前世魔王の伯爵令嬢はお暇させていただきました。

猫側縁

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「あららららん?!私のいない間にまた可愛い子達がふえてるわん!?アルちゃんグッジョブ」

ところでぐっじょぶって何だと聞いたらでかした。よくやった。と言う意味だそうだ。使える!!前に我が使ってたって?…きのせいだろう?

「硬質で艶やかな髪!尻尾みたいな三つ編み!毛先に至るまでのグラデーション!いいわ…!いいわよん…!!今までに無いこの衝動!新たなデザインが降ってきたわーー!!」

と、戻ってきて言うなり物凄い勢いでマルシュヴェリアルはスケッチを始めた。…まあいいか。踏んでも座っても嬉しそうな声出す置物だと思っておけば。

「本当に…。私が、…私が、樹のお世話に出ている間に…!アリス様のお部屋を這いずり回っておきながら、人型にしていただいた上にアリス様のお部屋に存在する事を許されているだなんてっ…!私の留守の間にアリス様の私物を盗みに入るなんて羨ましい事をしようとしていたのでしょう!?この、…泥棒猫共ッ…!!」

いや、猫じゃなくて蠍だ。さそり。あと羨ましいのか。我の私物。

ルシアは先程戻ってきて、我の部屋の惨状に顔を真っ青にしてから、何も言わずとも片付けを始めた。5人娘をうつろな目で見つめながら。しかし手元は正確で素早く仕事をしている。障害物にも当たらない。素晴らしい足運びである。

「サソリの殻で何か作れないだろうか。砕いて組み合わせてランプ…、変質変色させてグラスアート…装飾品…は、却下。アリス様に身につけて頂けるなど羨ましすぎる…」

ラギアがしっかり娘達の背後を取って退路は塞いで何やら呟いている。娘達は真っ青通り越して真っ白な顔で震えている。内容は聞こえないが、…まあ、殺しはするまい。この娘達の侵入方法を突き止めて我に教えたのは他でも無いラギアなのだから。


助けてと泣き喚くだけの小娘達に我が辟易し、そろそろもう仕留めてカラッと唐揚げでもいいかなと思い始め、それを察し料理長が仕込みの為に部屋を出た時、ラギアが帰ってきた。

「どうやらその魔物達は、ドヴィアデズがアリス様の噂を聞きつけて送り込んできたようです」
「生きていたのか」
「はい。まさかとは思いましたが、探してみたら案外簡単に見つかりました」

最近出かける事が多かったのはその為らしい。
我に再会(?)してから、ラギアはかつての同僚達の居場所の特定に力を入れていたようで、あと行方が知れていないのはドヴィアデズと、ヴァレイン辺りだと思う。

「……魔王、様に…会いたいそうですが、どう致しますか?」

どうにも歯切れの悪そうだが、どうするもこうするもない。

「我、魔王じゃ無いもん。アリスちゃんだもん」
「一応その娘たちは迎えだそうです」
「我、冒険者のアリスちゃんだもん」
「転移媒体を兼ねているそうなので、触れればそのまま奴の住処にとぶようです」

なるほど。これが話を聞かないラギアか。
我、元魔王であって今は魔王ではないのだが。

ともあれこの小娘たちが侵入出来た経緯は分かった。我は結界を張る時に身内は通れる事を前提としている為、我が身内と思っているドヴィアデズは侵入可能。そしてそのドヴィアデズが我を標的として送ってきた小娘たちは、当然ドヴィアデズの力で送られたものだから侵入可能と言う事だな。…盲点だった。アリスの身内という点は意識していたが、それ以外は全く考えていなかったから。まあいっか。

「転移媒体と言ったが、猫たちが咥えても反応しなかったぞ」
「…猫達だからでは?」

うーむ。そう言われてしまうと何とも言えん。…しかし、我、別にあやつに用事は無いのだが。元配下だから何か困っているなら手助けするが、恐らく特に困った事もなかろう。必要とされぬ手を差し出す程、我はおせっかいでも無い。…無いのだが、ラギアが困ったように我と娘達とを見ている。そんなに我らを引き合わせたいのか。

「まあいいじゃないアルちゃん。主人の無事がわかったなら顔を見たいと思うのは当然のことよん。…どうして迎えなんて寄越してるのかは分からないけどねん?」

スケッチに夢中のはずの置物が意味ありげな目で言った。…まさか。

「…まさか、…生きてるけど弱りすぎて住処から動けずにいるのだな!?」
「え。…アルちゃん、そこの心配は別にいらないわよ。私が言ってるのは、我が主人が居る場所が分かってて自分から赴かないなんて可笑しいって「子孫までいるからてっきり大往生したのだとばかり…!そんなに大変な事になっているとは思わず…!」…私の話を聞いて!アルちゃん!?」

マルシュヴェリアルが何か言っているが、料理長が言ってたぞ!
食の前には全て無力!どんな鉄の胃袋とて、毒と老いる体には勝て無いと!!

…あれ?我、毒効かないな?…ともかく!

「何という悲劇!食か!?食糧が尽きたのか!?あやつ同胞だろうが毒なきゃ何でも良しの悪食だったのに…!それすら食べられずに弱り切っているのだな…!?」

魔力も多かったから死ぬことも出来ずにいたのだろう!

「……夕食まで戻ってくるぞ…!」

待っていろ!ドヴィアデズ!

我は勢いよく5人娘のうちの1人の腕を掴み、ドヴィアデズの元へと急いだ。


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