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128. Other side.
しおりを挟むアリスがサソリ娘達と消えていったのを見送り、マルシュヴェリアルが呟いた。
「…アルちゃんって、昔からヴィアちゃんに甘いわよねん」
そう。昔から…というか、魔王アルフィアスはドヴィアデズに甘かった。甘いと言うか、同情的だった。生い立ちが悲観的なものだった事から、気を遣っていたとも言う。しかし、当の本人が己の境遇を悲観していない事を知っても、アルフィアスの接し方は変わらなかった。
なぜなら。
「お前と違ってうるさく無いからな」
「…グレちゃんみたいに付き纏ったりしないからかしらねぇ!?」
ラギアとマルシュヴェリアルが静かに睨み合った。ルーあたりがここにいたら、火花が散ってる、ヤベェ。と言ったかもしれない。そのルーは今、第3島の迷宮内を逃げ回っているのだが…まあ、その話は置いておこう。
…何故、アルフィアスがドヴィアデズには甘かったというか、世話焼きしていたのかと言うと、単純に、配下の中で1番無口であったから。
無口かつ、大人しく、我の強い配下たちの中で1番流されやすい男だったから。そして…これはアルフィアスだけが知らない事だが、他の配下同様アルフィアスを盲信していて、他の配下より……性格が悪い。
どうすれば、アルフィアスに構って貰えるか計算しての態度であったのだ。元々大人しい性格なのでその態度を取り続ける事に苦痛は無く、無理をしていないからアルフィアスもそれを偽装とは気付かなかった。
ラギアとマルシュヴェリアルは互いに互いの悪口を素直に面と向かって叩きあって、落ち着いてから片方はスケッチへ、片方は外出準備を始めた。
「私はアリス様を追う」
「私は新しい服を作っちゃうわ。ルシア、手伝って頂戴?」
掃除が終わったルシアがアリスとお揃いの服を作る事を条件に承諾して、最近迷宮内で栽培し始めた特別製の糸を取りに出かけた。
「…で、グレちゃんは、何でわざわざ、ヴィアちゃんを探しに行ってたのかしらん?」
マルシュヴェリアルが胡乱な目でラギアを見る。ラギアは沈黙。
「…」
「あらやだ。答えられないの?アルちゃんは何も言ってなかったけど、私は友人として遠慮なく聞いちゃうわよん?
らしく無い行動の理由は何。アル様に害を加える気なら、"俺"がお前を捻じ伏せるぞ」
マルシュヴェリアルの言う"らしく無い行動"というのは、アリス自らがドヴィアデズの所へ行く事を容認したことである。通常ラギアは(自分のことは棚にあげるが)アルフィアスに会いたいなら自分で会いに来い、とドヴィアデズを殴って気絶させてでも連れてくる筈だ。それが今回は、アリス側から会いに行くよう仕向けた。
「…今回は、必要があってそうしただけだ。私は常に、魔王様の為に存在している。これまでも、…これからも」
「…ふぅん?」
部屋の外がうるさくなってきた。どうやらルシアがルーも回収してきたようだ。
マルシュヴェリアルはまだラギアを問い詰めたかったが、とりあえずここまでと判断して、次は全部話してもらうと低く唸るように言った。ラギアは何も応えずに部屋から姿を消した。前言通りアリスの後を追ったのだろう。
「…"魔王様"、ね……」
"アリス様の為"とラギアが答えなかった事に、マルシュヴェリアルは違和感というより嫌悪感を覚えた。なにを考えているのか予測がつかない事についての嫌悪感を。
「…アルちゃんの部屋の座標なんて、アンタが教えなきゃ分かる訳ないじゃない」
正直に言って、嫌な予感がする。
拭いきれない不穏を吐き出しきれない溜息をついて、マルシュヴェリアルもアリスの部屋を出ていった。
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