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第3章 成人の儀
77 強かったらごめんね ※
しおりを挟むさっきまでの性急なキスや愛撫が嘘のように、ゆっくり、啄ばむような口づけが降る。
俺はヴァンの首や肩に腕を回し、しっとりと汗ばんでいるシャツを握った。ヴァンは……片手で俺の髪を梳いたり頬を撫でたりしながら、もう片方の手を下腹に持っていって、ずっと優しく撫でている。
「……ヴァン、これは、なに?」
気持ちは、いい。
けれど胸の先端や下肢を弄られた時のような激しい刺激はない。ヴァンが意味なくやっているようには思えない……のだけれど、さっきがさっきだっただけに、少し物足りない。
ヴァンは少し顔を離してから、戸惑う俺が面白い、というような笑みを浮かべた。
「浄化をしているんだよ」
「じょう、か……?」
「そう……ここは本来、人と繋がるための器官じゃないから。後で互いに辛くなっても嫌だろ?」
そういって、つ……と指先が後ろ、尻の割れ目のすぼまりの方に流れた。
心臓が跳ねて「ひっ」と小さく声を漏らしてしまう。
「怖い?」
「わ……からない。でも、ヴァンなら平気」
頭では分かっていた。繋がるとか、挿れるとか。なにをどこにというのも、言葉では聞いていた……けれど、いざその時になると生々しさが違う。
普通の男女の行為とは違う。
リスクも負担もあることをしようとしている。
ヴァンが何度も「苦しい思いをする」と心配するだけのことがある。
「……浄化って、いうことは直接、なんだよね……」
「うん?」
ゴムとかない、から……この世界には。
「何も隔てるものが無くて……」
「……そうだよ」
「ヴァンが俺の中でイったら……せ、精……とか、全部、俺の中に……」
「そうだよ」
恥ずかしすぎて単語をきちんと言えない。
そんな俺の言いたいことを察して、ヴァンは頷く。
「ここで……放ったら、リクの中……いっぱいなる」
手のひらでへその下あたりを軽く押す。それだけでぞくぞくして、さっき一度吐精したばかりなのに、俺が反応してしまいそうになる。
「……いや?」
「いや、じゃ、ない……と思う。わかんない」
分からないけれど気持ち悪いっていう感覚は無くて、すごい、嬉しいんじゃないかって気がする。気がするだけで、もう既に下腹の奥がじんわりとあたたかい。
「なんか……奥に、熱を……」
「うん、浄化魔法の効果が出て来たんだ」
そう言いながら下腹から腰の方に指が動く。
それに合わせて、ぐね……の身体の中が動いた。腸か何かが、内側から強い力で押されたような。
「な、なに、今の」
「魔法に身体が反応し始めているんだ。ちょっと……違和感あるだろうけど、痛くはないでしょう?」
「……い、たくは、ない……けど……」
不意にぐに、ぐね、と動く。
全然動きの予想ができないから、その度に「ひぁ」とか「あっ」とか声になって腰が動く。身体の中からマッサージされているような、変な……感覚だ。
「……こんな魔法も、つかえ、たんだ」
「うん、リクが僕を欲しいと言った時から、調べていた」
え……っと思いながら顔を上げて、見下ろすヴァンを見つめ返す。
「俺以外の誰かに、試した?」
それこそ誰かを練習台にしたり。こんな風に、抱いたりして……試した?
隠せない不安はモロに表情に出たのか、ヴァンが嬉しそうに微笑む。
「それは嫉妬……してくれているのかな?」
「そんなんじゃ……」
「嬉しいよ」
思わず顔を横に向ける。その耳元に、ヴァンは囁きキスをする。
「この魔法は誰にも試していない。リクが最初だよ。ぶっつけ本番で緊張している……だから少し術が強かったらごめんね」
かすかな呪文と共に、下腹や腰をヴァンの指先が這う。
身体の奥の熱が上がり、ぐねぐねとした動きが大きくなっていく。その変化は俺の背骨や首筋まで甘く痺れさせて、落ち着ついていた火に油を注ぎはじめた。
たまらず、声がもれる。
「……んんっ……ん、ぁ」
「うん、いい感じかな……」
緑の瞳を細めて囁く。
ヴァンに美味しく食べられる食材にでもなった気持ちだ。もまれて、とろかされて、甘く味付けされている。
ヴァンの好みにできあがったなら、どんな顔で食べてくれるのだろう。
想像するだけで軽く達してしまいそうになる。
「……ふぁ、ぁ、ぁ……」
「すこし強すぎたかな」
苦笑するように囁いてから、不意にヴァンが身体を起こしベッドから離れた。
俺は駆り立てられるだけ駆り立てられて、放られた状態になったいる。全身が甘く、気怠くて、上手く動かせない。
「ヴァ、ン……」
戻って来る。そう分かっていても、この間が不安で視線を動かすと、幾つかの小瓶を手にしたヴァンが戻ってきた。そのままベッドサイドに置いたかと思うと、突然、シャツを脱ぎは始めた。
ヴァンの裸を見るのは、初めてじゃない。
風呂や着替えとかのタイミングで。その度に、無駄な肉なんてなくて、日々、地下道や迷宮で探索をしながら、時に魔物と戦うための実用的な筋肉をまとう厚い胸や腹筋に、カッコイイな……なんて、思っていた。
下肢の、しっかり立ち上がっているものも。
や……っぱり、俺のと比べたらりっぱ……だよな。
それが手を伸ばすと触れられる場所にくる。
ぞくぞくしてくる。
「最初、少し冷たいよ」
「なに……?」
「滑りをよくするもの……ほら、こういう」
手に取った小瓶から、とろりとした緩いゲル状の半液体が流れ出てきた。透明で、てらてらしている。
「ローション?」
「リクの世界ではそう言うの? これでたっぷり濡らしながら、柔らかくほぐしていくから」
そう説明されて、股の間から後ろのすぼまりの方へとたらした。
くちゅ、ぬちゅっ……と、今までに耳にしたことの無いような音が響く。俺はうるさいぐらいに鳴る心臓の鼓動を聞きながら、されるがままに見つめていた。
俺の緊張に気づいてか、耳元に唇を持っていって囁く。
「いきなりは挿れない。まずは指、一本から。リクの気持ちいい場所を教えて」
すぼまりのふちを撫でていた指が、つぷり、と入ってきた。
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