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吸血鬼・・・・・
その一言が、その言葉がこんなにも重く伸し掛かる言葉なんて思わなかった。
人類に牙を向き、拐かし、貪る。
そんな脅威から人々を守る為に私達は戦い、守り続けていた。
目の前で大切な人が幾人も命を散らした。
家族も、友達も、仲間も、先生も・・・・・
これ以上、大切な人を失くしたくなくて、大切な人を作らない為に心を閉ざした。
向けられる恋慕も尊敬も何もかも、知らない、分からないと背けていた。
けど、僅かな隙間をくぐり抜け、一人の人を愛してしまった。
優しくて、抱き締めている私をどう慰めていいのか分からない腕が躊躇って、何度も抱き締めようとしては離れる優しい人・・・・
私の違和感を感じていたのかもしれない。顔を、瞳をみた時に何かを感じたように見えた。
けど、私も躊躇った。このまま何も言わなければお互い幸せなのかと・・・・・
けど、それは軍人としての矜持が許さない。
例え、離脱した身と言え許されない事。
無言で指先に、私の牙を押し当てた。
息を呑むのが伝わった。
そして、私は今の自分を、状態を口にした。
━━━━━━吸血鬼だと・・・・・・・
「庵君は人類を、大切な人を守る為に軍人になった。人々を恐怖から守る為に・・・・けど、その恐怖が軍にいたら変でしょう?・・・・・庵君?私は、その恐怖に、人々を襲う悪しき者になってしまった・・・・」
そう、私は悪しき者・・・・・悍ましくも血を啜り生きていく者
「軍に帰ることなど、まして、もう一度軍服に袖を通すことなど許されない。だから・・・・」
・・・・だから、このまま私を忘れて帰って・・・
その言葉が言えない。やっと会えたのに!愛しい人に会えたのに!
「私を忘れて」と、あの時、きっと最後だと思った夜の日に言った。
けど、今はあの時のように割り切って言えない。
化け物になった自分を忘れてと
今すぐ人間の世界に引き返してと
無言が続く。相変わらず雨はふり続けて、雨粒が体を濡らし、バルコニーの地面を濡らす。雨音が耳を塞ぐように聞こえる。
そのわずかな間を、二人の息遣いが聞こえる。
「小説や漫画に、吸血鬼だけど悪い吸血鬼を裁く吸血鬼にも居ます・・・・凪さんはそんな存在です。だから軍に帰ってもいいんです」
躊躇っていた腕が強く、夜神の体を抱きしめる。
互いに密着する程抱き締め合う。
濡れた服など気にすることもなく、寧ろその隔たりが煩わしい。
互いの熱を交換するように抱き締め合う。
「帰りましょう。俺が凪さんを守ります。だから安心して帰りましょう。ね?」
庵が夜神の華奢な肩に手を置いて、ゆっくりと互いを引き離す。
抱き締めていた手を夜神は離し、庵の行動に従う。
互いの視線がぶつかる。赤と黒の瞳が互いに映り込む。
そして、ゆっくりと、庵の顔は夜神の顔に近づき、赤い紅を差していないのに赤い唇を庵の唇が塞ぐ・・・・
「ん・・・・・」
最初は塞ぐだけ・・・・
なのに、段々と密着した互いの口同士が貪り合う
庵の舌が夜神の唇を、こじ開けるように侵入する。
けど、すんなりと入り込むと目的の場所に一直線に進む。
奥にひっそりと隠れる舌に、自分の舌を絡めていく。
驚いてビクッと、なった夜神も庵の行為に順応するように、庵の求めるがままに、ぎごちないらながらも舌を絡めていく。
「ん・・・・ふぅ・・・・・」
互いの息遣いと、雨音と、甘美な甘さを秘めた水音が耳を塞ぐ。
どれ程の時間口づけをしていたのだろう。会えなかった時間を埋めるような長い口づけをやめる。
「はぁ・・・・・ん、庵君・・・・」
力の抜けた夜神の体を抱きしめる腕は少しだけ強張っている。
「帰りましょう。凪さん・・・・」
「帰りたい・・・・」
再び庵の背中に腕を回す。
許されるなら帰りたい
償う事が出来るのなら償いたい
一生かかってもかまわない
一生かかるのは間違いない
それ程の罪を、業を背負っている
「帰りたいよ・・・・・庵君と帰りたい。みんなに会いたい・・・・・けど、だけど!」
ここで庵君の手を取り帰ったら?もし、それに気づいた皇帝が何かしらのことをしたら?再び世界に牙を剥いたら?
