6 / 10
序章
人外圏で、精霊族の――(2)
しおりを挟むスタイルは抜群で、胸も決して小さく無く、大き過ぎず。
何よりも雰囲気が良く、居るだけで何でも良くなる。
俺は、目前に佇む『精霊族』の”ユイ”という少女を見ながら、そう思った。
基本、というよりも俺にとって”愛情”という感情は理解し難い環境にある。
まだ普通の人間と同じ20歳くらいだった頃だろうか。
一度だけ、婚約者という人が居た時期があった。
しかしそれも、俺が最初の極限、剣術を極める頃には彼女は帰らぬ人になっていた。
それからだ。
時の流れを理解したのは。
俺が何かをするための”努力”は、人間にとってあまりにも長い時間だった。
俺が何かを達成する頃には、何時しか同期だった人々は1人として残ってはいない。
それを理解してからか、俺は愛情というものが理解出来なくなってしまった。
あんなに辛いだけの感情は、俺にとっては不要だからだ。
少女の瞳を見ると、そこには複雑そうな感情が込められていた。
結婚するに当たる感情に関してはあまりなさそうだが、俺個人への感情は隠しきれていない。
恐怖、怒り、敵意、畏怖、驚愕、嫉妬・・・・・・・何だろうな、と思ってしまう。
(心と接するのに俺は、余りにも長い年月を経てしまっているのだろうな)
何かしらの感情を向けられても、それに正しい応えが出来ない。
だからといって、どうにかするつもりは無い。
俺は俺で、今の俺を望んだからこうなっているのだから。
(そうだな・・・・・・・・・・・なら)
どうせ、目前の少女も気付けば居なくなるうちの1人だ。
ならば、少しだけ何時もとは違う日常を体験してみるのも良いのかもしれない。
「良いだろう。お前の覚悟を買って、許してやる。おい小娘」
「なっ!私は小娘じゃないよっ。もう立派な淑女だよっ!」
「こらユイ!気を損ねることをしては駄目だろうが!」
「だって・・・・・・・・」
「大丈夫。悪い人では無いのだから」
―――?
(どういうことだ?)
此処で初めて、俺は困惑させられた。
この老人から発せられた言葉は、無条件に俺を信用しているような言葉。
そして、それが心の底からだということくらいは理解出来る。
だからこそ、理解が出来ない。
(まあ、後で聞けば良いか)
とりあえず、今すぐに必要な答えではない。
「お前、名前は?」
「ユーリ・イスト・アーニアント・・・・・・・・・貴方の名前は?」
「そうだな・・・・・・・・・・俺の名前は――ブレイクとしよう」
奇妙な出来事だった。
何時もと変わらない何気無い理由で来たこの場所で、何時もとは違う関係性が出来た。
それは、300年間の中で一度も無かった空白を埋めるような運命。
終わりの無いの人生の中であった、たった200年しか続かない2人の物語。
けれど確かに、それは俺に何かの変化を与えた。
プロローグ 完
<tips>
『ブレイク(偽名)という人』
剣術において世界1位、魔術において世界1位、錬金術において世界1位、けれど、精霊術において世界で最も劣った人物。赤子すら可能な場合もある技術を行使することが出来ない。
また、???という??であり、??に??しか???、??の無い??である。
『人外圏』
”人類”と呼称する生物圏よりも外に存在する世界。
人類では決して歯の立たないような生物が、生物カーストで最下位に位置するなど、常識の当て嵌まらない場所。
また、特殊な耐性系を持つ敵も多く、例えば精霊術でしか攻撃の出来ない生物も存在する。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる