前世魔王の伯爵令嬢はお暇させていただきました。

猫側縁

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100.

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いつもありがとうございます。
記念すべき(?)100話目です!(だからといって番外編とかではないです)
今回から数話、ちょこっと過去の魔王様に触れていこうかと。そう言うわけでアリスちゃん以外の出番過多です!(大体4話くらいだと思うので許してください。ついでに今日中にある程度更新します)

それでは、よろしくお願い致します!






100. other side

アリス達が魔導国学園都市部で足止めを食らっている頃、亜空間内の居城のアリスの部屋には2つの影があった。
1つはグレゴール。今の名をラギア。今も昔も魔王の忠実なる部下。
もう1つはルシア。かつては下位精霊であり、今も昔もアリスが大好き。

アリスの言う事なす事超肯定の過激派としては決して相性は悪くはない。…しかし、それはあくまでも対外的な話である。
つまり、過激派には過激派内の戦いがある。特に同じ主を仰ぎながら対立した事があるこの2人は。

魔王の部屋の掃除をしていたルシアはほぼ掃除を終えて唯一後回しにしていたそちらへ身体を向けた。

『そこから邪魔な頭を避けてくださる?斬り落として除けても良いのですけれど』

残りはアリスが愛用している椅子付近の床の掃除だけなのだ。
しかし、そこには今、ラギアがいる。間違った椅子の使い方をして。具体的には、椅子の前に座り、座席部分に頭を乗せている。

「ふん。貴様如きが私に傷を付けられるとでも?」

不敵な笑みを浮かべるラギア。体勢そのままなのでかなりアレだが、本人は気にした様子もなければ避ける気も無いらしい。

『以前の私ならいざ知らず、今の私は上位精霊な上、貴方は人間にまで落ちたのですから、勝てない相手でも無いですわ』

余裕の笑みで返すルシア。

「…試すか?」
『…やります?』

2人の顔つきが変わる。見かけだけの笑みは消えて鋭い敵意がぶつかり合い、火花が散っているようだ。

まさに一触即発。魔王…アリスの手前争わない2人だが、本来なら殺し合いをし始めてもおかしくはない。何がそうさせるのか?それは、消せもしない、過去に起因する。

「貴様の命は、アリス様が咎めない為にある事を忘れているのか。許しさえいただけるのなら、貴様などあの木ごと消滅させてやるのに」
『私…いいえ、私たちが邪魔をしたのは、魔王様の為。貴方達魔族は魔王様の未来を守ろうとしない。ただ従うだけでしょう』

揃いも揃って殺気を向け合う。ラギアはアリスの側に素知らぬ顔でルシアが居るのが許されている事に腹を立てている。ずっと、ずっと。再会してからも。…それよりずっと、昔から。

「…未来を、守った?…流石精霊、身体同様頭も飛んでるな。魔王様がどれだけ傷ついたか。お前達が勇者なんかと手を組んで邪魔をしなければ、今回魔王の座を欲し剰え、剰え…!アリス様に求婚する輩が湧いて出る事も無かった…!」

怒りが渦巻く。勇者を呪って迷宮を作った事では消え去る事が無かった怒り。アリスとして魔王が目の前に再臨したからこそ、湧き出てくる怒り。それは、自分の後悔も含まれていた。

強い意志のままラギアは身体を起こし、ルシアに怒りを叩きつけた。

「魔導国をあの時滅ぼせていたなら!!」

少しの間、ルシアは沈黙して、そしてあくまでも冷静に言葉を使う。

「…その魔導国が無ければ、アリス様は再びこの世に生まれ出る事はございませんでしたわ」
「そんなものは結果論だ!」

ラギアが感情的になるのはアリス…もとい、魔王に関する事だけだ。あとはただ冷徹に、自分のこと以外はどうでもいい。幸であろうが不幸であろうが構わない。アリスが、…己の主人が幸せならば。
だからその心の安寧を裏切るという形で壊した妖精達をラギアは心の底から憎悪している。

『まぁまぁ。その辺でー、落ち着きましょーよぉー』

声と同時に何かが振って降りてきた。

『そもそもー、ラギアさんがー、魔王様のお椅子に頭を乗せてにやにやなんてー、変態さんなことしてるからー、ルシアに毛嫌いされるんですよおー』

緊張感も何もない、非常に眠そうなヒヨコが……否、ひよこ頭。黄色いふわふわとした髪質の少年が、可愛らしい顔で欠伸をしながらそこにいた。その姿や声の響き方から、ルシアと同じく精霊だと分かる。でなければ、音もなく気配もなく唐突にこの場に現れることが出来るはずがないのだから。

待ち望んでいた精霊の目覚めに対し、ルシアは、

『何故貴方がいるの!?ルー!!』
「今すぐ蓄えた生命力を"樹"に返して塵になれッ!」

……ラギア共々戦闘態勢に入った。

『えっ?!ちょっ…!扱い酷いいー!さっきまでの殺伐どこにいったのー?仲良しじゃんよー…』
「『煩い黙れ。魔王様の敵』」
「ええ…?」



……新たに目覚めた精霊は、通称ルーという。彼をルシア達が歓迎しないのには、理由が勿論ある。

『どうしてルーが、私のいた樹から?貴方、あの人形遊び野郎の手下でしょう?滅んだと思ったのに……!』
『やだなー、そんな、同じ精霊のよしみで存在する事ぐらい許してよー。それにマリアン様は人形遊び野郎じゃないよー。好みの生きた少年を侍らせて満足するど変態なだけだよーお』

一応NOタッチの精神は持ってるから大丈夫多分。とルーが付け加えた。

ルーという精霊は、かつてとある魔族の眷属だった。そのとある魔族は魔王の配下であった。では何故ルシアもラギアも揃ってこの精霊に敵対心を持っているかといえば、その主人である魔王の配下を嫌っているからである。

「あのど変態も生きているのか…!?」
『いやぁー、同じく魔王様大好きなど変態にど変態と言われても、マリアン様は大喜びするだけでしょー。特にグレゴールさんが同類なら狂喜乱舞間違いなしー』

グレゴールさんが1番つれない態度を取るって落ち込んでましたからー。と、ルーは言う。


そして収集が付かなくなってきたところにこそ、混沌は更に問題を連れてくるもので…


「ただいまー。第五王子とやらに決闘を申し込まれたぞー。負けたら我はそいつの所有物になるらし……悪霊退散ッ!ラギア!塩だ!早く塩を撒けッ!!!」
「攻撃魔法でもよろしいですか!?」
「許可する!思いっきりやれ!!」
『ちょっと!?僕の話聞いてよーお!!?』
『そんなことよりアリス様を所有ってどういう事ですの!?』

アリスが帰宅した。
それも色々と厄介な物事を連れて。
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