━━━━━ドクン・・・・・
心臓の鼓動が痛い。痛すぎる。
目先の事を優先したばっかりに、自分の事を優先したばっかりに、後々に伸し掛かる事が大きすぎる。
今度こそ多くの血が流される。私一人の犠牲では済まされない。
済まされないのだ・・・・・
「でも、帰れない・・・・帰ってはいけない・・・そうしたら、世界が!世界が・・・・・」
自分の腕が段々と力が籠り、背中の軍服をきつく、きつく握り込む。
「再び奴らに蹂躙されてしまうっっ!!」
バリンッ!!パリンッ!ガシャ、ガシャン!!
「「!!?」」
轟音と共に硝子が割れていく
破片が夜神達に降り注ぐ
そして、その音を破片を作った元凶が幾本も夜神達を避けて地面に突き刺さっていく。
庵は夜神を庇うため体を更に引き寄せる。夜神も庵の為すがままに従う。
カーテンの紐が外れたのか、カーテンが風で煽られる。部屋の窓の硝子を全てが取っ払った人物が、雨に濡れることに眉一つ動かさず立っている。
風に靡くアイスシルバーの髪に、詰め襟の軍服。怒りと憎悪、貶し、蔑むを含む瞳は金色の瞳。右目には縦に走る刀傷は、痛々しさと同時に畏怖を与える。
「貴様が全ての元凶か・・・・王弟の末裔?」
バリトンの声はいつもの甘美な言葉を囁く甘い声ではなく、怒りを含む硬いトゲのある声。
己の力の一つである「鎖」を自在に操り、バルコニーに続く扉硝子を木っ端微塵に砕いた。
そこに立っていたのは吸血鬼の国の皇帝━━━
ルードヴィッヒ・リヒティン・フライフォーゲルだった。
「羽虫が一匹迷い込んだか・・・・・あぁ、凪ちゃん?もう、大丈夫だよ?そこの羽虫は私が退治してあげようね?凪ちゃんに羽虫は似合わないからね?私の愛しいお人形さん」
凍えた冷めた目付きから一変、甘い砂糖菓子を彷彿させる目付きに変わる。
暗い色を残した瞳を向けられた、夜神と庵は更に互いを抱きしめあった。
これから起こる事に慄いたのかもしらない。
これから起こる未知なる恐怖に慄き、そして、未来を安否した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
楽しい?三角関係のドロドロデスマッチ(笑)の開催です。
勿論、戦闘ありです。意味不明な文章の羅列が続くと思いますがお付き合い下されば幸いです
その一言が、その言葉がこんなにも重く伸し掛かる言葉なんて思わなかった。
人類に牙を向き、拐かし、貪る。
そんな脅威から人々を守る為に私達は戦い、守り続けていた。
目の前で大切な人が幾人も命を散らした。
家族も、友達も、仲間も、先生も・・・・・
これ以上、大切な人を失くしたくなくて、大切な人を作らない為に心を閉ざした。
向けられる恋慕も尊敬も何もかも、知らない、分からないと背けていた。
けど、僅かな隙間をくぐり抜け、一人の人を愛してしまった。
優しくて、抱き締めている私をどう慰めていいのか分からない腕が躊躇って、何度も抱き締めようとしては離れる優しい人・・・・
私の違和感を感じていたのかもしれない。顔を、瞳をみた時に何かを感じたように見えた。
けど、私も躊躇った。このまま何も言わなければお互い幸せなのかと・・・・・
けど、それは軍人としての矜持が許さない。
例え、離脱した身と言え許されない事。
無言で指先に、私の牙を押し当てた。
息を呑むのが伝わった。
そして、私は今の自分を、状態を口にした。
━━━━━━吸血鬼だと・・・・・・・
「庵君は人類を、大切な人を守る為に軍人になった。人々を恐怖から守る為に・・・・けど、その恐怖が軍にいたら変でしょう?・・・・・庵君?私は、その恐怖に、人々を襲う悪しき者になってしまった・・・・」
そう、私は悪しき者・・・・・悍ましくも血を啜り生きていく者
「軍に帰ることなど、まして、もう一度軍服に袖を通すことなど許されない。だから・・・・」
・・・・だから、このまま私を忘れて帰って・・・
その言葉が言えない。やっと会えたのに!愛しい人に会えたのに!
