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序章
人外圏で、精霊族の――
しおりを挟むあー・・・・金が稼げないな、これは。
まさか【終焉を刻む時】を使っているとは思わなかった。
なんたってこれは、『暴食邪種』程度に使って良い魔法では無い。
俺が創造した、”対『理不尽級暴食邪種』用の魔法”だからだ。
何の話かはおいて置くとして、俺ですら勝つのが厳しい種族もこの森には居る。
それに対抗するための魔法を、カーストならば下位に位置する精霊族程度に使ってしまったのが問題だ。
余りにも強い魔法は、その余波を強く示す。
(今回は――【時空十字架】か・・・・・・・・)
その結果として、何らかの魔法が相手へと自動で発動してしまうのだ。
正確には、この【終焉を刻む時】という魔法に宿った”意思”がこの程度では足りないと娯楽として発動する。
今回発動されたのが、異次元に存在する”絶望の十字架”というモノを召喚する魔法。
これに縛られた者は、例えどんなに強い存在であろうと一生治らない悪夢を刻み込まれる。
ただ、まあそこまで危ない魔法では無い上に、死んだ者への効果は薄い。
地獄に連れて行かれる、なんていう噂はあるが、それも定かでは無い。
「あー・・・・・・・どうするんだ?これ」
先程までの、宝石達への興味は既に消え去っていた。
あるのは、恐怖と畏怖、そして警戒心。
(やっぱり、敵意類は全て消えるのだな)
今まででも何度かある。
こんな風に、力を見せると恐怖しか生まないのだ。
だが、後悔はしていない。
元より、他人を殺しただけで感情が動くほど俺は弱くない。
もう、400歳を超えているのだから当然かもしれないがな。
「”エイシュ ルルシア ネイン リース ミシャス”」
先程の、風格のある声が森の中に聞こえた。
静かだが、どこかに諦めと強いナニかを持った声。
その声に呼ばれた精霊族の手には、何らかの武器が握られていた。
俺の視界に入るのだから、俺を殺そうとしていたのだろう。
「駄目だ。彼の者には、誰1人として勝てない。これ以上、犠牲を出したくないのだ・・・・・・・・・」
(賢明な判断だな)
この場に居る全員が死ぬ覚悟で襲い掛かって来ようが、1時間あれば片付く。
元より戦闘に特化した種族では無いのに加えて、退化したこいつ等に勝ち目なんて無い。
「でもっ!こ・・・・・彼の者は仲間をッ!」
呼び止められたうちの1人、女性が声の主に反論した。
しかし、肯定する趣旨はあっても許可を下すつもりはまったく無いようだった。
やがて、森の奥から1人の男が姿を現す。
その隣には、先程の少女が寄り添っていた。
何時からか見えないと思っていたが、事実近くには居なかったということか。
「先程は、馬鹿がすまなかった。どうか、精霊族の長として、謝罪をしたい。・・・・・・・大変、申し訳ありませんでした!」
何だか歩くのすら辛そうな老人が、土下座をしていた。
ただただ申し訳無いという思いだけで、俺の前で土下座をしている。
「俺の怒りが収まっていない場合は、お前のああなるぞ」
「わし程度の老い耄れの命で若い者達が助かるのなら」
「お前程度じゃあ怒りが静まらなかった場合は?」
「その時は、隣のユイを貴方様の伴侶として捧げます」
俺の視線は、無意識に隣に佇むユイと呼ばれた少女へと向いていた。
”ユ”ーリ・”イ”ストだから”ユイ”か。
身長は少女と言っても過言ではないくらいで、俺の顔1つ分くらい小さい。
さて、面白い問題だな。そんな感じで、俺は呑気に少女を見定め始めた。
<tips>
【スキル】
生活や戦闘なので使う、特殊能力の通称。
所持者がその効果を認識した上で、何かしらの発動を示す行動をすることで、効果が発動する。
その数は生物の数よりも多いとされ、未だに新種のスキルは後を絶たない。
中にはそれだけで災害に指定されるような強力なものまである。
『理不尽級』
そう指定される存在は個体数がありえない程少なく、確認されているだけで2体しか居ない。
生態も存在理由も発生条件も、全てが未知であり、人類圏に住む生物は誰も知らない。
けれど、人外圏に住む知恵ある生物ならば全ての者が知っている存在。
それが存在するだけで生態系が破壊され、それが感情を露わにするだけで天変地異が巻き起こる。
『ステータス』
一般的にそう呼ばれるが、詳しい情報は無い。
ただ、”鑑定・査定する”能力によって視た相手の情報を称してステータスと呼ぶ。
評価は、人類圏では最高がSで、AB+、AB、A+、A、BC+、B・・・・・・・・となっており、S,A,B,C,Dまでがある。
人外圏では最高がSSSSS+++で、最低がSとなっている。
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