探偵と助手の日常<短中編集>

藤島紫

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本日のおやつは、さつま芋パイです。

差し入れはありませんか? 1

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 警官が現場を調べている間、一人一人呼ばれてパトカー内で聴取を受けることになった。
 紗川がパトカーに乗っている間、三枝は待機室として使用を許可された店舗でぼんやりと座っていた。ガラス張りの店のすぐ前に止まったパトカーの中で、紗川が聴取を受けている。三枝の聴取はすぐに終わったが、紗川はずいぶん時間がかかっているように感じた。
 ガラス戸にあたる雨粒が作る筋の向こう側にいる上司は、ひどく遠い存在に思え、不安な気持ちが増した。
 車のドアが開くと同時に、三枝は店のガラス戸を開いていた。

「先生!」

 駆け寄ると、紗川はいつもと同じようにこちらに笑いかけてきた。

「店の中に戻れ。雨だぞ。風邪をひく」
「大丈夫です。でも……」

 パタン、と音がして、目を向けると木崎が立っていた。

「三枝君がいてくれて本当に良かったよ。君がいてくれなかったら、キヨアキが超濃厚な容疑者だったからね」
「え、そうなんですか?」
「もちろん、三枝君が共犯ってことなら話は別だけど」
「ないですよ! そんなこと」

 三枝は不安でたまらなかった。
 言葉にはしなかったが、三枝も感じていた不安だった。

「ちょうどいいや。ちょっとここの軒先で話そうか」

 木崎が呼んだのは、ほかの警察官から離れた、ガレージ前の軒先だった。

「一応、ビニール傘があるけど、ささなくてすむならこっちの方がいいよね」

 木崎の穏やかな口調は、こちらへの信頼が伺える。
 紗川がつぶやいた。

「すまないな、英司。君の仕事を増やしてしまった」
「キヨアキが悪いことをしたわけじゃないでしょ」
「いや……他の警官がいたから言えなかったが……今回は僕のミスだ」

 三枝はここに向かってくるときに紗川が言っていたことを思い出していた。

――たまには、事件を起こさないように働くのも、悪くない

 確かに紗川は重大な被害に繋がるとは考えていなかった。
 それにも関わらず動いたのは、万が一を考えてのことだった。まさかそれが、今夜起きるとは思ってもみなかったのだ。

「被害者から依頼を受けたのは1週間ほど前のことだ。その時、僕はこの店に来た」

 だから、俊夫とはぐれてもあれほど落ち着いていたのかと納得できた。

「そこの店先で僕らは話をした」
「キヨアキから見て、実際の被害者はどういう感じの人だったんだ?」
「ホームページの写真の美子さんは、華やかでセクシーに見えるが、実際は……どちらかと言えば地味な人だった」

 紗川の言葉に、三枝は驚きを隠せない。
 確かにそのようなことを俊夫もいていたが、ホームページやSNSから受ける印象とは真逆だ。

「実際に会った彼女は、目立たないタイプのおとなしい主婦と言う印象を受けた。もちろん、化粧はしていたが、会話をすればもともとの性格が出る。――三枝君、覚えているか? 俊夫さんの職業を」
「銀行の営業で、あちこちに融資したりしてるんですよね」
「そうだ。店舗を増やすのに銀行からまとまった金を借りる、という事はとても多い。そして貸した銀行側は、回収がうまく行くよう経営の相談に乗ることもある。俊夫さんはそれが上手い」

 話を聞きながら、三枝は想像した。美子は俊夫の仕事ぶりを見ているうちに、自分も店を持ちたくなったのかもしれない。
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