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あけましておめでとうございます。本年も(ちまちま更新していきますので、)よろしくお願いします。
お待たせ致しました!
↓
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↓
頼りの騎士団はデクの坊。
明らかなる実力差。
差し迫った死の恐怖。
決闘当日、ラギアも揃い、万全の体制が整ったので、腹癒せ込みで散々王子を虐めてみた結果その三条件が揃い、想定通り王子が我に斬りかかってきているのだが…。
『ここまでしてまだ来ないってどうなんですかねー』
『よくよくみれば特有の気持ち悪い感じがするし、加護はある筈なんだが…。…お馬鹿すぎて忘れられてる可能性がある…か?』
『否定できません。あいつはそういう奴です』
『でもー、いちおー……ストライクゾーンに入る容姿はしてますよー?』
『年齢的な意味でギリギリ入ってるだけだろ。それにそのプラスをマイナスにするくらい残念な中身だと思うが…』
『あのヒト、そんなん気にしませんよーお。容姿がギリストライクならー』
ラギアとルーと意識共有で会話しながら、未だに姿を見せないそれを待つ。おかしいな。加護持ちが必要以上に精神的に追い詰められると、面倒見が良すぎるアイツは飛んで来ていたのだが。うむ…。
思惑外れたか…。何だ…。
「超つまらん」
ぽん、と手に持っていた顔を放り投げる。大丈夫大丈夫。ちゃんと騎士団長の身体にぶつけるから。その後は磁石のように首の切れ目と切れ目が引き合いくっつき、元通りだとも。他の騎士達もな。
あとはこの困った突進小僧が突進すら出来ないように転ばせれば終わりだ。
足の骨の1本2本なら折っても死なないな。石化させる?凍らせる?それとも騎士達の首にした事と同じ事を脚にしてやるか?
ふむ……。避けるのは簡単だが、ここはあえて無抵抗でグサっとやらせて、安心から冷静になりかけたところで残念でした~と、アノクにやったのと同じ事してやろうか。びっくりどっきり人間ショー。
更なる精神的ダメージが見込まれるし、一石二鳥か?と思ったのだが、それは残念ながら実行前に中止を余儀なくされた。
「あららん?」
よくよく聞き覚えのある口調だった。
「随分楽しそうじゃないのん?」
会う事は目的のひとつだったが、本来は極力会いたくない男の声だった。
相変わらず嫌味なくらい綺麗な長い髪を流して、我と小僧の間に立った男は、小僧の構えた刀を自分のそれで受け往なして止めた。
「ちょっとちょっと~、何してるのよん」
「…ま、…マルシュ、ベリアル…?」
小僧の目に安心が浮かんだ。…チッ!!
フードの前を少し下に引いて、俯き、奴の立ち位置から我の表情が見えないようにしつつ次の手を考える。心をベキベキにおりたい。
『アリス様、アリス様。性格悪いってバレますよーお』
『んな事知るか。それよりもあの小僧の精神が落ち着いたら今度は嬉々としてコイツに我と戦えとか言い出すだろうが』
なあラギアと目配せすれば、ラギアは戦う事にはならないと答えた。そして答え合わせのように事態は動く。
「卿!マルシュベリアル!!あの化け物が僕の騎士達を殺したんだ!早く僕を助け「いやよん」そうか!嫌か、………え?」
「アタシ、アナタを守りに来たわけじゃないのよん。寧ろ排除に近いかしらん?」
マルシュベリアルが淡々と、何でもない事のように次から次へと言葉の刃を叩きつける。文字にするのも憚られる。うおぉ…えげつな…。我、あんなこと言われたらもう表を歩けない…。
「ら、ラギア、アレは平常運転なのか…?!」
「?はい。前からそうです。…ご存知なかったのですか?」
「あのヒト主人の前ではかなり猫かぶってましたよぉー?」
我、まさかの数千年後に部下の本性を知ることになるとは。恥ずかしいッ!
