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雨の日のゲイシャにご用心ください。
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「永遠に同じ状態なんてことはありえないさ」
「それはそうなんですけど、その喧嘩の原因が変なんですよ」
「それが君がひっかかっていたことなのか?」
「ダイキは一人っ子で、両親が共働きなんです。親が遅くまで帰ってこないとか、ザラなんですよ」
「なるほど、いろいろと都合がいい」
「彼女がダイキのうちに来ることが多いらしいです。でも、彼女は違う学校で、携帯持ってないんですよ。学校で禁止されてるらしくて」
「そうなると、連絡手段は限られるな。彼女の家に電話をかけることになりそうだが……彼女のご両親は?」
三枝は首を振る。
「彼女のうちはガードが固くて電話をかけても取り次いでもらえないらしくて」
「それは苦労するな」
「だから、ちょっと変わった連絡方法を使うんです」
「変わった連絡方法?」
どうやら、探偵の興味を引くことに成功したらしい。
探偵という仕事を好んでしていなかったとしても、なぞには心惹かれてしまうのだろう。
「彼女のうちは線路沿いのマンションの五階なんです。ほら、去年できたばっかりの高坂駅のそばのやつです」
「ああ、あのマンションか」
毎日のように広告が入っていたから、紗川も覚えていたらしい。
「便利さと高級感を兼ね備えながらも価格帯は手ごろ……という売り方をしていたな」
「どうも、実際にはなかなか人が入らなくて困ってるみたいです。ベランダが電車から丸見えで、リビングが丸見えになるから、プライバシーがないって」
「それはそうだろう。他にも問題はあるはずだ。すぐに思いつくところでは騒音だ。線路沿いだからな。それに最近は特急の本数も増えたから音の問題は避けられない。特急で渋谷までのアクセスが良くなったとはいえ、高坂には止まらないからな。メリットが少ない。当初の見込みよりも販売が伸び悩むのは、当然だ」
「酷い言われようですけど、ダイキの彼女はそこに住んでるんですから。もうちょっと優しく言ってくださいよ」
「やれやれ、注文が多いぞ。それで変わった連絡方法とはなんだ?」
面白がるように細めた目は、先を見越しているようで三枝は気に入らなかったが、そのまま話し続けた。
「一つ、先生が言ったとおり、あの家は電車からベランダが丸見えです。二つ、ダイキのうちは高坂駅の二駅となり、坂戸駅です。故に、彼女は鳩避けの緑のネットに雑巾を干すんです」
「めちゃくちゃな三段論法だな」
紗川はあきれながらも湯をさし続けている。
一度やり出したらとめることができない作業だ。
「緑のネットとは、鳩がベランダに入り込むのを防ぐために用いられているネットのことか?」
「そうです。五センチ四方の粗い目の網の。ごみネットとほとんど一緒ですよ。ダイキの彼女のマンションの周りは鳩が多いらしくて。ネットを張っていないとベランダが糞まみれになってしまうそうです」
「……まさかとは思うが」
「なんです?」
「その、鳩避けのネットに吊るした雑巾で連絡しているのか?」
(嫌そうな目でこっち見ないでくださいよ。俺だって鳩除けネットに雑巾ってどういうセンスだろうって思ったんだからさ!)
文句は心の中で言いつつ、三枝は頷いた。
「そうですよ。洗濯バサミで止めて吊るすんです。雑巾があったら電話してもオッケーな日で、ネットが開けてあるときは会えるっていう合図なんです。電車からベランダ、丸見えですからね。連絡手段にはもってこいですよ」
「昔、ハンカチで逢引の合図を送る映画があったそうだが、今の時代は雑巾と鳩避けネットか……」
「それはそうなんですけど、その喧嘩の原因が変なんですよ」
「それが君がひっかかっていたことなのか?」
「ダイキは一人っ子で、両親が共働きなんです。親が遅くまで帰ってこないとか、ザラなんですよ」
「なるほど、いろいろと都合がいい」
「彼女がダイキのうちに来ることが多いらしいです。でも、彼女は違う学校で、携帯持ってないんですよ。学校で禁止されてるらしくて」
「そうなると、連絡手段は限られるな。彼女の家に電話をかけることになりそうだが……彼女のご両親は?」
三枝は首を振る。
「彼女のうちはガードが固くて電話をかけても取り次いでもらえないらしくて」
「それは苦労するな」
「だから、ちょっと変わった連絡方法を使うんです」
「変わった連絡方法?」
どうやら、探偵の興味を引くことに成功したらしい。
探偵という仕事を好んでしていなかったとしても、なぞには心惹かれてしまうのだろう。
「彼女のうちは線路沿いのマンションの五階なんです。ほら、去年できたばっかりの高坂駅のそばのやつです」
「ああ、あのマンションか」
毎日のように広告が入っていたから、紗川も覚えていたらしい。
「便利さと高級感を兼ね備えながらも価格帯は手ごろ……という売り方をしていたな」
「どうも、実際にはなかなか人が入らなくて困ってるみたいです。ベランダが電車から丸見えで、リビングが丸見えになるから、プライバシーがないって」
「それはそうだろう。他にも問題はあるはずだ。すぐに思いつくところでは騒音だ。線路沿いだからな。それに最近は特急の本数も増えたから音の問題は避けられない。特急で渋谷までのアクセスが良くなったとはいえ、高坂には止まらないからな。メリットが少ない。当初の見込みよりも販売が伸び悩むのは、当然だ」
「酷い言われようですけど、ダイキの彼女はそこに住んでるんですから。もうちょっと優しく言ってくださいよ」
「やれやれ、注文が多いぞ。それで変わった連絡方法とはなんだ?」
面白がるように細めた目は、先を見越しているようで三枝は気に入らなかったが、そのまま話し続けた。
「一つ、先生が言ったとおり、あの家は電車からベランダが丸見えです。二つ、ダイキのうちは高坂駅の二駅となり、坂戸駅です。故に、彼女は鳩避けの緑のネットに雑巾を干すんです」
「めちゃくちゃな三段論法だな」
紗川はあきれながらも湯をさし続けている。
一度やり出したらとめることができない作業だ。
「緑のネットとは、鳩がベランダに入り込むのを防ぐために用いられているネットのことか?」
「そうです。五センチ四方の粗い目の網の。ごみネットとほとんど一緒ですよ。ダイキの彼女のマンションの周りは鳩が多いらしくて。ネットを張っていないとベランダが糞まみれになってしまうそうです」
「……まさかとは思うが」
「なんです?」
「その、鳩避けのネットに吊るした雑巾で連絡しているのか?」
(嫌そうな目でこっち見ないでくださいよ。俺だって鳩除けネットに雑巾ってどういうセンスだろうって思ったんだからさ!)
文句は心の中で言いつつ、三枝は頷いた。
「そうですよ。洗濯バサミで止めて吊るすんです。雑巾があったら電話してもオッケーな日で、ネットが開けてあるときは会えるっていう合図なんです。電車からベランダ、丸見えですからね。連絡手段にはもってこいですよ」
「昔、ハンカチで逢引の合図を送る映画があったそうだが、今の時代は雑巾と鳩避けネットか……」
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