ブラッドゲート〜月は鎖と荊に絡め取られる〜 《軍最強の女軍人は皇帝の偏愛と部下の愛に絡め縛られる》

和刀 蓮葵

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「飲み物は珈琲と紅茶どちらがいいですか?」
「紅茶でお願いします」
車に乗り込んでから一言も喋る事なく、上層部の本部に来た夜神は、本條局長から飲み物を聞かれて初めて口を開いた。

軍の建物が見えなくなるまで後ろを見続けていたが、やがて見えなくなり体を正面に戻し、太腿に乗せていた蒼月と紅月を掴み何かに耐えていた時、本條局長は「フン」と鼻で笑っていた。

夜神の事もだが、軍に関係すること全てを冷ややかな目と態度で対応する本條局長に「何故?」と疑問が生まれる。
確かに上層部と軍はいがみ合っているが、ここまで態度があからさまなのは、夜神の知っている限り本條局長だけだ。

けど、今更そんな疑問が生まれても一ヶ月後、自分はどうなっているのか分からない。考えたくもないが・・・・・

ソファに座っていると、目の前に紅茶の入ったカップが置かれる。
そして、向かい合うように本條局長は夜神の真向かいに座り、足を組んで一つため息をする。
「夜神大佐の身柄は一ヶ月こちらで保護します。一週間前になりましたら軍の施設に移ってもらいます」
「了解しました」
「素直で結構・・・・藤堂元帥にも見習ってもらいたいものですね?」
馬鹿にしたような顔をしてくる本條局長に少し苛立ち、夜神は続けて話していく
「本條局長はなぜ軍に対して、いつもそのような態度なのですか?」
「そのような態度?これは素ですよ。それ以上でもそれ以下でもないです」
口ではそう言っているが、態度は明らかに作っているように見える。

「それにしても・・・・・何故、はここまで執着丸出しなんですかね?仕事が増えて困りますよ。保護なんて仕事は我々は関係ない事です。本来、軍がしっかりしていればいいものを・・・・藤堂元帥の贔屓のせいでね?」
その保護をする人間に意見を求められても、答えることは出来ない。
「・・・・・・・」
ただ、黙って話を聞くしかなかった。

けど、夜神は話を聞いていく中で、ある一つの単語に違和感を覚えた

━━━━━帝王

軍の人間も上層部も「皇帝」と呼んでいる、エルヴァスディア大帝國の皇帝・ルードヴィッヒ・リヒティン・フライフォーゲルを帝王とは言わない。その単語を使うのは・・・・

さまはすごい人なんだよ?おねーちゃんもそう思うよね?」

帝國にいた時に話し相手をしてくれていた少女が言っていた言葉だ。
帝國にいる人間は皇帝の事を「帝王」と呼ぶと教えてくれた。そして、吸血鬼達は「帝王」以外の言葉を使い呼ぶことも・・・・・

なら、何故、目の前の人物は「皇帝」ではなく「帝王」と呼ぶのか・・・・

「話を聞いてますか?夜神大佐」
本條局長の少し苛立った声が聞こえてきたが、夜神はそんな事かまわずに割り込む
「本條局長!あなたは、何処で生まれて、何処で育ったんですか?」
「はぁ?藪から棒に何を聞いてくるのですか?」
「教えて下さい!」
「日本生まれの日本育ちですよ?」
「書類ではそうですよね?でも違いますよね?」
強張った顔をした夜神と、苛立った顔の本條局長の間に沈黙が支配する。
そして、一つのため息で沈黙は無くなった。
「何処で気づきましたか?」
ソファの背もたれに体を預け、夜神を見つめる目は冷ややかなまま、けど口元は少しだけ笑っている。

「我々は、皇帝と言っている人物に対してあなたはと呼んだ。そして、その呼び名を使うのは帝國にいる人間だけと聞いてます」
「長年の染み付いたものは中々抜け出せませんね?失態でした。気を付けていたのですが、まさかあなたに見破られるとは・・・・・・」
ため息をしながら自分の失態を嘆いているが、その嘆きには心からの反省は感じない。