「…まあ、アレはまだ抑えている方です。奴は一度精神を折るどころか粉砕してから催眠を混ぜて人格を再度形成することで、精神(やら意識を改変し好みといった固有の個人的趣向すらも自分好みに合わせて)回復させるので。今回はまだ序の口ですよ。放心してますけど、気を失う様子はないですし」
「…今何か伏せなかったか?」
「いえ何も」
そうか。ロリ・ショタスキー量産の秘密が分かるかと思ったのだが。残念。
と、我らが彼方の惨状に引き気味でする会話を終えた頃、マルシュベリアルも言いたい事言ってスッキリしたのか、先程よりかなり肌艶良くなった様子で我らの方を振り向いた。(因みに王子はえぐえぐと泣きながら、「僕はだめなバカ王子です、今までの全部を反省して、にどとさからいません、生きてることだけは許してください」と地面に額をぶつけて一心不乱に謝っていた。……アレで手加減してるのか…。既に中々仕上がってるって感じなのだが…)
マルシュベリアルは後ろの事はもう眼中に無いのか一目散にラギアへと向かってくる。王子は静かに、騎士団に連れられて退場していった。…まだ殴ってないのに!!
「グレちゃ……。ラ・ギ・アちゃーん!久しぶりん!元気にしてたかしらんっ!?マリアンちゃんは会えなくて寂しかったわーん!」
向かうというか、感動の再会感を出して抱きつきに行って、ラギアに思い切り拒否られた。
「……悪霊退散」
「きゃんっ!塩撒くだなんてッ…!相変わらず思いと行動がブレない所……ステキッ!!」
撒くというより、ラギアは岩塩を投げていた。力の限り。頭目掛けて。
頭と顔が塩まみれだというのに、本人は本心からそんな事を言って恍惚としている。怖いだろう?だから会いたくなかったのだ。
「はぁん…。これが本当の塩対応よねん。…ゾクゾクしちゃう。
で、本題なんだけど……うちのおバカさんがごめんなさいねん?ちゃんと引き取って矯正して、2度と起こらないようにするから、あの辺で勘弁してあげて欲しいのよん。一応有言実行実績持ちの第三王子から正式に頼まれて来てるから、信用して欲しいわん」
「どうでもいい。アリス様さえよろしいなら」
「?アリス、…様?」
ラギアにつられるようにマルシュベリアルが我を見る。
そして奴の目が、驚きに開かれた。
お待たせ致しました!
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頼りの騎士団はデクの坊。
明らかなる実力差。
差し迫った死の恐怖。
決闘当日、ラギアも揃い、万全の体制が整ったので、腹癒せ込みで散々王子を虐めてみた結果その三条件が揃い、想定通り王子が我に斬りかかってきているのだが…。
『ここまでしてまだ来ないってどうなんですかねー』
『よくよくみれば特有の気持ち悪い感じがするし、加護はある筈なんだが…。…お馬鹿すぎて忘れられてる可能性がある…か?』
『否定できません。あいつはそういう奴です』
『でもー、いちおー……ストライクゾーンに入る容姿はしてますよー?』
『年齢的な意味でギリギリ入ってるだけだろ。それにそのプラスをマイナスにするくらい残念な中身だと思うが…』
『あのヒト、そんなん気にしませんよーお。容姿がギリストライクならー』
ラギアとルーと意識共有で会話しながら、未だに姿を見せないそれを待つ。おかしいな。加護持ちが必要以上に精神的に追い詰められると、面倒見が良すぎるアイツは飛んで来ていたのだが。うむ…。
思惑外れたか…。何だ…。
「超つまらん」
ぽん、と手に持っていた顔を放り投げる。大丈夫大丈夫。ちゃんと騎士団長の身体にぶつけるから。その後は磁石のように首の切れ目と切れ目が引き合いくっつき、元通りだとも。他の騎士達もな。
あとはこの困った突進小僧が突進すら出来ないように転ばせれば終わりだ。
足の骨の1本2本なら折っても死なないな。石化させる?凍らせる?それとも騎士達の首にした事と同じ事を脚にしてやるか?
