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Long long ago
しおりを挟む数百、数千、数万年前。
真実を、事実を、大昔の物語にしてしまうほど長い時に忘れられた過去を話そう。そんなに大仰なものではないが、全てはそこに起因するのだ。例え、その話の中心に存在しているとある王が、全て忘れてしまったのだとしても。その周囲がその配下が、その存在を尊ぶ者たちが無かったことになど絶対にさせないから。
「ーーーーーー様!……様!魔王様!!」
「…今度は何だ。また部下を鉱山に送ったか?ドヴィアデズが蠱毒でも作ったか?それともアレか?とうとうマリアンがNOタッチの精神を破り捨てたのか?」
「いや違いますよ。というか、部下の目の前で堂々と配下達の問題有りな面を露呈させないでください」
「露呈じゃない。ただの事実だ」
……このやりとりは消えても良かったかもしれない。
とにかく、彼らはただ普通に生活していた。
魔王という魔族の中で最も力の強い魔族の下、弱肉強食、より強きものが偉いという絶対ルールはあるが、普通に。魔族だけの世界としては調和の取れた善き世界だった。
しかしそれは急に崩れる事となる。
勇者の出現によって。
ある日突然魔王城へと進軍してきたその男は自らを勇者と名乗り、異世界から魔王を倒す為にこの世界へと降り立ったと言う。
人間とは思えない程に強かったその男は、人間にしては腕の立つ剣士や人間にしては魔法力の高い者たちを連れて、魔王を滅ぼし平和を世界にという目的を掲げて何度も何度もやってきた。
魔族は近隣の土地の人間達ともそれなりにうまく付き合っていたのだが、勇者を担ぎ上げた人間の国の王達が魔族との取引や交流を悪とし、同時にプロパガンダにも励み、結果、人間は魔族を怖がり、魔族は排除しなければならないという思想が蔓延した。それが出来るのが勇者であり、希望なのだと。
…その為、勇者はどこへ行っても重宝され、本来なら一発処刑ものな犯罪行為でさえも見過ごされることになり、やがて別な波紋に繋がっていくのだがそれは別の機会に。
魔王は勇者が来る度、城が壊れるし物も壊れるし部下も壊れる為非常に不愉快極まりなかった。何年も、何十年も、何百年も。魔王は度々来る勇者を時に葬り時に燃やし時に送り返した。そしてふと気づく。
「……あれ?我はともかく、勇者は何故300年も生きているのだ?人間の平均寿命って50くらいだろう?」
「…魔王様、もしかして今まで来てた勇者が、全員同一人物だと思ってますか?」
「え?違うの?」
……という事で、魔王は勇者について調べた。
神託というお告げを聖女が聞き、聖女によって勇者が選ばれる。年代も性別も性格も貧富も様々であった為、選定基準は定かではなかったが、選ばれた者が魔王を倒せる可能性を持つ期間を終えると、次の勇者が選ばれるらしい。
それは肉体の全盛期であったり、能力の全盛期であったりするらしい。
だから選ばれた勇者が生存している間に次の勇者が生まれてくる。しかも勇者の専用装備である聖剣は、勇者であれば誰でも…それこそ全盛期を過ぎてからでも使用可能であるらしかった。
……だがまあ、そんな事、魔王にとっては情報と事実なだけで何の意味も無かったが。
何故なら魔王にとって、勇者はまったく…というわけではないが、脅威ではないから。そのため配下達も慌てることもなく、冷静に対応を協議していた。
「大体2年くらいで城に襲撃して来ますね」
「前に3回ほど来た勇者が選ばれてから、次の勇者が選ばれるまでは5年くらいでした。肉体の年齢によりますが、成人前の人間であれば最長20年程勇者を名乗っていられるようです」
「通り道に迷宮を配置した際はやはり来るのが遅かったですね」
魔王の配下達は、やまない襲撃はもう定期イベントと受け入れることにした魔王の意志に反することもなく、ではより娯楽として魔王に楽しんでもらう為にと趣向を凝らした。
ある者は迷宮を作って罠に嵌った勇者の姿を魔王に実況したし、
ある者は迷いの森という幻覚煙の蔓延した森を亡霊のように彷徨う姿を見せたり、
ある者は正面から勇者達と一戦交えてみたり。魔王はそれなりに楽しんではいたが、勇者の襲撃が多くては魔王も飽きてくる。
そこで、勇者を敢えて生かして、時間をかければ治る軽くはない傷を付けて追い返し、多少次来るまでの時間を伸ばして、魔王が多少は楽しみに待てるよう調節する念入りさを持った。
通常こんな事、魔族はしないのだが、他ならぬ敬愛し、尊敬し、崇拝し、献身する魔王の為ならば魔族らしくない事であろうがこの配下達は何でもやった。
最初の勇者の襲撃から千年もすれば、勇者は大体10年から30年の間に選定されるようになっていった。
…さて、年数を重ね何人も勇者が選ばれては消えていくなかで、ある意味当然な事が人間側で起こった。
勇者そのものに対して反感を持つ者が出て来たのだ。
それは全てにおいて勇者であるからという理由だけで優遇される事についてだったり、
勇者であるからという理由で好き勝手振る舞う者のせいで生活が壊された事だったり、
…まあ、理由は様々だが、勇者という存在そのものに悪意を持つ者が出始めた。
そんな彼らは、自ら魔族と手を組んだ。
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