「私を忘れて」と、あの時、きっと最後だと思った夜の日に言った。
けど、今はあの時のように割り切って言えない。
化け物になった自分を忘れてと
今すぐ人間の世界に引き返してと
無言が続く。相変わらず雨はふり続けて、雨粒が体を濡らし、バルコニーの地面を濡らす。雨音が耳を塞ぐように聞こえる。
そのわずかな間を、二人の息遣いが聞こえる。
「小説や漫画に、吸血鬼だけど悪い吸血鬼を裁く吸血鬼にも居ます・・・・凪さんはそんな存在です。だから軍に帰ってもいいんです」
躊躇っていた腕が強く、夜神の体を抱きしめる。
互いに密着する程抱き締め合う。
濡れた服など気にすることもなく、寧ろその隔たりが煩わしい。
互いの熱を交換するように抱き締め合う。
「帰りましょう。俺が凪さんを守ります。だから安心して帰りましょう。ね?」
庵が夜神の華奢な肩に手を置いて、ゆっくりと互いを引き離す。
抱き締めていた手を夜神は離し、庵の行動に従う。
互いの視線がぶつかる。赤と黒の瞳が互いに映り込む。
そして、ゆっくりと、庵の顔は夜神の顔に近づき、赤い紅を差していないのに赤い唇を庵の唇が塞ぐ・・・・
「ん・・・・・」
最初は塞ぐだけ・・・・
なのに、段々と密着した互いの口同士が貪り合う
庵の舌が夜神の唇を、こじ開けるように侵入する。
けど、すんなりと入り込むと目的の場所に一直線に進む。
奥にひっそりと隠れる舌に、自分の舌を絡めていく。
驚いてビクッと、なった夜神も庵の行為に順応するように、庵の求めるがままに、ぎごちないらながらも舌を絡めていく。
「ん・・・・ふぅ・・・・・」
互いの息遣いと、雨音と、甘美な甘さを秘めた水音が耳を塞ぐ。
どれ程の時間口づけをしていたのだろう。会えなかった時間を埋めるような長い口づけをやめる。
「はぁ・・・・・ん、庵君・・・・」
力の抜けた夜神の体を抱きしめる腕は少しだけ強張っている。
「帰りましょう。凪さん・・・・」
「帰りたい・・・・」
再び庵の背中に腕を回す。
許されるなら帰りたい
償う事が出来るのなら償いたい
一生かかってもかまわない
一生かかるのは間違いない
それ程の罪を、業を背負っている
「帰りたいよ・・・・・庵君と帰りたい。みんなに会いたい・・・・・けど、だけど!」
ここで庵君の手を取り帰ったら?もし、それに気づいた皇帝が何かしらのことをしたら?再び世界に牙を剥いたら?
━━━━━ドクン・・・・・
心臓の鼓動が痛い。痛すぎる。
目先の事を優先したばっかりに、自分の事を優先したばっかりに、後々に伸し掛かる事が大きすぎる。
今度こそ多くの血が流される。私一人の犠牲では済まされない。
済まされないのだ・・・・・
「でも、帰れない・・・・帰ってはいけない・・・そうしたら、世界が!世界が・・・・・」
自分の腕が段々と力が籠り、背中の軍服をきつく、きつく握り込む。
「再び奴らに蹂躙されてしまうっっ!!」
バリンッ!!パリンッ!ガシャ、ガシャン!!
「「!!?」」
轟音と共に硝子が割れていく
破片が夜神達に降り注ぐ
そして、その音を破片を作った元凶が幾本も夜神達を避けて地面に突き刺さっていく。
庵は夜神を庇うため体を更に引き寄せる。夜神も庵の為すがままに従う。
カーテンの紐が外れたのか、カーテンが風で煽られる。部屋の窓の硝子を全てが取っ払った人物が、雨に濡れることに眉一つ動かさず立っている。
風に靡くアイスシルバーの髪に、詰め襟の軍服。怒りと憎悪、貶し、蔑むを含む瞳は金色の瞳。右目には縦に走る刀傷は、痛々しさと同時に畏怖を与える。
「貴様が全ての元凶か・・・・王弟の末裔?」
バリトンの声はいつもの甘美な言葉を囁く甘い声ではなく、怒りを含む硬いトゲのある声。
己の力の一つである「鎖」を自在に操り、バルコニーに続く扉硝子を木っ端微塵に砕いた。
そこに立っていたのは吸血鬼の国の皇帝━━━
ルードヴィッヒ・リヒティン・フライフォーゲルだった。
「羽虫が一匹迷い込んだか・・・・・あぁ、凪ちゃん?もう、大丈夫だよ?そこの羽虫は私が退治してあげようね?凪ちゃんに羽虫は似合わないからね?私の愛しいお人形さん」
凍えた冷めた目付きから一変、甘い砂糖菓子を彷彿させる目付きに変わる。
暗い色を残した瞳を向けられた、夜神と庵は更に互いを抱きしめあった。
これから起こる事に慄いたのかもしらない。
これから起こる未知なる恐怖に慄き、そして、未来を安否した。
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