生死の実感

Gyumki

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久保 藍①

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 私は久保くぼ    あい。電車で高校に通うごく普通の女子高校生。朝の電車は通勤・通学ラッシュの時間を外し、少し早めの電車に乗る。座れないくらいにはお客のいる電車で、ドアに向かって立ち、お尻の位置に鞄を持つ。あとは窓の外を眺め、15分ほど乗っていると学校の最寄駅に着く。
 学校についてからやるべきことについて考えていると、突然お尻に人の手の感触を感じた。
(え?後ろには誰も立っていないし…。気のせい?)
 しかし、考えている間もお尻に感じる人の手は、撫で回すことを止めない。
(何が起こっているの?)
 「んっ!!」
 次の瞬間、少し声を上げてしまった。何が起きているのかわからず戸惑っていると、手の感触が秘部に伸びてくる。
(ちょっっと!何?)
 慌てて吊り革を掴んでいた手でスカートの上から抑えてみるが、そこに手は存在しない。しかし、触られている感覚は続く。割れ目をなぞる様に優しく、しつこく。
 そうしているうちに次の駅に着き、近くにあった座席が空く。私はすぐに座席につき、鞄を膝の上に置いて前屈みになり抑え込む。しかし、触られている感覚は消えなかった。
(何?気のせいなの?そうだ、スマホ触って気を紛らわせれば…。)
「さっきから様子がおかしいけど、大丈夫?」
 隣の座席に座る、若めの男性に声をかけられた。
「え?!は、はい。大丈夫です…」
「大人しそうだけど、敏感だね。」
「え?」
 何を言っているのかわからない。しかし、説明は男の口から告げられた。
「さっきからお尻とかアソコとか触ってるのが俺なんだよ。こうやってね。」
 隣の男が右手の人差し指を立てる。すると、私の膣に指が入ってくるのを感じた。慌てて両手で口を塞ぐ。
「悪いね、俺魔法使いなんだ。使える魔法は多くないんだけどね。今使ってるのは、実体のない手を生み出す魔法さ。」
「な、何を言って…」
「信じられないよね。操れる手の数にも限界はあるんだけどさ、例えば…」
 男は右の掌を見つめる。
「きゃん!?!?!?!」
 変な声を上げてしまい、他の乗客の目がこちらに向く。しかし、足に感じた無数の手の感触に驚き、それどころではなかった。
「君が可愛くてさ。俺のものにしようと思って。どう?」
「な、何を言ってるんですか。痴漢ですよ。」
「でも捕まえられないよね。俺、触ってないし。嫌なら…続けるしかないよね。」
「んんっ!ちょ…。」
「俺にも触った感触がきちんと伝わる魔法なんだ。お尻も足も柔らかいなぁ。アソコもいい感じだね。」
「や、やめてください…。大体、足とかお尻とか、膣とか触ってどうするんですか…。き、汚いとこですよ…。」
「何言ってんの。あれ?もしかして、アソコをどんな風に使うか知らない?」
「お、おしっこするところですよ。んっ…。触らないで…。」
「通りでキツイわけだ。オナニーもしたことないの?」
「な、なんです…か…それっんっ!」
(お、おかしい…。変な声が出ちゃう…。おしっこする穴が…気持ち良くなってきてる…?)
「へぇ。綺麗な黒髪のポニーテールで童顔で垂れ目気味で、清楚な感じだったけど本当にピュアだな。ますます好みだよ。へぇ、毛も生えてないや。」
「ちょっ…!?もう、触らない…で…。」
「あんまり大きな声出すと向かい側に聞こえるよ?誰も触ってないのに、様子のおかしい女子高生みたいだよ。」
(どうやったら逃げれるの?!駅はまだ?立って、車両を変われば…)
 立ち上がり、隣の車両に駆け出そうとした次の瞬間、膣の中に感じていた指が激しく震える。
「ああぁああぁっつっっ!??」
 喘ぎ、膝から崩れ落ちてしまった。足に力が入らない。
「だ、大丈夫ですか?」
 周囲の目が向けられたが、駆け寄り、立ち上がらせてくれたのは隣に座っていた男だった。もとの座席に戻される。
(だ、だめ…。今の何?だめ、頭が回らない…お腹のとこと、おしっこの穴が…変…)
「大丈夫ですか?次の駅で降りましょうね。」
 隣の男は介抱する様に声をかけ、覗き込んできた。
「どうだった?今のは、指をバイブのように動かしただけなんだけど。バイブも入れたことないよね。かわいいなぁ。あんなに感じちゃって。」
(バイブ?感じる?何が起こって…)
「どうする?俺のものになりたくなってきた?俺のものになるなら、この手も消すけど。」
 私は必死で首を振った。今この場から解放されても、この先どんな目に遭わされるかわからない。
「そっか、じゃあ…。」
 男はスマホを触り始めた。そして、画面を見せてくる。
「連絡先は交換しといたから。アイちゃん、よろしくね。」
「え?!な、なんで…。」
 慌ててスマホを見ると相手の連絡先のQRコードを読み込んだ画面になっていた。
「言ったでしょ。実体のない手を出せるって。誰の手とかは言ってないしね。アイちゃんの手を出して、スマホを操作しただけだよ。」
 慌ててブロックしようとすると、手が見えない手に抑え付けられる。
「悲しいなぁ。せっかく連絡先を登録してあげたのに。あぁ、悲しくなって手が震えちゃう。」
「んんんんっっ??!!!」
 今度は両手で口を塞ぐことができたが、向かい側の人には聞こえただろう。
「じゃあ、大丈夫ならここでお別れしますが、気をつけてくださいね。」
 隣の男は周りに聞こえる様に言って、間も無く到着した駅で降りていった。周囲の人も心配そうな目を向けていたが、発車する頃には自分の世界に戻っていた。
(だめ…下半身が…おかしい…。何これ…。あ、ブロック…しなきゃ。)
 男のアカウントをタップし、ブロックに指を伸ばした瞬間、手が押さえつけられる。そして、メッセージが送信されてきた。
『ブロックボタンを押そうとすると発動する魔法をかけておいたよ。明日はお仕置きだね。』
 それから、どうしたらいいかわからず一日を過ごした。当然、授業も友達との会話も記憶に残っていない。明日の登校する電車の時間を変えることだけを意識して眠りについた。
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