探偵と助手の日常<短中編集>

藤島紫

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本日のおやつは、さつま芋パイです。

ご当地パンの自己主張はささやかに

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 真実を見せるために調べることがあると言って、紗川は岸邸を離れた。

「なんか……先生、元気になってくれて嬉しいんですけど、あんまりうれしくない気もしてきました」
「あはは。まあ、昔に比べれば随分マイルドになったから」
「え……そうなんですか?」
「うん。学校帰りとかね。他人のふりしたくなったよ。割としょっちゅう」
「……何してたんですか、先生」
「探偵の名台詞とキメポーズを真剣に鏡の前で練習してたよ。あいつ。『すべての謎は解かれるためにある、僕の前の乙女の腰ひものように』って言うのが、俺の知る最高に馬鹿なやつかな。中学のころだけど」
「何ですか、それ」
「それを従姉のお姉さんに見られてさ、ビデオテープを用意されてからはやめたみたいだけど」

 他人事ながらに、録画されていないことを祈るばかりだ。

「あはは。三枝君は本当にいい助手だね」
「だって、俺だったら昔の記録とか嫌ですよ、凄く。いくら何でも可哀そうじゃないですか」
「いや? 全然? だって、あいつふてぶてしいもん」
「割と酷いことを平気で言いますよね、木崎さん……」
「わー、ひどーい。三枝君が、か弱い刑事さんをいじめる~」
「え」
「なーんて、ね」

 木崎の言葉に、三枝は瞬きした。

「俺はずっと、いい加減に探偵なんかやめちまえって思ってるんだけど。あいつ、けじめがつけられるまでは『探偵』でい続けないといけないからさ」

 それはどういうことなのだろうかと首をかしげる三枝を前に、木崎は人差し指を立てて「内緒だぞ」と言った。

「本当は、ここまで話すのもNGだから。そもそも、俺もあいつと同じように囚われてるせいで刑事やってるわけだけど……」

 囚われている、と言う言葉に三枝は眉を寄せた。
 紗川はいつでも言っている。
 囚われてはならないと。

「それより、さっきの話だけどね」
「さっきの?」
「そう、綺麗になった被害者が調子に乗ってたって話。あれさ、彼女にとっての夢だったかもしれないでしょ。夢が叶ったら調子に乗りたくもなるよね。だとしたら、夢を追う事は罪なのかな?」
「え」

 それは考えていなかった。
 どう答えるべきだろう。
 一度にいくつもの出来事が起きたせいで、頭が回らない。

(うう、無理。ダメだ。寝てない俺の頭じゃ、何も出てこない)

「えと……あの、俺も罪人なんで許してください」
「そうなの?」
「何か、色々考えたら、悪いことをしてない人間なんていないなって思って。俺だって先生のコーヒー飲み切っちゃいましたし。これ、窃盗ですよね」

 もう、いっそのこと自分の罪を告白して、「みんな罪人なのでこの件はこれ以上突っ込まないでください」と謝るほかない。

「飲んじゃったんだ、キヨアキのコーヒー」
「飲んじゃいました」
「そうかーなかなかやるな」
「そうですか?」
「うん。そうだ。アンパン食べる? 中に白玉が入っている贅沢なアンパン」
「え、何ですかそれ、食べたことないです」
「おいしいから食べてみると良いよ。腹持ちもいいし、俺のお気に入りアイテム。パトカーで食べる?」

 三枝は即答した。

「嫌です。だって動く取調室じゃないですか」








 三枝は事実上の関係者待機室とされた、店舗の椅子に座ってアンパンを食べた。
 その間もひっきりなしに警察が動き回っている。
 全く落ち着かない状況ではあったが、腹が満たされれば眠くなる。
 どうやら眠ってしまっていたらしいと気づいたのは、ノック音がした時だった。時計を見ると1時間ほど時が経過していた。
 店舗の入り口にあたるガラス扉を木崎が開錠してひらき、外にいた人物を招き入れる。

「先生」

 紗川が戻ってきた。
 三枝は慌てて立ち上がると、肩から毛布が落ちた。
 覚えがないから、木崎がかけてくれていたのだろう。感謝をしつつそれを拾い上げる。

「眠っているところを起こして悪かったな。仮眠は取れたか?」
「大丈夫です」

 紗川は安堵したように一つ頷くと、木崎に目を向けた。

「岸さんも連れ出すことは可能か?」
「思ってたより時間がかかっていたようだけど、何かわかったのか?」

 紗川はゆるやかに口角を上げ、雨に濡れた前髪をかきあげた。

「ああ、もちろんだ。罪の足跡を消し去ることは容易にはできない」
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