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第3章 成人の儀

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「いっ……」

 思わずびくりと身体が跳ねて、変な声が出た。
 ヴァンが動きを止める。

「痛い?」
「うううん……び、びっくりした……だけ」

 ヴァンの指先が……たぶん、本当に先端だけが入っただけだというのに、緊張が半端ない。
 大丈夫。ヴァンは俺が痛がるようなことはしない。怖いことも。
 ――いや、痛い思いをさせてもいい。怖い思いだってヴァンならいい。そう思っても、未知の感覚に身体が怯えている。

「動かすよ」
「う……ん……」

 こわごわと頷いた。
 一呼吸置いてから、くりっくりっ、とすぼまりを広げるように内側を撫でる。なんかすごく、変な感じだ。痛くはないし気持ち悪くもない。柔らかくほぐしていくと言っていたのだから、そのとおりのことをしているだけだ。

「……平気そう、だね」
「大丈夫……なんか、へんな感じだけ、だから……」
「……ひくひくしているの、わかるかい?」

 え? と見上げると、ヴァンのうっとりするような視線があった。

「戸惑って、でも受け入れようとして……こんな入口の縁だけなのに喘いでいる」
「……ぁ……そんな、言うな……よ」

 恥ずかしすぎる。
 それをわかっていて、ヴァンは俺の耳に唇を寄せ囁く。

「僕の、を、絞めつけようとしている」

 ヴァンの指をだろっ……て、心の中で言い返した。
 顔が熱い。じゃなくて、耳まで熱い。

「飲み込んでくれる?」
「え……?」

 どうやって? と聞き返す前に、ずずっ、と指が深くなる。俺の質問を見越したかのように、「こうやって」と囁きが続く。

「……ぅ、ぁ……」
「どこかな?」
「何を……さがし、て?」
「リクの気持ちいい場所」
「んんっ……」

 魔法の反応で体内が動いていた時と違う、はっきりとした形の指が、俺の内部をまさぐっている。
 これだけでも十分気持ちいい……と思う。ヴァンの、魔法を生み出す奇跡のような指が、俺の中にある。すごくドキドキしている。慎重に探っているのはきっと、傷付けないようにとしているんだ。

「じゅうぶん……きもちいい、よ」
「そう……」
「……うん、ヴァンの指が――」

 言いかけたと同時に、指先がくりっと腹の下側を撫で押した。瞬間。

「――ひっ!」

 身体が跳ねた。
 感電したような衝撃が全身に突き抜ける。一瞬、息が止まった。
 目を見開いて見上げる。

「……っあ、は! はっ! な、なに……今、の?」

 俺の反応のを見て、一度動きを止めたヴァンの指が同じ場所を軽く撫で押す。瞬間、また感電したような衝撃が、貫いた。
 俺を見降ろしたヴァンが、この上なく嬉しそうに呟く。

「みつけた」

 何を? と聞くまでもない。
 ヴァンが言っていた俺の「気持ちいい場所」だ。

「……あ、ぁああ! あ!」
「うん、ここ……だね」
「まっ……あ! ひぁ、あ!」

 腰から膝が耐えられずにガクガクしていく。呼吸が乱れる。
 こんな感覚知らない。
 甘い痺れだとか、ドキドキするとか、そんな言葉じゃ収まらない。

「……っあ! ま……っ、て、あぁあ!」

 つい、と指の動きが止まる。
 じんじんとした感覚を残して、俺の腹の上に温かく濡れたものがあるのに気づいた。荒い呼吸のままに視線を落とすと、俺の先端からとろりと滴がしたたっている。

「感じて、また……でちゃったね」
「うぅ……」
「……それで、いいんだ」

 優しく微笑んでから、つい、と顔を下肢に移し、反り返った俺をもう片方の手に取ると、そのまま唇を寄せた。愛おしそうに指先で包んで赤い舌を伸ばす。

「なっ! ひぁあ! あ」
「うん……」

 裏側を舌先がなぞり、先端を包む。同時に中の指が、気持ちいい場所を優しく撫でこする。

「まって……あ、あぁっ!」

 またぴたり、と動きが止まる。
 激しく上下する俺の呼吸を見て、また動き出す。中と、立ち上がったモノに這わせる舌とを。たまたらず喘いで、悶えて、待ってを繰り返し、止められるのがたまらず声を漏らす。

「ヴァ、ン……」
「うん……とろとろだ」

 身体を起こし、ローションを追加してまた中に指を差し込む。
 くちゅ、ぬちゅっ、と音を立てながら俺の気持ちのいい場所ばかりを執拗しつように、撫でこすっていく。ヴァンの舌は味見をするように、俺の腹や胸の先端を含み、時々甘く噛んでは、俺の理性を粉々に吹き飛ばしていった。

「……まっ、いや……あ、あ」
「待ったほうがいい?」
「い、や……」
「嫌?」
「……や……」

 俺が待ってと言う度にヴァンの動きが止まる。
 それがたまらなく切なくて、顔を左右に揺らしながら濡れた息と共に声をこぼす。

「……も、やめない……で……」

 下手にとめられた方が辛い。
 ヴァンが微笑み返す。

「止めない、で……ずっと……」
「……ここ、ずっと撫で続けてほしい?」
「うっ……ん……ずっと、つ……」

 肩や指先、足の先まで痺れが走る。
 身体も意識もやわらかくとろけそうになりながら、ヴァンの言葉を繰り返す。

「気持ちいい?」
「……い、いい……きもち……い、いっ……!」

 自分の声とは思えないような喘ぎ声にまじって、繰り返す。
 同時に、違う、そうじゃない、俺だけじゃなくてヴァンも……と続けたいのに、快楽の波にもまれて言葉はバラバラにほどけていく。

「……ぁあ、あ、いぃ……ぃ……」
「かわいい……な」

 切なくて涙がにじむ。
 頭を撫で、首筋をヴァンの熱い唇が這う。
 声に、熱を帯びた吐息がまざり始める。

「……もぅ、そろそろ、か……」

 とぎれとぎれの思考の中で、俺の耳がヴァンの声を拾った。
 なにを? と思う間も無くぐっと広げれ、射し込まれた指が二本に増えた。





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