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テレビの中の皇帝は足を組み替えながら、ゆったりとした口調で喋りだす
「私はエルヴァスディア大帝國の皇帝━━━━ルードヴィッヒ・リヒティン・フライフォーゲルだ」
広い空間に居るのかバリトンの声が響いている。そんな中を自ら皇帝と名乗った男は続けていく
「我々のプレゼントを受け取ってもらえただろうか?君たちの国の二つを我々が占領することになった」
金色の瞳は笑みを浮かべる。作り物の笑みを。
「その国を拠点に、君たちの世界では色々と権限が強いアメリカ、広大な面積を持つロシア、人口の多い中国・・・・・この三カ国を次の目標に定めている」
次の目標である、国を次々に連ねていく。その国々をなくすことで、どれ程の影響があるのか考えられなくなるほどで、軽く目眩がしてくる。
「そして、我々は進軍を続け世界を我が統治下に治めていく。そして、最後に手中に治めるのは・・・・日本だ」
顔の近くで手をギュウと握る仕草をする。まるでその手の中に全てを納めたような感じにも見えてくる
「以上が我々が考えている事だ。君たちは大切な餌だから理不尽な殺生行為はしないと思う。けど、逆らうならそれまでだ」
見下すことに慣れた顔が画面に映し出される。
夜神は庵の胸元をシワが付くほど握り込んでいた。
そして、庵は震える夜神を抱きしめる。恐怖からか体が冷たくなっている。それを温めるため、華奢な体を包み込む
「けど、一つだけ進軍をしないで手中に治めた二カ国で、進軍をストップする事が出来ることがある」
見下した目から、笑みに変わる
「私は一年前程だったか、愛らしい白い小鳥を二週間程愛でていたんだが、この手を離れてしまってね・・・・・・・・・・」
手袋に包まれた片方の手のひらを広げて見せる
「とても愛らしくて、可愛く鳴く小鳥だったよ・・・・・その小鳥は君たちの世界に居てね・・・・」
その笑みはにっこりと破顔する。
だが、その顔と対照的になっている人物がいた。
それは、庵に抱きしめられてカタカタを震えていた夜神だった。
━━━━白い小鳥
その言葉と前後の単語で自分だと分かった。
拉致されて、皇帝によって毎夜嫐られ、血を吸われ続け、肉体は疲れ果て、精神はおかしくなっていった。
それは、今でも時々夢に見る。悪夢として。そして朝、悲鳴をあげて飛び起きる。
「ぁ、ぁ・・・・・・」
「大佐!」
震えが一段と強くなる。声も出始めてきて、これは「まずい」と庵は思い、抱きしめる力をつよ強める。
けど、目の前の映像の皇帝は愉快そうに笑いながら話を続けていく
「探し出して、見つけて、私のもとに連れてきてくれたら進軍を考えてあげるよ?出来るかな?このまま我々、君たちの言葉を借りるなら「吸血鬼」と呼ばれる我々に逆らい、世界を血に染めるか、小鳥を見つけ出して差し出すか・・・・・選ばしてあげる」
夜神の目から涙が一筋流れていく。
その二者択一はあまりにも残酷で、逃げ道のないものだった。そして、二者択一などではなく、答えは既に決まっているようなものだった。
一人が我慢をすれば、身を捧げれば、逆らうことなく皇帝の元に行けば、何十億の人が吸血鬼の毒牙にかかることなく助かることになる。
分かりきった答えしか出てこない事に対しての涙なのか、それとも別の事で流している涙なのか、それは周りの人間も夜神自身も分からない。
「期限は一ヶ月後、場所は日本・・・・時期が近づいたら細かな事を伝えるよ」
皇帝の唇が歪み始める
「会えることを楽しみにしているよ。吸血鬼殲滅部隊の夜神大佐・・・・また、愛らしく鳴いてごらん?そしたら沢山、血を啜ってあげようね?ねぇ、凪ちゃん?」
