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しおりを挟むギルド会館の小部屋の一つに通された。昨日エルサが出てきた部屋だ。
「さて、アリスちゃん。単刀直入に聞きたいのですが、貴女は何者ですか?」
何者、とは。首を傾げて見せると、先程我が回収場に出した獲物の種類を言った。
「アレらは全て、Cランク相当の実力が無ければ狩れない。青鞭鳥や人喰い貝とジュエルベアに至っては無傷で確保するにはBランク並の戦闘力が欲しいところ。
アレらには、仕留めたであろう貴女の魔力の残滓がくっついてるから、貴女がやった事に間違いない。でも、それをやってのけたであろう貴女の魔力が殆ど感じられない…!しかもあれだけの量を収納できる許容力。普通じゃない」
うーん…。我が魔王していた時に見せていた力の何億分の一にも満たない能力なのだが。そんなに人間というのは能力値が低いのか?
『アンタ、普段は魔力を抑えてるでしょ。だから実力と見た目能力の差が激し過ぎてああいう反応されるノヨ』
「…そうは言っても魔力を抑えずに我が歩き回れば周囲が耐えかねて破裂しかねんぞ?」
『それはアタシも予想外だったワ。精々周囲の生き物が気絶するくらいだと思ってたのに』
と、普通の会話をリィとしていたら、犬と会話…と、ドン引きされた。……わくわく。
「何者と問われても、我は答えを持ち合わせておらん。それに冒険者というのは訳有りの者が多い為、詮索はタブーではないのか?」
昨夜コリー達が聞いてもいないのに教えてくれた。早速役に立ったな!こんなことならもう少しリィを撫でさせてやっても良かったやもしれん。
「…それも、そうね。でも、あれだけの力があってFランクから始めさせるのは余りにも勿体ない。私の権限で、Eに上げるわ。本当はCくらいにしてしまいたいけれど、現段階ではそこまで上げられないから…」
…つまり、結局のところ、我は今日からEランク冒険者ということになるらしい。よく分からんがやった上がったぞ!
「暫くの間は混乱を避けるためにそれを伏せておくから、Fランクの仕事をしてくれていいわ」
と、そんな話をされたのだが、我は別なところが気になっていた。
「エルサ殿。このギルド会館の受付窓口の上の部分に飾ってある営業許可書と回収場の営業許可書は、領主殿が発行したものなのか?」
「ええ。特殊な紙とインクだから、偽装は出来ないわ。…どうして?」
「いや何、少々気になったものでな」
エルサに昨日の話をする。あの食堂を襲撃まがいの事をしている男の話を。そしてその男が今朝持っていた契約書の話を。エルサの顔が曇ってゆく。おや、何か気に触ることがあったらしいな。
「……領主様が立ち退き要請書をわざわざ個人にあてて出すなんて、おかしいわ。それに、借金…?あの災害の時は、全ての店舗の修理費や街の人たちの生活費は、全て公共の積立金で賄えたのに?」
「ん?やはりおかしいことなのか。疑問に思ったのはそれでは無いのだが」
「…というと?」
「このギルド会館や回収場に飾ってある書類は全て特別と言うに足りるだけの性能を持っているが、彼奴の持っていたのは、普通のただの紙だった」
「そう…。分かったわ。ありがとう。私も丁度別件で話があるから、今から行ってくるわ。
査定の結果3ルトー60ジルド。登録証を窓口に持っていって必要分言えば、残りはギルドで預かるから」
つまり使いたいときに使いたい分引き落として使えると言う事だな。金を落とす心配がなくて安心と言えば安心なのか?まあそんなことはどうでもいいな。それよりも
「エルサ殿、可愛い洋服はどのくらいの費用があれば買える?」
「…装備じゃなくて?」
「先ずは洋服」
「そ、うね。アリスちゃんが今回稼いだ報酬なら、良いのが買えるんじゃないかしら。流石に貴族令嬢が着るようなドレスは買えないだろうけど」
ワンピース、下着類やソックス、シューズも欲しい。でも我ばかりではなくリィにも可愛らしいリボンを付けたい。というかお揃いかつ機能的な服に着替えたい。効果魔法は付与すれば良し。安かろうが可愛ければ良い。だって我、この身体で着飾るって決めたもん。
「アリスちゃん。ありがとう。何かあれば気軽に私に声をかけるか、見かけない時は言伝るように受付に言ってね。出来る限り力になるから」
エルサを見送って、コリー達が言っていたブティックを目指した。
『ご機嫌ネ』
「まあな。揃いの飾りを付ければ我の従魔と見て取れるだろう?あの気色の悪い首輪を付けていない状態で犬サイズからデカくなったら、間違いなく大騒ぎだ。
そして単純な話…」
飼い犬と同じ飾りをつけた少女、可愛く無いか?
呆れたように溜息をついたリィを連れて、我は上機嫌に足を進めた。
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