【本編完結】異世界の結界術師はたいせつな人を守りたい

鳴海カイリ

文字の大きさ
82 / 202
第3章 成人の儀

79 とてもきれいだ ※

しおりを挟む
 


「ふぁあ……あ! ぁ……!」

 ぐっ……と広がる感覚に、たまらずに身体が逃げた。
 のけぞる首元で、チョーカーに繋がった守りの魔法石がチリチリと音を立てる。頭で押し付ける枕にすがる指先が、白くなっていくのが視界に映る。
 増えた指で俺の気持ちのいい場所を執拗しつように責めるヴァン。
 思考が感覚だけを追っていく。

 気持ちいい。気持ちいい。わけが分からないほどに気持ちいい。

 身の置き場がなくて肩を、腰を、膝や足先を震えさせながらよがる。
 ヴァンはそんな俺の姿を見つめながら、吐く息を熱くしていく。

「……かわいいよ」
「ぁ……あぁ……ぅ」
「ここが……いいんだね……」

 揺れる視界に見上げれば、欲に染まった緑の瞳があった。

「ヴァ、ン……」
「……きれいだ……」

 何度となく同じ言葉を繰り返し、口づけして舌を絡ませる。
 反り返る背に腕を入れ、抱きかかえる。広げこねている指はばらばらに動いて、深く浅く、抜き差しも始める動きにヴァンの肩にしがみついた。しっとりと汗ばんだ肌の熱と匂いが俺を包む。
 俺の……欲しかったもの。

「……ぅう、う、ぁ……ぁ、ヴァン……」

 ゆっくりとヴァンの腰が俺の下肢に擦りつけられ、揺れている。
 俺とヴァンの先からもにじみだしたものと、小瓶から垂らしたローションとで、ぬる、ぬる、とすべる感覚がぞわぞわしてきた。
 ヴァンも……きっともうれたいんだ。
 ずっとガチガチになっているのに、俺のために我慢している。

「ヴァン……も、いれ……て」
「まだはやいよ」
「でも、こんな……ぁ……ぅ」

 甘く耳たぶを噛む。俺のきもちのいい場所を二本の指で撫でこすりながら、親指の腹で、すぼまりの手前の部分で押して、挟むように、くりくりと揉みあげた。

「――っあ!」

 目を見開いた。
 何度目か分からない強烈な刺激に、一瞬呼吸が止まる。

「かはっ……ぁ! ぁあ! あ!」

 心臓を掴まれたような快感。
 俺の呼吸が整うの待つように、刺激が止まる。

「うん、ここ……きもちいいね」
「はぁっ……あ、はっ、あっ……」
「リク、おぼえて……」
「……おぼえ……?」
「そぅ……この、感覚を……」
「……っあぁ! あ……」
「辛くなったら……この、快感を……思い出すんだ……」
「っあ! は……あぁ、おぼえ……る」
「そう……」

 体中を支配する強い感覚のうねりに、脳が焼き切れそうな気がする。
 何度も何度も、優しく、撫でほぐし……時に感電するような刺激を挟んで、俺の全身を麻痺まひさせていく。

「怖い思いは、させない……」

 こんなにゆっくりと、準備……するものなんだ、と、切れ切れになる思考の中で思う。

 ヴァンが耳元で「もう一本、ふやすよ」と囁いた。
 さらにぐっと広げられる感覚はあったけれど、とろとろになった俺の身体と心では、痛みも恐怖も感じない。かすかに触れる空気の感覚に、その時が近づいている……と、胸が高鳴るけだ。 
 もう、時間の感覚なんて無くなっていた。
 一晩中抱かれているようで、まだそれほど経っていないようで、この部屋のベッドの上だけが世界の全てのように思えてくる。

「……ぅう、ヴァン……」
「うん、全身が色づいて……きれいだ。とても……きれいだよ」

 全てを投げ出す、俺を見つめ、口づけして「きれいだ」と繰り返す。
 ヴァンの呼吸も……甘い熱をおびている。

 不意にすぼまりから指が抜かれた。投げ出したシャツか何かで拭く気配がしたかと思うと、俺の肩を抱きあげ、首の後ろに指を持っていく。
 ぼんやりと見上げ「何を?」と問いかける間も無く、俺の首のチョーカーを外した。
 守りの魔法石が取り外される。
 同時に、俺の魅了の力を抑えていた封印が掻き消えた。

 いましめを解かれた開放感で、俺の感覚を更にするどくなっていく。

「もうこれ以上は嫌だと思ったなら、迷わず、魅了の力で僕を止めるんだ」
「……ヴァ、ン……おれ、は……」
「自分をまもることを、一番に……それを、約束して……」

 優しい。
 どこまでも俺のことを一番に考えるヴァンの優しさに、まぶたが熱くなる。

「……う、ん……」

 既にかすれ始めていた声で、俺は囁く。

「やくそく、する……から、奥まで……ちゃんと、ヴァンを……」

 いれて、の言葉は声にならなかった。
 唇を唇で塞がれ、同時に、俺の後孔のすぼまりに、ヴァンの先端があてられている感覚があった。たっぷり濡らされて、ぬるぬるした感覚と一緒に、入り口をなぞる。
 これからの始まりを知らせるみたいに。

「いれる……よ」
「う……ん……」

 囁きに頷いた。
 ゆっくりと押し入り込んでくる。
 ぐっ、ぐっ、と広げられ、埋まっていく……それは、指を入れられた時とは比べものにならないほどの、熱と、硬さと、質量で――。

「――っぁ」

 熱い。熱い、熱い。
 身体が割り広げられてる感覚と同時に、みちみちと埋まっていくものに、俺の中が焼きついていく。
 ヴァンが動きを止める。俺の頭を撫で、頬をさずり、呼吸が整うのを待ってから、またゆっくりと押し進めていく。ぎちぎちになっていく身体の中心に、俺はただ、胸を上下させる。

「うねって……いる」

 囁くヴァンを見れば、息苦しそうに瞳を細めていた。

「僕を、しめつけて……」
「……ヴァ、ン……」
「うん、もぅ……すこし」

 ぐっ、と腰を進める。その動きで俺の顎が上がる。
 俺の背中に逞しい両腕を回し、身体を強く、強く、抱きしめる。心臓が重なり鼓動が伝わり合う。
 互いの呼吸が耳に触れあう。
 みっちりとヴァンで満たされて、俺は浅く早く、呼吸を繰り返した。

「……繋がった、よ。リク……」

 ヴァンが、熱い息と共に俺の名を囁いた。





しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら執着兄上たちの愛が重すぎました~

液体猫(299)
BL
毎日AM2時10分投稿 【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、末っ子クリスは過保護な兄たちに溺愛されながら、大好きな四男と幸せに暮らす】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。  巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。  かわいい末っ子が過剰なまでにかわいがられて溺愛されていく──  やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな軽い気持ちで始まった新たな人生はコミカル&シリアス。だけどほのぼのとしたハッピーエンド確定物語。  主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ ⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌ ⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。 ⚠️若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

異世界で高級男娼になりました

BL
ある日突然異世界に落ちてしまった高野暁斗が、その容姿と豪運(?)を活かして高級男娼として生きる毎日の記録です。 露骨な性描写ばかりなのでご注意ください。

処理中です...