【R18】その手で触れて――ご主人様に見せる淫らな一人遊びは、やがて本物で躾けられました

褒美 後編

「まだだ」

　その低く鋭い一言が、火照った全身を打ち据えるように響いた。
　私は脚を大きく開かされ、敏感な蕾をむき出しのまま、ご主人様の指先で責められている。

　指は、濡れた花びらを丁寧に割り、蕾の上を――今にも破裂しそうな一点を――細く、ゆるやかに、滑らせてくる。
　なぞるように、撫でるように、あるいは、きゅうっと押し潰すように。

「ひゃっ、んあっ、や、だっ……ご、ご主人様ぁっ……もぅ、もぅ、だめっ……！」

　声が上ずり、喉の奥からせり上がる。
　腰が跳ねる。逃れようとするのに、拘束された手足ではなにもできない。

　目の前には、無表情なご主人様の顔。
　冷ややかで、容赦ない眼差しが、私のすべてを見下ろしていた。

「そんなにイきたいか？」

「あっ、は、いっ……っ！　ご主人様の手が、すごくて……っ、もう……っ！」

　快感が、膣の奥で暴れている。
　何度も寸止めされたせいで、身体はすでに臨界点を超えていて。
　クリトリスは赤く膨らみ、舐められた乳首はぴんと尖って、風が触れるだけでビクビクと震える。

「教えろ。誰のせいで、そんな淫らに濡れている？」

「ご主人様っ……っ、ご主人様のせいです、全部……ご主人様が、わたしを、こんな……！」

「ならば――私に許可を乞え。全てをさらけ出して」

　ご主人様の指が、再びクリを抉った。
　ひぃっと声が裏返り、膣がきゅううっと締まる。
　空気すら重たく、熱い。
　肉体の奥から突き上げてくる絶頂は、命令なしには決して解放されない。

　私は泣きながら、唇を濡らして言った。

「おねがい、ご主人様っ……わたしを、イかせてください……っ！　もう、壊れちゃいそうで……っ、お願いっ……！」

「――よろしい。許す。イけ、リリア」

　言葉が落ちた瞬間、全身の感覚が爆ぜた。

「――――っ！！　ぁああああああっっっ！！！」

　指が、クリトリスの芯をえぐるように擦り上げる。
　快感が脳天を突き抜け、意識が白く塗り潰される。
　膣が跳ねるように収縮し、ぬちゅ、ぬちゅ、と蜜を噴き出す音が生々しく響いた。

「はっ、あ、ああああっ、ご主人様ぁっ……ッ、イッてる、わたし……イッてるのにっ……！」

　ご主人様の指は止まらなかった。
　絶頂にひくひくと痙攣するクリトリスを、なおも執拗に責め立てる。
　乳首は吸われ、歯で噛まれ、舌で転がされる。

「やっ、またっ、またきちゃうっ……っ、ひあっ、あぁぁっ……っ！！」

　二度目の絶頂。
　三度目の絶頂。
　もう自分の声も、身体の動きもわからない。
　ただ、ご主人様の指と舌にすべてを支配され、責められ、嬲られて――快楽だけの存在になっていく。

「さすが、私の牝だ」

　耳元で囁かれるその声に、私は最後の理性までも溶かされた。

「ご主人様……っ、わたし……もっと、もっと躾けてください……っ……ずっと、ご主人様の……っ、ものです……」

　涙に濡れた頬で、私は微笑んだ。


　　　　　＊　＊　＊


　身体の奥で、まだ余韻が渦を巻いていた。
　何度も押し寄せた絶頂の波が、すべてを洗い流していったあとの静けさ。
　呼吸は浅く、脈打つ音だけが、遠くから聴こえている。

　ご主人様の指は、ようやく私から離れていた。
　濡れそぼった脚のあいだから、とろとろと蜜が流れ出し、シーツをしっとりと染めている。
　恥ずかしい――はずなのに、不思議と、それすらも幸福だった。

「……壊れてはいないな」

　耳元で低く囁かれたその声に、ぴくりと身体が震える。
　けれどもう、逃げようとは思わない。
　すでに、私はこの手によって――完全に躾けられていたのだから。

「あ……はい……ご主人様……」

　掠れた声で答えると、ご主人様はゆっくりと私の足を撫で、ふくらはぎ、太腿、そして濡れた秘所へと触れずに指を滑らせた。
　触れられない、それだけで、また膣がきゅんと蠢いた。

「見ろ。……お前の身体は、私の手の形を覚えている」

　頷きたくても力が入らず、私はただ、細く吐息をもらすだけだった。

　ご主人様は私の顔を両手で挟むと、そっと額にキスを落とす。
　その優しさが、かえって甘美な支配の印に思えた。

「お前はもう、私の牝だ。躾けられ、調教され、悦びで従う存在となった」

　その言葉に、胸の奥がぎゅうっと満たされる。
　羞恥も、恐れも、どこにもない。
　あるのはただ、ご主人様に愛されているという悦びと、快楽の記憶に震える肉体だけだった。

「……はい、ご主人様。私は、もう……どこまでも、ご主人様のものです」

　涙が自然と零れ落ちる。
　けれどそれは、悲しみではなく、幸福の証だった。

　ご主人様の手に抱かれながら、私は思う。
　この快楽を、命令を、支配を。
　もっと――もっと、深く与えてほしい。

　私の奥まで、快楽で満たし尽くしてほしい。

「どうか……これからも、もっと、もっと……私を、躾けてください……」

　その願いに、ご主人様は何も言わず、私の髪を撫でた。

　それだけで、心はもう――絶頂よりも深い、甘い沈黙に包まれていた。