ブラッドゲート〜月は鎖と荊に絡め取られる〜 《軍最強の女軍人は皇帝の偏愛と部下の愛に絡め縛られる》

プロローグ

　吸血鬼・バンパイアーーーー様々な伝承のある怪物。

　血が主食だったり、人並み外れた美貌だったり、人間の数倍の体力だったり、ときには首を傾げる伝承もある。ニンニクが苦手や、十字架が見れない。木の杭を心臓に打つと動かなくなる、血を吸われると吸われた者も吸血鬼になるなど。様々な伝承のある怪物ーーそれが吸血鬼である。

　だが、半分本当で、半分が偽の情報である。

　血が主食なのは本当だが、吸われると吸血鬼になることはない。そんなことをしていたら自分達の食事が無くなってしまう。

　木の杭を心臓に打っても動かなくはならない。木の杭で動かなくなるならここまで畏怖な存在にはならない。

　ここまで、畏怖な存在で、そして人類を脅かす存在になるまで彼らはジワジワと人々に恐怖を植え付けて、食物連鎖の頂点にまで上り詰めようとしていた。

　だか、人類もただ手をこまねいて、その恐怖を受け入れて、なすがままでいたわけではない。

　世界には呼び名は違えど、吸血鬼と戦う組織がある。

　そして、日本にももちろんある。「吸血鬼殲滅部隊」防衛省管轄で、国民を敵国や人間から守るのが「自衛隊」そして、吸血鬼から人々を守るのが「吸血鬼殲滅部隊」同じ防衛省ながら、広く国民から知られてないが、確実に防衛省管轄の部隊である。

　その部隊に入れるのは部隊からの直接の引き抜きや、代々家系的にその部隊に関わっている者たちで構成されている。極秘的な立ち位置の部隊であり、戦闘能力は自衛隊の倍あり、扱う武器もかなり特殊なものばかりである。

　そんな彼らだか、すぐに部隊に入る事は出来ない。決められた軍大学で四年間在席し、無事卒業試験を合格しなけれぼ部隊に配属はされない。三年間は基礎を座学や実技で学び、最後の一年間は部隊の先輩達に付いて直接様々な事を学ぶ。勿論実際に吸血鬼と戦う事もある。

　そんな彼らには大学四年生の春に、自分の立ち位置が決まる大事な事がある。三年生後期のテストで十位以内に入る事が出来れば四年生の春に部隊の上位にある、第一室から第十室に一人ずつ配属される。テスト結果十一位以降は第一団から代五団に配属がきまり、特に第一室は部隊成功率九十八%の驚異的な数字を出していて、この第一室の配属は四年生にとっても名誉であると同時に、自分達の今まで積み上げた勉強も技も尽く打ち砕かれる恐ろしい存在でもある。

　また、自分達からの希望で配属されるのではなく、実際室長とそこに属している隊員達が四年生の十人を見て、自分達の相性やテスト順を考慮し面談をして、配属されるため春のこの時期だけは部隊全体がピリピリとしている時期でもある。

　大事な時期。自分の今後を左右する時期にまさか自分が？いや、何かの間違い？神様のイタズラ？などと脳内に沢山の?マークを浮かべている一人の青年が「第一室」と書かれた扉の前でノックするか？しないか？で手を扉の前で止めたまま固まっていた。隣にいた軍大学の先生も「大丈夫か？」と顔に出ていたぐらい、青年は固まっていた。本当に固まっていたのだ。この扉の向こうには軍大学生なら憧れてやまない室長とその部隊の隊員達。そして殲滅部隊の絶対的エースの中佐が居るのだから。