【R18】その手で触れて――ご主人様に見せる淫らな一人遊びは、やがて本物で躾けられました

いろは杏⛄️

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命令 前編

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 ご主人様の紅茶は、朝の陽が差す直前の時間帯に淹れるのが最も香り立つ。
 それは、幼い頃から叩き込まれてきた「奉仕の美学」でもあり、私にとって唯一の誇りだった。

 エリオット家の屋敷は、石造りの格式ある造りだ。冬は冷えるが、私はこの重厚な静寂が好きだった。主の動きを誰よりも早く察し、部屋の温度を整え、衣服の準備をし、朝の気配と共に静かに扉を開ける。

「おはようございます、ご主人様。こちら、本朝のアールグレイでございます」

 私は銀の盆に乗せたカップを持ち、ご主人様――セイラン=エリオット様の書斎に足を踏み入れた。

 彼はいつものように、執務机の前に座っていた。まるで石像のように静かで、気配すら読めない。けれど私は、この沈黙が嫌いではなかった。

 彼が軽く顎を引いて頷いたのを見て、私は無言の許可を得たと解釈し、机の傍らにそっと紅茶を置いた。

 セイラン様は、若くして領主となった才覚の人。
 人前では冷酷だとか無慈悲だとか囁かれているけれど――私にとっては、背筋が伸びるような威厳と、美しさの象徴だった。

「……何か?」

 彼の声は低く、けれどよく通る。私は我に返って、少しだけ視線を逸らした。

「い、いえ……失礼いたしました」

 そう、ご主人様を見つめていたことに、気づかれてしまった。
 この屋敷に仕えて五年、私は彼のすべてを見てきた。寝起きの姿も、苦悩に眉を寄せる表情も。けれど、それは仕える者”として当然のことで……それ以上の意味は、ないはずだった。

 それなのに――最近、彼の指先がカップに触れるだけで、私の胸は妙に高鳴る。

 私が差し出した紅茶を一口飲んだセイラン様は、薄く目を伏せると静かに言った。

「――リリア、お前の淹れる紅茶はいつも的確だ。淹れ方にも、性格が出るものだな」

 それは、お褒めの言葉だった。けれど、なぜだろう。
 そのひとことが、胸の奥でゆっくりと、熱を生んだ。

 ほんの少しでいい。
 もう少しだけ、私を見てほしい――そんな、報われない願いを秘めたまま、私は再び一礼して部屋を下がった。


     * * *


 その日、夕食の支度を終えたあと、私は書斎ではなく、ご主人様の私室に呼ばれた。
 プライベートな空間に足を踏み入れるのは初めてではなかったけれど――その緊張感は、書斎とは比べものにならない。

 大理石の床に敷かれた深紅の絨毯。調度品はすべて黒檀で統一され、燭台の灯りが柔らかく揺れている。
 その静謐な空間の中に、セイラン様はひとり佇み、背を向けて窓の外を見つめていた。

「来たか」

 低く落ち着いた声。その響きに、私の背筋が反射的に伸びる。

「ご用でしょうか、ご主人様」

 私は目線を伏せて訊ねた。すると彼はゆっくりと振り返り、まるで一つの演技のように、丁寧な動きで机の上の何かを取り上げた。

 それは、小さな黒い箱――見慣れない、艶やかな光沢を持つ機械。

「これを、お前に預ける」

 セイラン様がそれを差し出す。私は戸惑いながらも、両手で丁重に受け取った。手のひらに乗せた瞬間、ひやりとした感触が肌に染み込む。

「録画装置――使い方は簡単だ。既に起動済みだからな」

「ろ、録画……?」

 その単語の意味が、咄嗟には呑み込めなかった。いや、理解はしていた。けれど、それが私と、今、この場所で、どう関係するというのか――。

「……今夜、自室で一人でいる時。お前が自慰をするところを、これで映像に記録して私に提出しろ」

 時間が止まったようだった。
 脳裏に響いたその言葉が、意味を成すのに数秒の時差があった。

「し、じ……自慰、を……」

 声にならないほどの衝撃が、私の体を内側から焼いた。胸がぎゅっと収縮し、膝が小さく震えるのを止められなかった。

「命令だ。私の言葉には、いつも従ってきたはずだろう?」

 言葉は冷たいのに、その目には熱を孕んだ何かが宿っていた。
 逃げ出したいのに、身体は動かない。羞恥で全身が火照るのに、否定の言葉が口から出てこない。

「……はい。……かしこまりました」

 口にした自分の声が、かすかに震えていたのがわかった。
 何を了承したのか、自分でもまだわかっていなかった。それでも私は、ご主人様に背くという選択肢を、持っていなかった。

「嘘や演技はいらない。正直な自分を見せろ。私はそれ・・を見て、判断する」

 その言葉に、喉がひくりと鳴った。羞恥、困惑、混乱、そして――微かに疼く感覚。
 それは、いけないと思いながらも、どこかで期待してしまっている自分の存在を突きつけてくる。

「明朝、これを返却しに来い。その時、録画内容を確認する」

 ご主人様はそう言うと、もう私に背を向けた。
 私は、重たい足取りのまま部屋を辞した。けれど、胸の奥には明らかに、さっきとは違う何かが息づいていた。

 機械を抱きしめるように持ち、自室の扉を閉めたとき、私は初めて深く息をついた。
 頬が熱い。指先が震える。下腹のあたりが、妙にむず痒い。

 自分で、自分を慰める――それを、録画して、ご主人様に見せる?
 そんなこと、恥ずかしくて、到底……。

 ……けれど、それでも。

 命令には、従わなければならないのだ。
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