「つぅ!」
伸びている犬歯の牙を見せながら自分の名前を呼ばれる恐怖。
不特定多数に発信されている映像に、あえて細かな情報を混ぜて逃げ道を塞ぐ恐怖。
恐怖、恐怖、恐怖・・・・・
それ以外の言葉が見付からないほどだった。
そして、夜神は掴んでいた、庵の軍服を離すと自分の首隠すように両手で覆う。
それは「スティグマ」を隠す無意識の行為だった。人間には見えない、吸血鬼だけが見れるものが夜神の首に二箇所ある。
それを付けられたら死ぬまで、その吸血鬼の所有物になる。
そして、夜神の首は皇帝の所有物だと知らしめるための「しるし」がある。
ただし、皇帝が付けた場合は格別の意味の「スティグマ」と言われる。けど、意味は変わらない。
結局は吸血鬼の所有物なのだ。どんなに抗っても仕方がないのだ。
「では、一ヶ月後・・・・・」
そう言って映像は途切れて、また砂嵐に戻る
部屋にはテレビから流れる砂嵐の音と、夜神の消えそうな声で「やだ」という声だけが聞こえる。
その時、廊下をバタバタと走る音が聞こえてきたと思うと、部屋の扉が勢いよく開かれる
「凪はいるか!!!」
常に撫でつけている髪を乱して走り、ノックもせず扉を壊すのでは?と、勢いよく藤堂元帥は開いて目的の人物を見つける。
「凪っ!!」
藤堂元帥からの言葉にその場にいた全員が固唾を飲む。
夜神は藤堂からの言葉に反応して、画面にずっと向けていた顔を向ける。
「凪!!」
「藤堂元帥?何をしょうと考えているのですか?愚かな事を考えているのなら元帥の椅子はあなたには相応しくないですね?」
そんな冷めた、棘のある言葉を放つ人物が、数名のスーツ姿の男性を引き連れて部屋に入ってくる
「本條局長・・・・」
吸血鬼殲滅部隊日本支部監査局の本條局長は、冷めた目つきで藤堂と、座り込んでいる夜神を見た。
「私はエルヴァスディア大帝國の皇帝━━━━ルードヴィッヒ・リヒティン・フライフォーゲルだ」
広い空間に居るのかバリトンの声が響いている。そんな中を自ら皇帝と名乗った男は続けていく
「我々のプレゼントを受け取ってもらえただろうか?君たちの国の二つを我々が占領することになった」
金色の瞳は笑みを浮かべる。作り物の笑みを。
「その国を拠点に、君たちの世界では色々と権限が強いアメリカ、広大な面積を持つロシア、人口の多い中国・・・・・この三カ国を次の目標に定めている」
次の目標である、国を次々に連ねていく。その国々をなくすことで、どれ程の影響があるのか考えられなくなるほどで、軽く目眩がしてくる。
「そして、我々は進軍を続け世界を我が統治下に治めていく。そして、最後に手中に治めるのは・・・・日本だ」
顔の近くで手をギュウと握る仕草をする。まるでその手の中に全てを納めたような感じにも見えてくる
「以上が我々が考えている事だ。君たちは大切な餌だから理不尽な殺生行為はしないと思う。けど、逆らうならそれまでだ」
見下すことに慣れた顔が画面に映し出される。
夜神は庵の胸元をシワが付くほど握り込んでいた。
そして、庵は震える夜神を抱きしめる。恐怖からか体が冷たくなっている。それを温めるため、華奢な体を包み込む
「けど、一つだけ進軍をしないで手中に治めた二カ国で、進軍をストップする事が出来ることがある」
見下した目から、笑みに変わる
「私は一年前程だったか、愛らしい白い小鳥を二週間程愛でていたんだが、この手を離れてしまってね・・・・・・・・・・」
手袋に包まれた片方の手のひらを広げて見せる
「とても愛らしくて、可愛く鳴く小鳥だったよ・・・・・その小鳥は君たちの世界に居てね・・・・」
その笑みはにっこりと破顔する。
