前世魔王の伯爵令嬢はお暇させていただきました。

猫側縁

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「ちょっと失礼するわねん」

言うが早いか、奴は我のかぶったフードをはねあげた。

がっと我の両頬を手で包み、まじまじと見つめる。そして…

「艶々の黒髪!マリアンちゃんの髪も眩む紅い目!可愛らしいお顔!可愛いの暴力!そして何より歳をとっても肉体の成長が乏しそうなところ!間違い無いわ!アルフ「待て待て待てい!!!」きゃんっ!…んもう。相変わらず照れ屋さんなんだからん!!」

全力で振り払ってラギアの背中に隠れる。

「照れてない!というかどこで判断しているんだ!」

特に1番最後!

「怒っちゃやーよん!感動の再会なのにん!」

どこに感動があったのかはさておき、とりあえず、ラギアの時とは違ってきちんと我が誰か分かっているようだ。

「……そう易々と信じていいのか?」
「トーゼン!マリアンちゃんはいつでもご主人様のために生きてるのよん?それに…いつの間にか私がグレちゃんにかけてた暗示が解けてるし、グレちゃんのこの心酔具合。疑いようが無いわん」

ラギアに暗示かけてたのはやはりコイツだったらしいな。まったく。

「前と違ってちょっと感じ取りにくいけど…その人間の皮剥げば元通りじゃないかしらん?」

怖っ!こんな可愛らしい皮引っぺがすとか正気では無い!…可愛くなければ剥がすのか?…剥がすだろう?………え?剥がさないの?

「アリス様に近づくな変態」
「ぁああん…!グレちゃんのこの冷たい目も久しぶりだわん…!」

怖いっ!皮剥がれるのやだとラギアにくっ付く。動きにくいだろうが、本人も嬉しそうだからいいだろう。

「ラギア、その変態を絶対我に近づけるな」
「アルちゃんまで…!あ。アルちゃん、アルちゃん。そろそろ離れてあげて頂戴。グレちゃんが…」

ラギアが?

「アルちゃんに可愛くお願いされて、色々限界みたいなのよん」

恐る恐る上を向けば、ラギアは昇天しかけていた。幸せそうなのだが、風に散る前の灰のような穏やかさ!

「我が生涯に…一片「ラギア、問題がいろいろ片付いていない。我、どこぞの王子と結婚させられるぞ?」…以上の悔いありぃいいい!」

よし、正気に戻った。こんな古典的な壊れた機械叩いて直す的な戻し方でいいのか。

「想定通りではないが、出てきてもらえたのは予定通りだ。見たところ、あの王子を助けにきたわけでは無いのだろう?…何故、出てきた?」
「え?………あー!そうそうそうよん!リビルドちゃんから頼まれたのよ!第五王子の回収と、アリスちゃんを城に招待してくるようにって!
"耳"からの報告で目をつけてた可愛い子が今日はグレちゃんと一緒にいるって言うじゃない?それがまさかのリビルドちゃんが狙ってる令嬢っていうから、もう楽しみすぎて、思わずアタシが行くって言っちゃったのよん!」

第五王子の事については自業自得だから不敬の一切は不問、ついでに既に格の高い方が粉かけてた相手に横槍入れてきた第五王子は無条件でぎるてぃー。今後、第五王子側からの我への干渉一切禁止。…ということらしい。

「…で?そのリビルド殿下とやらと、我の婚約推し進める気か?」
「さっきまではねん。でも、アルちゃんがアリスちゃんなんでしょう?なら却下。断固拒否よん。私のダーリンをどうしてあんな小僧にやらなきゃいけないのよ」
「…小僧?」
「そのリビルドちゃんよん?」

こいつ、今の主人を小僧って言った?

「私のだーい好きなご主人様が居なくなって、もう2度と戻ってこないなら、…それなら、自分が跪くに値する存在を作るしか無いでしょ?だから頑張ったのよん。で、まあ好みからは外れてたけど……意欲は十分だったからん(悪あがきの姿が、その地位に分不相応な姿が、滑稽で、憐れで、…それが物凄く…可愛かったのよねん)」

…急に黙ったが、ラギアは物凄く顔を顰めていた。前世含めて我よりも付き合いが長いから、恐らく何を言おうとしているのか分かっているのだろうが、聞いても知らない方がいいとか、知らなくていいとか言って教えてくれないんだよな。まあ、教えてもらわんでもロクでも無いこと考えてるのは間違いないが。

「…ともあれ、敵対意志はなく、…我が婚約することには反対してくれるということか?」
「モチロンよん!誰が可愛いアルちゃんをお嫁になんてやるもんですか!」
「…我、今はアリスなんだが」
「どっちでも一緒よん!」

一緒じゃ無いと思う。我は元魔王であって、今は多少規格外な魔法を使えるだけの少女アリスだしな。

「私たちは、称号じゃなくて、アルちゃん自身に惚れて慕って下ったの。じゃなきゃ今ここに居ないわよん。
あの時もう居ないって言われたこと、忘れてないわ。でも、姿形は違っても、私たちはあなたがそうだと思うから、それでいいと思わない?…あなたはいつだって、自分の勝手も他人の勝手も止めないもの。
だから、私たちはいつでも、あなたを探してあなたに付き従う」

それがいいの。と、マルシュヴェリアルは言った。私たちにはラギアも勿論含まれているようで、不満顔ながらラギアも異論は無いようだ。
ならばよし。

「…我の元にまた下るというのなら、それなりに扱き使うから覚悟をしておけ」
「喜んで!」

と、言うわけで最初にコイツにやらせる仕事は、アノクの呪解である。

そんなこんな、場所を変えて宿の中。アノクを寝かせている部屋に入ると、灼華が嬉しそうに我に抱きつき、マルシュヴェリアルと何か火花を散らして一悶着あったがそれはまあいい。些末なことだ。


「お安い御用だけど、こんなのアルちゃんなら簡単に解けるんじゃないのん?」

すりすり、と忙しなく手を動かしながら、マルシュヴェリアルは我に聞いた。我は止めてくれと訴える目を無視して答えた。

「解いたらお前にバレるだろ。うざい」
「酷いわッ!?マリアンちゃんはこんなにもアルちゃんが大好きなのにぃいいい!」
「……それ、一応我の従者を撫で回しながら言うセリフか?」

アノクの呪解と称して、彼の割れた腹筋を撫でてテンションを上げている奇人に引きつつ、アノクにはドンマイ、ファイト!とジェスチャーで応援の意だけは伝えた。あ。目が死んでる。洗礼というやつだから甘んじて耐えてもらおう。

「それはそれ、これはこれ。いい筋肉って正義よねん」

うっとりとしているマルシュヴェリアルに対して、趣味だけならリィと物凄く上手くやっていけそうだなと思った。

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