ふむ……。避けるのは簡単だが、ここはあえて無抵抗でグサっとやらせて、安心から冷静になりかけたところで残念でした~と、アノクにやったのと同じ事してやろうか。びっくりどっきり人間ショー。
更なる精神的ダメージが見込まれるし、一石二鳥か?と思ったのだが、それは残念ながら実行前に中止を余儀なくされた。
「あららん?」
よくよく聞き覚えのある口調だった。
「随分楽しそうじゃないのん?」
会う事は目的のひとつだったが、本来は極力会いたくない男の声だった。
相変わらず嫌味なくらい綺麗な長い髪を流して、我と小僧の間に立った男は、小僧の構えた刀を自分のそれで受け往なして止めた。
「ちょっとちょっと~、何してるのよん」
「…ま、…マルシュ、ベリアル…?」
小僧の目に安心が浮かんだ。…チッ!!
フードの前を少し下に引いて、俯き、奴の立ち位置から我の表情が見えないようにしつつ次の手を考える。心をベキベキにおりたい。
『アリス様、アリス様。性格悪いってバレますよーお』
『んな事知るか。それよりもあの小僧の精神が落ち着いたら今度は嬉々としてコイツに我と戦えとか言い出すだろうが』
なあラギアと目配せすれば、ラギアは戦う事にはならないと答えた。そして答え合わせのように事態は動く。
「卿!マルシュベリアル!!あの化け物が僕の騎士達を殺したんだ!早く僕を助け「いやよん」そうか!嫌か、………え?」
「アタシ、アナタを守りに来たわけじゃないのよん。寧ろ排除に近いかしらん?」
マルシュベリアルが淡々と、何でもない事のように次から次へと言葉の刃を叩きつける。文字にするのも憚られる。うおぉ…えげつな…。我、あんなこと言われたらもう表を歩けない…。
「ら、ラギア、アレは平常運転なのか…?!」
「?はい。前からそうです。…ご存知なかったのですか?」
「あのヒト主人の前ではかなり猫かぶってましたよぉー?」
我、まさかの数千年後に部下の本性を知ることになるとは。恥ずかしいッ!
「…まあ、アレはまだ抑えている方です。奴は一度精神を折るどころか粉砕してから催眠を混ぜて人格を再度形成することで、精神(やら意識を改変し好みといった固有の個人的趣向すらも自分好みに合わせて)回復させるので。今回はまだ序の口ですよ。放心してますけど、気を失う様子はないですし」
「…今何か伏せなかったか?」
「いえ何も」
そうか。ロリ・ショタスキー量産の秘密が分かるかと思ったのだが。残念。
と、我らが彼方の惨状に引き気味でする会話を終えた頃、マルシュベリアルも言いたい事言ってスッキリしたのか、先程よりかなり肌艶良くなった様子で我らの方を振り向いた。(因みに王子はえぐえぐと泣きながら、「僕はだめなバカ王子です、今までの全部を反省して、にどとさからいません、生きてることだけは許してください」と地面に額をぶつけて一心不乱に謝っていた。……アレで手加減してるのか…。既に中々仕上がってるって感じなのだが…)
マルシュベリアルは後ろの事はもう眼中に無いのか一目散にラギアへと向かってくる。王子は静かに、騎士団に連れられて退場していった。…まだ殴ってないのに!!
「グレちゃ……。ラ・ギ・アちゃーん!久しぶりん!元気にしてたかしらんっ!?マリアンちゃんは会えなくて寂しかったわーん!」
向かうというか、感動の再会感を出して抱きつきに行って、ラギアに思い切り拒否られた。
「……悪霊退散」
「きゃんっ!塩撒くだなんてッ…!相変わらず思いと行動がブレない所……ステキッ!!」
撒くというより、ラギアは岩塩を投げていた。力の限り。頭目掛けて。
頭と顔が塩まみれだというのに、本人は本心からそんな事を言って恍惚としている。怖いだろう?だから会いたくなかったのだ。
「はぁん…。これが本当の塩対応よねん。…ゾクゾクしちゃう。
で、本題なんだけど……うちのおバカさんがごめんなさいねん?ちゃんと引き取って矯正して、2度と起こらないようにするから、あの辺で勘弁してあげて欲しいのよん。一応有言実行実績持ちの第三王子から正式に頼まれて来てるから、信用して欲しいわん」
「どうでもいい。アリス様さえよろしいなら」
「?アリス、…様?」
ラギアにつられるようにマルシュベリアルが我を見る。
そして奴の目が、驚きに開かれた。
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