だが、その顔と対照的になっている人物がいた。
それは、庵に抱きしめられてカタカタを震えていた夜神だった。
━━━━白い小鳥
その言葉と前後の単語で自分だと分かった。
拉致されて、皇帝によって毎夜嫐られ、血を吸われ続け、肉体は疲れ果て、精神はおかしくなっていった。
それは、今でも時々夢に見る。悪夢として。そして朝、悲鳴をあげて飛び起きる。
「ぁ、ぁ・・・・・・」
「大佐!」
震えが一段と強くなる。声も出始めてきて、これは「まずい」と庵は思い、抱きしめる力をつよ強める。
けど、目の前の映像の皇帝は愉快そうに笑いながら話を続けていく
「探し出して、見つけて、私のもとに連れてきてくれたら進軍を考えてあげるよ?出来るかな?このまま我々、君たちの言葉を借りるなら「吸血鬼」と呼ばれる我々に逆らい、世界を血に染めるか、小鳥を見つけ出して差し出すか・・・・・選ばしてあげる」
夜神の目から涙が一筋流れていく。
その二者択一はあまりにも残酷で、逃げ道のないものだった。そして、二者択一などではなく、答えは既に決まっているようなものだった。
一人が我慢をすれば、身を捧げれば、逆らうことなく皇帝の元に行けば、何十億の人が吸血鬼の毒牙にかかることなく助かることになる。
分かりきった答えしか出てこない事に対しての涙なのか、それとも別の事で流している涙なのか、それは周りの人間も夜神自身も分からない。
「期限は一ヶ月後、場所は日本・・・・時期が近づいたら細かな事を伝えるよ」
皇帝の唇が歪み始める
「会えることを楽しみにしているよ。吸血鬼殲滅部隊の夜神大佐・・・・また、愛らしく鳴いてごらん?そしたら沢山、血を啜ってあげようね?ねぇ、凪ちゃん?」
「つぅ!」
伸びている犬歯の牙を見せながら自分の名前を呼ばれる恐怖。
不特定多数に発信されている映像に、あえて細かな情報を混ぜて逃げ道を塞ぐ恐怖。
恐怖、恐怖、恐怖・・・・・
それ以外の言葉が見付からないほどだった。
そして、夜神は掴んでいた、庵の軍服を離すと自分の首隠すように両手で覆う。
それは「スティグマ」を隠す無意識の行為だった。人間には見えない、吸血鬼だけが見れるものが夜神の首に二箇所ある。
それを付けられたら死ぬまで、その吸血鬼の所有物になる。
そして、夜神の首は皇帝の所有物だと知らしめるための「しるし」がある。
ただし、皇帝が付けた場合は格別の意味の「スティグマ」と言われる。けど、意味は変わらない。
結局は吸血鬼の所有物なのだ。どんなに抗っても仕方がないのだ。
「では、一ヶ月後・・・・・」
そう言って映像は途切れて、また砂嵐に戻る
部屋にはテレビから流れる砂嵐の音と、夜神の消えそうな声で「やだ」という声だけが聞こえる。
その時、廊下をバタバタと走る音が聞こえてきたと思うと、部屋の扉が勢いよく開かれる
「凪はいるか!!!」
常に撫でつけている髪を乱して走り、ノックもせず扉を壊すのでは?と、勢いよく藤堂元帥は開いて目的の人物を見つける。
「凪っ!!」
藤堂元帥からの言葉にその場にいた全員が固唾を飲む。
夜神は藤堂からの言葉に反応して、画面にずっと向けていた顔を向ける。
「凪!!」
「藤堂元帥?何をしょうと考えているのですか?愚かな事を考えているのなら元帥の椅子はあなたには相応しくないですね?」
そんな冷めた、棘のある言葉を放つ人物が、数名のスーツ姿の男性を引き連れて部屋に入ってくる
「本條局長・・・・」
吸血鬼殲滅部隊日本支部監査局の本條局長は、冷めた目つきで藤堂と、座り込んでいる夜神を見た。
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