わたしのパンツ返してください!

黒巻雷鳴

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Chapter.05

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「ワンワンワン!(こっちですぜ、御主人さま!)」

 もう時間がない。

「お願いだから、こっちを見ないで」
『ペン?』
「いいから! あっちを見てて!」
『ペペーン!?』

 めぐむが二匹の小さな背中を強引に押す。

 そして、自分を見えなくさせてから大きく息を吸い込み、心を決める。

 スカートをたくし上げて下着を掴む。

 前屈みになっためぐむは、耳まで真っ赤に染めた羞恥の表情で、それを静かに下ろした──


     *


 ゴゴゴゴゴ……ガガガガァーッ!

 何かの装置が活気よく動き始める。宇宙船は無事に稼働したのだ。

『やったわ! あたしたち、帰れるのね!』
『ありがとう! 本当にありがとう、地球のお猿さん!』

 手を……いや、ヒレを取り合って喜ぶ新郎新婦の目には、涙があふれていた。
 ほほ笑みでこたえるめぐむの目にも涙がにじんでいたけれど、それはどうやら、もらい泣きではなさそうだ。

「ワンワン、ワワワン!」

 犬の鳴き声がさっきよりも大きい。近くの茂みに大勢の人影も見えていた。

「あっ、急いで!」

 めぐむの声よりも早く、二匹の宇宙ペンギンはよちよち歩きで宇宙船に乗り込む。

 消波ブロック型の宇宙船が凄まじい揺れと共に白煙を噴射させると、その衝撃波で髪が、プリーツスカートが、一瞬にして勢いよくなびく。

「きゃっ!? ちょっ……パンツが──」

 パンツが見えるどころか穿いていない事実をすぐに思い出しためぐむは、風通しがいい股間を押さえながら、下着を渡したことを激しく後悔した。

「ねぇー! ちょっと! やっぱり返して!」

 必死の叫び声も爆音でかき消されて届かない。

「わたしのパンツ返してくださーい!」

 そしてついに、宇宙船は大空へと飛び立つ!

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
「ワオーン!?」
「なんじゃこりゃー!?」
「うわー!」

 まばゆい閃光ひかりと白煙が視界を奪い、風圧で草木が大きくしなったかと思えば、鼓膜を破るような轟音が裏山と住宅街に響き渡る。


 やがて、あたりを包んでいた煙がそよ風にさらわれて消えていく。

 そこには地面に空いた大きな穴と、気を失って横たわるノーパンの女子高生だけが残されていた。





 ─終劇─

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