護衛騎士が勝手に侍ります(泣)

maruko

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帰国編

【72】

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マリセリー大陸の筆頭国であるサザン帝国は元はサウディ王国だった。
数百年前から近隣の小さな国達が立ち行かなくなった時に国同士の話し合いにより、少しずつ少しずつ国を広げて行き、やがて帝国という塊になり、その後周辺の国達を制圧していって今の帝国になって行った。
これが教科書で学ぶ帝国の歴史だ。


だが本来は違っていた。
元の大陸筆頭はモンマルトルであった。
それこそ周辺の国達もモンマルトルへの崇拝は大きく制圧する時も帝国はかなりの苦労をして取り込んでいった。
モンマルトルの周辺はサウディ王国の周辺でもあったから、どちらが近隣の弱小国を取り込んでも良かったのに、モンマルトルは参戦してこなかった。
だから帝国は大きくなれた。

皇帝のみに伝えられる本来の歴史には、モンマルトル王国へのコンプレックスが綴られていた。

モンマルトル王国の風格には帝国という巨大な国になったとしても叶わない。
だからこそ帝国の威厳を損なわないように、モンマルトルとは極力関わらないようにと。
帝国の威厳はモンマルトルは鼻も引っ掛けないだろうと綴られている。



その皇帝に伝わる書を発見したのはユメールが帰国した後だった。

何時も何か事が起きた時、皇帝サイラムは自身の隠し部屋に篭もる。
普段はその空間にて椅子に座り暫くすると気持ちが落ち着き頭がスッキリするのだが、その日はなかなか落ち着かなかった。

妻である皇妃に珍しく詰られたからかもしれない。

彼女はモンマルトルの王女であるユメールを殊更気に入っていた。
何処がとか何がとかは解らないがサイラムもユメールの事は気に入る部類ではあった。
ただ其れは他の者よりは好むくらいの感覚であった。
だからユメールが皇子と仲違いして帰国すると聞いても「残念だな」位にしか思わなかった。
だからこそ直ぐに帰国の許可も出したのだ。

だがその後の皇妃はサイラムを詰り禄に口も効かなくなってしまいサイラムは辟易していた。

それ故落ち着こうとこの部屋に入ったのだったが。

其れは本当に偶然だった。

その部屋には歴代の皇帝達の私物が残っているが、サイラムには全く興味がなかった。
精々見たことが有るのは父である前皇帝の私物位だった。
その日も前皇帝の形見の玉璽を眺めようと抽斗を開こうとしたら、暫く開けてなかったので錆び付いて少しガタガタと揺れてしまった。
その拍子に隣の抽斗が少し開いたのだった。
そこは前々皇帝の私物入れだ。
何気なくそのまま開くとそこには一冊の書物が入っていた。
不思議なことに父の抽斗にはアレコレと入っているのにそこにはその書物だけだった。
なんとなくその勢いで順々にその隣もその隣もと歴代皇帝の私物入れを開くと他は空っぽだった。

今迄開けたことがなかったのでサイラムはその時までその抽斗が空っぽな事に気付かなかったのだ。

取り敢えずその書物に目を通すとそこには帝国の歴史と歴代の皇帝の苦悩が綴られていた。
そして最後の頁には、サイラムの父の言葉も書かれてあった。

『モンマルトルには侮られたくない、だが面と向かう勇気がない』と。

その時にサイラムは思い出す。
父が常にモンマルトルを馬鹿にしたように話していた事を。
何故か父は一度も行ったことがない国の事を蔑んでいた。
今思えばアレは自分やアントリックに対しての洗脳だったのではないか?
そう思えば思うほど確信していく。

サイラムは基本自分が見た物事で判断する。
だがモンマルトルに関してだけは見た事も行った事もないのに、昔から下に見ていた。
友好国である筈なのに交流も殆どしていない。

モンマルトルからアントリックへ求婚の打診が来た時も直ぐに断ろうとした。
一旦はテルネール公爵に「即座に断るのは控えたほうが良い」と言われて2、3年経ってから断ったが、端から考えるつもりもなかった。

まぁ向こうも何か色々やっていたから益々侮った。
ユメールとの婚約もアントリックがあまりにも煩いから許しただけだった。


自分であの国を見てみよう。
サイラムはその書物を見て初めてモンマルトルに興味を示したのだった。


そして今モンマルトル王国の王都に入ったのだが、サイラムは困惑していた。
他の友好国へ赴くと必ず道中には帝国の旗を持った民衆からの歓迎があった。
だがモンマルトルでは何処にもそんな様子はない。
至って日常がそこには存在していた。
偶にその帝国の大行列を眺めて「凄い!」と歓喜する者も見受けられるが、ただそれだけだった。
物珍しそうに見る子供たちの視線だけは熱かったが。

そうして王宮に着いたあとも通常の案内を受けるだけだった。

段々とその屈辱に握りしめた拳が震えたが、其れでも耐えて案内された会議室へ入った。

其処に居たのはモンマルトル国王と第一王子のみで他には側近すらも居らず、人払いをされていた。

挨拶前の人払いに皇帝サイラムは訝しむ。

歓迎もなくただ案内された会議室へ入る、この行為が帝国を侮っていると感じられ只管憤る。

おそらく共に来た者たちもそう思ったのだろう。
扉の外から怒声が聞こえてきた。

「長旅でしたな」

モンマルトル国王の第一声は穏やかだったが、其処には怒りが見えた気がした。


皇帝サイラムはその静かな怒りに生まれて初めて足が震えたのだった。




──────────────

※昨日より高熱発症でボーッとして頭が回らず一話しか更新出来ませんでした🙏
一日二話更新が出来なくて(꒦ິ⌓꒦ີ)
申し訳ありません🙇‍♀

本日も二話の確約は出来ませんが、奇跡的に頭が回って作成出来ましたら更新させて頂きます
近況ボードにと思いましたが、そちらも頭が回りそうになくて⋯。
作品後書きにて失礼いたします(* > <)⁾⁾

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