「何故、スパイのような事をしているのですか?」
夜神の質問を聞いた本條局長は、さっきまでの態度とは反対の怒りを全面に押し出し、声を荒らげテーブルに手のひらを叩きつける。
「ふざけるな!!」
急変した態度に夜神は目を見開いて、固唾を飲む。
「我々の先人が少しでも自分達の生活を良くしょうと、必至になって考えたものだ!それを「スパイ」などと低俗な言葉で片付けるな!!」
「・・・・・・」
ソファに深く座り直した本條局長はもう一、今度は深く長ため息をして一旦落ち着いてから、普段と変わらない声のトーンで話し始める。

「私は俗に言う「二世・三世」と呼ばれる帝國出身者です。そして、夜神大佐の言う通り帝國にいる人間は「帝王」と呼びます」
「二世、三世・・・・」
「帝國によって攫われた人間は数百年前からいるのですよ?ならばおかしいことではない。生きていく上で命の保証はされてますが、我々、人間には避けられない行為が一つだけあります」
そっと腕を掴むと本條局長を見て、夜神はすぐに理解した
「血の提供ですか?」
「そうです。一定の年齢になると始まります。あなた達にこの苦しみが理解できますか?月にニ、三度血を抜かれるために針を刺される苦しみが!帝國にいる人間の腕や足は、注射痕だらけなの知ってますか?」

老若男女関係なく吸血鬼にとっての食事である「血」を提供する代わり、衣食住を約束されている。
もし、提供を拒否したら人間の扱いはされない。それこそ家畜か奴隷のように酷い扱いを受ける。

「その苦しみから抜けるために祖先は考えた。人間の世界にいって帝國が有利に動けるように、手足となって働くことを。そして、私もその一員です。おかしいと思いませんでしたか?二カ国があんな目にあっているのに、どの国も動かなかった事を?」
軍は動こうと必至に働きかけたが、それを上層部は拒否していた。それはどこの国も同じだった。

「まさか、殆どの国の上層部は・・・・・」
「お考えの通りです。一番の中枢は我々が既に牛耳っております。それも長い年月をかけてね?」

冷笑を浮かべて夜神を見る本條局長は立ち上がり、カツカツと靴音を響かせて夜神の背中に移動する
そして、夜神の両肩に手を乗せて耳元で嘲笑う。
「助けにいつまでも来てくれませんので、自分達の身は自分達で守ることにしたんですよ?」
「それはっ!!」
夜神は声を出して否定する。

助けたくても助けられない理由があった。ゲートに展開している結界のせいだ。
ゲートの向こう側に行って、助け出したいのに「結界」のせいで自分達の安全も保証されない。技術が進歩しても、これだけは今だに解明されない。
「えぇ、結界のせいですよね?多分あなた方の技術では解明されるのは何十年後になるのですかね?」
蔑む、哀れんでいる声のトーンで話していた本條局長の言葉を聞いて、スラックがシワになるまで握る。

言っていることは間違いではない。解明したくても解明出来ないのだ。技術の違いを見せつけられているのも事実なのだ。
悔しくて、奥歯をギリギリと噛んでいると、急に頭を引っ張られる。
驚いてしまい動けなくなると、ポニーテールで結んでいた髪が解かれて、パサッと落る。
「?!」
「帝王は上手い表現をしますね?「白い小鳥」・・・・大佐の身柄を帝王に渡すときは、髪の色は白い髪に戻してお渡ししないとね?」
「冗談でしょう?」
「至って本気ですよ?何だったら服もドレスにしますか?」
「ふざけないで!私は軍人です。ならば軍服で最後まで抗い続けます!!」
ソファから立ち上がり、本條局長を睨みつける。

最後まで、自分らしくいたい。たとえ意味のない事かもしれないがそれでも・・・・・

「どうぞお好きに・・・・最終的、帝王の腕の中に収まればいいのですから」
鼻で笑ったあと興味がなくなったのか、再び靴音を響かせて、入り口のドワに歩いていく。
その後ろ姿を睨み続けていると、本條局長は顔だけこちらを向いてくる。

「急な事だったので、部屋の準備が出来ましたら呼びに来ますよ。それまで、大人しく部屋にいてください。ま━━逃げるようなことはしないと思いますがね?」
侮蔑的表情を夜神に向けて、そのまま部屋を出ていく。

残された夜神は無意識に首を手で隠した。

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本條局長の態度はこんな理由でした。

色々と黒い上層部はやっぱり黒かったです。藤堂元帥はこの先、戦っていけるのか?
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