護衛騎士が勝手に侍ります(泣)

maruko

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帰国編

【73】

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 コンコンコン

 サイラムがモンマルトル国王の威厳に震えながら対峙しているとノックの音がした。
 顔を覗かせる若い男に第一王子が対応に立ち上がる。
 扉前で何か言葉を交わし入ってきたのはアントリックだった。

「お前⋯⋯」

 サイラムの言葉には返事をせずいきなりアントリックはモンマルトル国王に跪き頭を垂れて、言葉を待つ。

「皇子如何されたかな?訪問の連絡は受けておらぬが」

「突然申し訳ありません、無礼はお詫び致します」

「⋯まぁ良い、二人ともどうぞ」

 国王は手でサイラムとアントリックにソファを勧めた。
 4人で向かい合わせてお互いの顔色を伺う。
 口火はやはりアルフォンスだった。
 いきなり笑い出す。
 帝国の二人が固まっていると可笑しくて堪らないといった風にアルフォンスの軽口が始まった。

「二人とも陛下に慄いているようですが気の良いオジサンですよ、此処はざっくばらんに話そうではないですか。腹の探り合いばかりしていては進む話しも進まない。単刀直入に聞きます、皇帝は何故此方へ?帝国始まって以来の事だと聞いておりますが」

「⋯いや、申し訳ない。実は用という用は無いといえば無いしあると言えば有るんだ」

「どういうことですかな」

 相変わらずの威厳で国王が話すが、アルフォンスに止められる。

「陛下、威圧的な態度は止めてください。私は先程ざっくばらんにと言いましたよね」

「だがユメールがか「関係ありません」」

 国王の言葉を遮りアルフォンスはこの場を自分が仕切る事に決めた。

「皇帝、陛下の事は気にしないでください。だが先程の返事では私も納得出来兼ねますが⋯」

「あぁすまない。失礼な事を言うと思うが率直に言わせてもらう。実は書物を見つけてモンマルトル王国に興味が湧いたのだ」

「⋯⋯」

「父う⋯皇帝書物とは?」

「お前にはまだ早い。だが同席してしまったから仕方がないか⋯今からの話しは聞かなかったことにしろ。何れは知る事だがな」

 そうしてサイラムは隠し部屋で見つけた、皇帝のみに伝わる帝国の歴史に付いて話し始め、自分とアントリックは前皇帝より洗脳されていたのではないかという疑問まで、明け透けに話し始めた。
 本来なら他国に帝国の弱味を話すなど言語道断で、アントリックはその父親の様子に驚きを隠せなかった。
 何故サイラムは帝国の秘密を話したのか⋯⋯其れはモンマルトル国王はとっくに帝国の真の歴史など知ってると思ったからだ。
 案の定、驚く第一王子と違って、国王の方はただ頷くだけであったから、サイラムの憶測は間違っていなかったのだろう。
「フッ」国王は耐えきれないという様な吐息の様に笑った。

「あぁ失礼⋯⋯いや親子だなと思ってね」

「?」

「帝国はおそらくその歴史が始まってからずっと苦悩していたのだろうね。私達の伺い知ることができぬ程に」

「⋯⋯そう、だと、思います」

 サイラムは国王の余裕の笑みに戸惑いながらも答えた。兄と話しているような不思議な感覚に陥る。

「歴代の皇帝の気持ちや考えは私は知らないが、君の父親の気持は知っている」

「何故ですか?」

 国王の話を不思議に思ったのはサイラムだけではなかった、その問は前皇帝の孫であるアントリックだった。
 再び国王は貫禄を醸し出すようにその口に笑みを浮かべてアントリックを見た。

「何簡単なことだ、手紙を頂いてね。率直な手紙でその真意が計れずに今迄来たんだが、君の父親がその答えを今回持ってきてくれた。故人には申し訳ないことをしたと今思うよ。だが君達の父そして祖父は此方に訪ねては来てくれなかったからね。私がそちらに行った時は、病を理由に面会できなかったからね」

「では、もしかして」

「あぁあの時は娘の顔合わせだの何だのと周りが五月蝿かったが、私が其れに便乗したんだ。もっと早く断りの返事が耳に入っていたら違う方法もあったのだが、上手く隠されてしまってね。其れは此方の落ち度だ」

