早く進んでいたら途中で会えたのでは?」
「煩い煩い煩い!お前は本当に煩いな、父親そっくりだ」
「子供の頃から父に構って貰えぬと私は我儘を言ってましたが、父の苦労が今解りました。帝国へ帰ったら父を労わなければ」
「何だそれは、私は公爵に我儘なぞ言っては居らぬ」
「⋯⋯左様ですか」
トールの父である、皇帝の側近テルネール公爵はアントリックの子供の頃からの守役であったから、彼には自覚は無いだろうが相当な我儘皇子で、テルネール公爵を右往左往させていたのは城では有名な話である。
知らぬは本人ばかりなり。
半時程の休憩の後、二人はまた騎馬にて走り出した。
一応アントリックにはトールの他に、今回の護衛は五人付いてきていたが、そのうちの二人は先触れの為、既に王都に向けて一日早く出発している。
アントリックが一日遅れたのはユメールの側を離れ難かったからである。
拠ってトールの嫌味も尤もな事であった。
走る走る駿馬は何処までも、王都に辿り着いたのはナリシティを出発して五日後だった。
馬車で2週間程かかる場所からなら最短記録かもしれない。
大使館に着くと皇帝はあと二日はかかるという事だ。
アントリックはホッとひと息つく。
(間に合って良かった)
皇帝が来る前に話して置こうと思い、直ぐ様アルフォンスへ面会要請をしてもらったが、私信にて断られてしまった。
アルフォンスに協力の打診が出来ないという事は、やはりユメールが言っていたことは彼女の危惧ではないとアントリックにも事の次第が解った。
(私が不甲斐ないことが最大の理由だろうな)
『それでは妹は嫁になんかやれないなぁ』
あの時のアルフォンスの言葉が身に染みるアントリックであった。
周りの長閑な景色など何のその、愛馬に鞭を打ち只管走る王都を目指して。
だがスタート地点はモンマルトルの最西、幾らアントリックの優秀な愛馬でも休み無しで走り続ける事は出来ない。
気は急くが馬を休ませる為の休憩を取っているのだが⋯⋯。
共に連れてきたトールは遅れをとってまだ霞にも見えない。
あまりにも見えないのでアントリックは道を間違えたのでは?と己の方向感覚を疑っていた。
イライラとドキドキが重なっていたアントリックは、ようやっと追い付いたトールに開口一番嫌味を炸裂した。
「お前、乗馬は得意ではなかったのか?乗馬大会での優勝は眉唾か?」
「ハァハァ、そのヤル気は常に出せばよろしいのに、ユメール様が絡む時だけヤル気になったりポンコツになったりお忙しいですね」
息を切らしたトールはやっと追い付いた主に不本意ながら嫌味を言われたが、きっちり嫌味で返す事も忘れてはいなかった。
「皇帝が着く前に辿り着かねば、この苦労も水の泡だぞ」
「突然予定を決めたくせに偉そうに言わないで下さい」
「何ぉぅ」
「そもそも国境なぞもっと早く越えていたくせにユメール様に会いに行って決定的に嫌われるのが怖い、会うのが怖いと仰ってグズグズしていたのは皇子ですよ」
「⋯なっ!だがそのお陰でユメに会えたではないか」
「其れはそうですが、もっと早く進んでいたら途中で会えたのでは?」
「煩い煩い煩い!お前は本当に煩いな、父親そっくりだ」
「子供の頃から父に構って貰えぬと私は我儘を言ってましたが、父の苦労が今解りました。帝国へ帰ったら父を労わなければ」
「何だそれは、私は公爵に我儘なぞ言っては居らぬ」
「⋯⋯左様ですか」
トールの父である、皇帝の側近テルネール公爵はアントリックの子供の頃からの守役であったから、彼には自覚は無いだろうが相当な我儘皇子で、テルネール公爵を右往左往させていたのは城では有名な話である。
知らぬは本人ばかりなり。
半時程の休憩の後、二人はまた騎馬にて走り出した。
一応アントリックにはトールの他に、今回の護衛は五人付いてきていたが、そのうちの二人は先触れの為、既に王都に向けて一日早く出発している。
アントリックが一日遅れたのはユメールの側を離れ難かったからである。
拠ってトールの嫌味も尤もな事であった。
走る走る駿馬は何処までも、王都に辿り着いたのはナリシティを出発して五日後だった。
馬車で2週間程かかる場所からなら最短記録かもしれない。
大使館に着くと皇帝はあと二日はかかるという事だ。
アントリックはホッとひと息つく。
(間に合って良かった)
皇帝が来る前に話して置こうと思い、直ぐ様アルフォンスへ面会要請をしてもらったが、私信にて断られてしまった。
アルフォンスに協力の打診が出来ないという事は、やはりユメールが言っていたことは彼女の危惧ではないとアントリックにも事の次第が解った。
(私が不甲斐ないことが最大の理由だろうな)
『それでは妹は嫁になんかやれないなぁ』
あの時のアルフォンスの言葉が身に染みるアントリックであった。
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