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扉の前で固まる青年ーーー庵 海斗いおり かいとは本当にノックをしていいのか悩んでいた。

自分の成績は十位。十一位とは一点差。本来なら第十室あたりに配属されるのと思っていた。なぜなら今まで第一室から順番に顔合わせをしていき、成績の上位の者から配属が決まっていたのが通例だった。

だか、新しく室長になった者が「不公平」と騒ぎ、それならくじ引きで決めるか?の流れになりいつも最後に挨拶に来る後半の部屋が何故か最高にいいくじ運を発揮し、いつも最初に挨拶に来る第一室が何故か最後になるという前代未聞のことが起こったのだ。最高にいいくじ運を発揮した室長と隊員はここぞとばかりに成績上位の者を配属させ、十位の庵海斗は最後まで残り、そしてなぜか皆の憧れの第一室の前で固まっているのが今の状況である。挨拶に行く順番が事前に分かればここまで固まることも、自分の頭の中に?マークを浮かべることもなかっただろう。

運命のイタズラ。神様のイタズラ。俺の人生はどうなるんだ?と頭の中でグルグルと悲観なのか不安なのかなんとも言えない感情が渦巻いていた。



第一室の中では扉の前で固まる人の気配に「あーーですよねー」と思いながら自分から入ってくるのを気長に待っていた。なぜなら隊員達はこうなることをすでに予測していたのだ。


隊員達の予測は一週間前に遡る。
新しく第八室長になった者が「第一室から順番に挨拶にきていてら成績上位の者達から配属されるのは当たり前で、それでは不公平だ。ぜひとも公平に配属をすることを考えて頂きたい」と鼻息荒く机を叩き室長達に力説したのだ。それを聞いていた第一室長の後ろで控えていた七海 虎次郎ななみ とらじろうは(ハッハ~ン、新しく室長は元気だねー!熱いねー!最高だねー!よし!!)と笑顔で挙手して
「それならば、公正にくじ引きかあみだで決めればいいのでは?それならば運が決めたものなので不公平はないと思われますがいかがでしょう?」
と、満面の笑みで無精ひげを撫でながら、まるでこの答えが一番合っていると堂々と言ってきたのだ。
座りなが七海の話を聞いていた第一室長の長谷部はせべは、「お前は!!」と顔をひきつかせながら七海を見ていた。

七海の力説を聞いていた、第八室長はまるでその答えが正しいと言わんばかりの顔で室長達を見ていた。
誰がこの事態を収集するんだ!!と目線をウロウロしていたが、長谷部が「はーっ」と一つため息をして
「確かに、第八室長の言ってることも分かります。今年は少しばかり、自分達の運を信じるのもいいかもしれませんね?皆さんはいかがですか?」
全十室あるなかで第一室長というトップの自分がこの場を収めなければ何が起こるか分からない。何故なら後ろでニヤけているこの男は面白事が大好きだ。絶対この会議を楽しんでい。間違えない。早く収めなければドンドン斜めの展開になる。
長谷部は無表情で室長達を見ながら、頭の中では「七海、後で覚えておけーー!!」と軽い怒りを感じながら室長達の反応を見ていた。
すると、全員が若干顔をひきつかせながら「七海少佐と長谷部室長の意見に賛成します」と言い、第八室長は「皆さん、そして七海少佐、長谷部室長ありがとうございます!!」と満面の笑みで答えていたのだ。


会議室を後にした七海と長谷部は対象的な顔で廊下を歩いていた。笑顔と無表情。元々、二人共笑顔と無表情だが一人はニヤニヤの笑顔。もう一人は無表情だかすこし不貞腐れているような感じの無表情だ。
「いやー俺って天才だね。チャーンと不公平を無くす案を提案する辺がさ!それにしても室長、前々から思っていたけどくじ運無いっすね。まさの最下位!!笑える」
「すこし黙れ!お前は毎度何かにつけてお祭り騒ぎのような事ばかり。少しは自重しろ!それとくじ運が無いんじゃないたまたまだ!」
二人は小声で廊下を歩きながら、そんなやり取りをして第一室に帰っていった。
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