「では父は⋯⋯」

「いやおそらく皇帝の考えていることではないよ。君の父上である前皇帝の手紙の内容を全て話すつもりはないが、簡単に言うと君が此方に牙を向いても相手にしないでくれという事だった。君の言う洗脳というのはおそらくモンマルトルは取るに足りない国だから興味を持たせないようにという彼なりの親心だろうね。軍隊派が煩かったんだろう?」

「えぇそうですね、そういう事ですか。父は私に話してくれなくて⋯」

「其れは親としてのプライドだろう」

「そうかもしれません、本当の気持ちを秘密の書に認めてその存在は隠していました。私は偶然見つけましたが、その偶然も自分の死の後で見つかるようにしたのかもしれません」

「其れで皇帝は⋯今後如何されたいのですか?」

話しを黙って聞いていたアルフォンスが訊ねる。

「今迄は友好国と言っても名ばかりだった。今回お互いの国の関係が強固になる所に、此方の愚息が悪手を打ってしまって⋯軍隊派に勢いが付いてしまったのです。ですがこれを一掃したい、今更で⋯本当に今更で申し訳ないが、モンマルトルの第二王女との婚姻は必要なのです。私に力を貸しては頂けないでしょうか?」

「帝国に利用されろと?」

「アルフォンス!其れは違うな⋯」

「ですが陛下!」

皇帝の願いにアルフォンスは噛み付いたが国王が其れを諌める。

「皇帝、気持ちが変わってくれたのはこちらとしても有り難い。ユメールを嫁がせるのは国としては吝かでないのだが親としては苦しい。大事な娘であるからね、一つ条件を出しても良いかな?」

「条件に依りますが⋯」

「何、簡単なことだ。第一王女の罪を不問にしてほしい」

「⋯其れは⋯そちらも困るのではないのですか?国として」

「まぁ国としては困るが、其れは面子の問題で実害があったのは其方の皇子だけだ。求婚がややこしくなったからね。其れは親として頭を下げよう。其れで手打ちにしてほしい」

国王はアントリックに向けて頭を下げてきた。
アントリックは戸惑いながらも、本来の目的は拗れたユメールとの婚姻を元に戻す事だから、この流れは彼にとって願ってもないことだった。
無理やり会合に割り込んだかいがあるというもの。

「第二王女との婚姻は認めて貰えますか?」

「⋯⋯あぁ、君がここに居るということはちゃんと解決してくれたんだろう?」

「はい、元は私の馬鹿な行動のせいです。ですが王女には許してもらえました。私達はもう離れたくないのです」

「三度目はないぞ」

「モンマルトル国王に、そして第一王子に誓います。必ず貴国の王女を幸せに⋯ユメールを幸せにします」

アントリックが頭を下げると皇帝も同じく下げた。
大陸筆頭のこうべは、モンマルトル側にとってはとても価値がある物だと国王もアルフォンスも満足した。

「では嫁入りの時期を決めようかな」

国王の声にサイラムもアントリックも胸が熱くなる。

皇帝は、帝国とモンマルトルの友好と軍隊派を一掃する為に。
アントリックはユメールとの結婚の為に。
国王は第二王子の今後の為に。
アルフォンスは大事な大事な妹の為に、そしてちょっぴり鉄道という未来の投資の為に。

其々の目的がしっかり叶った意義のある二国間の会合はトップのみに拠って決定した。




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お読み頂いてありがとうございます
昨日の後書きにて触れていましたが、おそらく予想の範疇であったかと思います。
インフルエンザでした('﹏*๑)ウッ…
熱はだいぶ下がりましたがまだ高熱の範囲です。
9度超えますとハイテンションになり指は動きますが頭が働かない事に気付かされました笑

今日の夜辺りか明日には熱も下がると思います
ご心配おかけしまして💦
申し訳ありませんでしたm(_ _*)m

明日辺りまでは確約出来ませんが、元気バリバリになりましたら一日二話投稿も頑張りますので今後共応援のほどよろしくお願いします🙇‍♀



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